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米議会乱入者が断言「“今や(議事堂は)君たちのものだ”と警官が言った」 FBI訴状 議事堂襲撃の謎

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
襲撃事件後、警備が強化された米連邦議会議事堂。(写真:ロイター/アフロ)

 議事堂襲撃事件を調査しているFBI(米連邦捜査局)が、1月14日、議事堂に乱入して逮捕された2人の男性に関する訴状を提出した。

 その訴状の中で、2人の男性は、ある警官が彼らの手をつかんで握手し、こう言ったと訴えている。

「今や(議事堂は)君たちのものだ」

 まるで、暴徒たちを議事堂に招き入れるかのような一言だ。なぜ、その警官は2人の男性にそんな発言をしたのか?

 2人の男性とは、ロバート・バウアー氏と同氏の従兄弟のエドワード・へメンウェイ氏。バウアー氏がフェイスブックに議事堂乱入時の写真を投稿したことを知ったある男性が、FBIの国家脅威作戦センターに電話でそのことを伝えたことから、1月8日、FBI捜査官はバウアー氏を同氏の勤務先で尋問した。

今や君たちのものだ

 バウアー氏は、妻やヘメンウェイ氏とともにワシントンDCに行き、1月6日にホワイトハウス前で行われたトランプ氏の集会に参加した。集会で、トランプ氏が集会参加者たちに「ペンシルベニア通りを歩いて議事堂に行こう」と呼び掛けたことから、彼らは参加者たちとともに議事堂まで歩いた。

 議事堂の外には6人〜8人の特別機動隊が立っており、参加者たちは彼らに向かって物を投げた。

 バウアー氏は、議事堂の外側を、右手に黒いランプがあるドアのところまで歩き、そのドアから議事堂内に入った。立ち入り禁止の看板がなかったことから、悪いことをしているという認識はなかったという。

 議事堂内に入ると彼らは警官と遭遇した。

 バウアー氏によると、ある警官が彼の手をつかみ、握手してこう言ったという。「今や(議事堂は)君たちのものだ」

 バウアー氏は、その警官は恐怖感からそんな言動に出たのではないかと思うと話している。

 ヘメンウェイ氏も、警官が握手したと話している。ヘメンウェイ氏が「ごめん」と言うと、その警官は「おい、今や君たちのものだ」といい、彼を片腕でハグしたという。

 そして彼らは、支柱が並ぶ円形の部屋に入った。バウアー氏はそこで「選挙を盗むな」と連呼し、写真やビデオを撮影した。FBIに提出した動画の中で、バウアー氏は乱入した暴徒たちとともに「我々のものだ! 我々のものだ!」と連呼している。

議事堂に乱入したバウアー氏(右)とヘメンウェイ氏(左)は、警官に「(議事堂は)今や君たちのものだ」と言われたという。出典:justice.gov
議事堂に乱入したバウアー氏(右)とヘメンウェイ氏(左)は、警官に「(議事堂は)今や君たちのものだ」と言われたという。出典:justice.gov

 彼らは議事堂に乱入した理由についても話している。

 バウアー氏は「議事堂を占拠するためだ。警官を襲うつもりも彼らと闘うつもりもなかった。乱入時、議会が開かれていることも知らなかった。人々は小児性愛者、ニュース、ロックダウン中に仕事をなくしたことなどについて怒っていた」と説明している。

 ヘメンウェイ氏は、好奇心と愚かさから、議事堂に入ったと話している。同氏も議会が開会中だったことは知らなかったというが、選挙人投票の認定をしようとしていたことやペンス副大統領が投票結果を発表することは認識しており、そんな状況下で議事堂内に入ることは間違っていることだとはわかっていたと説明している。

 ルイスヴィル・クーリエ・ジャーナルの報道によると、彼らは、15日、連邦裁判所で、立入禁止の建物に侵入したことに対して無罪を申し立てた。

警官はなぜMAGA帽を被っていたのか?

 議事堂襲撃事件については様々な謎が指摘されている。特に、FBIが調査しているのは暴徒たちがどうやって議事堂内に侵入したかだ。

 暴動中、MAGA帽(Make America Great Again=アメリカを偉大にしようというトランプ氏の主張が書かれた野球帽)を被った警官が暴徒たちを先導して議事堂内に入れているように見える動画が問題となり、その警官はすぐに停職処分となった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、その警官は、MAGA帽を被ることで暴徒化した人々の信頼を得ることができれば、議事堂内にいる同僚の警官たちを助けに行くことができると思ったと話しているという。また、その警官の行動により、暴徒たちが侵入していた議事堂の扉を閉鎖することができたと証言している者もいるという。

計画された襲撃?

 FBIのジェームズ・コミー元長官は、CNNの取材に対し、議事堂乱入事件について「少なくとも陰謀があったことに間違いはない。計画された襲撃である」と主張している。

 また、CNNは「FBI側は、襲撃は単なる抗議行動が発展したものではなく、計画されていたものだと考えている」と報じている。FBIの調査によると、集会参加者の中には議事堂襲撃に使用する道具を取りに行くために、トランプ氏の集会から早く出て行った者がいるというのだ。

 FBIは、1月15日までに議事堂暴動に関与した疑いのある270人超の人々を特定し、100人以上を拘束したが、今後、FBIがどんな証拠を出してくるか注目される。

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在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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