米国の「テロとの戦い」は「永続戦争」を意味する
フーテン老人世直し録(187)
霜月某日
米国の同時多発テロ事件から14年、今度はパリを舞台に同時多発テロが起きた。20世紀の戦争は第一次世界大戦が4年、第二次大戦が6年、泥沼と言われたベトナム戦争でも12年で収束したが、21世紀の「テロとの戦い」は14年経っても終わらない。終わらないどころか収束させる出口がない。世界はまるで「永続戦争」の時代に入ったようだ。
14年前に始まる「テロとの戦い」は米政権内のネオコン(新保守主義)が主導した。ネオコンは元々「共産革命の世界輸出」を主張するトロツキストが転向して作った政治イデオロギーである。伝統的保守主義が急進的な改革を望まないのに対し、自由と民主主義を世界に広げる事を目的に積極的な外交・軍事政策を採用する。
国連に批判的で国連の主導する「多国籍軍」ではなく、国連の影響力が及ばない「有志連合」を組織して「テロとの戦い」を行う。軍産複合体や国防総省と利害が近くその競争相手となるCIAに批判的である。またユダヤ系が多い事から共和党の親イスラエル政策を強く支持し、カソリックの総本山バチカンに対しても民主化の必要を主張する。
その勢力がブッシュ政権にアフガン戦争とイラク戦争を決断させ、中東の独裁政権を打倒して民主主義政権を誕生させようとした。当時、米政権内部でよく語られたのは、第二次大戦に勝利して日本を占領し、民主化できたという成功話である。
テロリストが米本土の世界貿易センタービルに航空機を突っ込ませたやり方は、日本軍による真珠湾奇襲攻撃とカミカゼ特攻隊を連想させ、その野蛮な日本を占領した米国が民主化に成功したのだから、アフガニスタンもイラクも民主化できるというのである。
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