米国との信頼関係が「国民」よりも「領土」よりも優先される国家
フーテン老人世直し録(185)
霜月某日
日本政府は17日、沖縄県の翁長雄志知事による名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消し処分を撤回するための訴訟を起こした。普天間移設問題はついに国と地方が司法というリング上でバトルすることになった。
国は過去の事例から訴訟に負ける筈はないと考えている。その根拠はただ一つ「米国との約束」である。「米国との信頼関係に亀裂が生ずれば、日本は外交と安全保障で重大な不利益を被る」。あたかも国の存立にかかわるかのような言い分を金科玉条として国は訴訟を戦う。そして地方の民意を無視してもそれが根拠なら訴訟に勝てると思っている。
国家を構成するのは「領土」、「国民」、「権力」の三要素と言われるが、日本の場合は「領土」や「国民」よりも「米国との信頼関係が大事」と考える「権力」がいて、米国の意向を忖度する事に全精力を傾けている。この国だけは他の国と違い三要素より上位に「米国」を位置付けているのである。
フーテンは米国との関係が重要でないと言っている訳ではない。戦後の日米関係の緊密さを考えれば米国抜きに日本を論じることは出来ないし、米国を軽んずる事はそれこそ国益に反する。いたずらに反米を叫ぶ者は愚かとしか思えない。
しかし普天間問題をはじめ、日本国内で流されている米国情報には、米国の信頼を損ねてはならないと思うあまり、フーテンに言わせれば嘘と言いたくなる情報があふれている。しかもそれがメディアに頻繁に登場する外務省OBや安全保障問題の専門家と言われる「有識者」の情報に多い。
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