凋落するアメリカと追随する日本に感じる虚しさ
フーテン老人世直し録(182)
霜月某日
1991年12月に旧ソ連が崩壊しアメリカが唯一の超大国として世界を統治し始めた頃、フーテンはワシントンに事務所を構え米議会情報を収集して日本の政党、官庁、企業などに販売していた。
当時のブッシュ(父)大統領は湾岸戦争に勝利した事で支持率は90%近く、翌年に行われる大統領選挙での再選も確実視されていた。ブッシュは「新世界秩序(ニュー・ワールド・オーダー)」を口にし、冷戦という分断の時代の後に対立なき世界の構築を目指していた。
湾岸戦争は国連主導の軍隊が侵略戦争をやめさせた歴史上初めてで唯一のケースである。第一次世界大戦で悲惨な戦争を経験した国際社会は主権国同士が武力で争う事を禁じ、武力的解決を国際連盟の手に委ねようとした。しかし国際連盟にアメリカが参加しなかった事などから理想は実現されず、人類は再び世界大戦の愚を繰り返した。
そして第二次大戦後に作られた国際連合も米ソの対立によって安全保障理事会は機能できず、有刺鉄線とコンクリートの壁が東西を分断した。それがイラクのクウェート侵攻に際して国際社会は初めて一致した行動を取ることが出来た。ブッシュはポスト冷戦に「統一された世界政府による恒久的な平和体制」を構築しようと考えた。
ところがそれから四半世紀後の現在、アメリカは世界政府どころか、世界各地で戦争を行い、孤立化への道を歩み出している。フーテンの目には冷戦の勝利が皮肉にもアメリカ凋落の第一歩に見える。
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