ミシュランが求めているラーメンの姿とは?
ラーメンも掲載される「ミシュランガイド東京」
11月29日、今年も「ミシュランガイド東京2020」(日本ミシュランタイヤ)が発売された。2007年にアジア初のミシュランガイドとして発行された「ミシュランガイド東京」。2019年で13年目を迎えた。
日本料理やフランス料理など、高級なカテゴリーのレストランが取り上げられている印象が強いミシュランガイドだが、ここ数年はいわゆる「B級グルメ」と認識されているような、カジュアルな飲食店の掲載も増えている。昨年の東京版では世界で初めて「おにぎり」の専門店が掲載されて話題を集めた。
その中でも2014年から掲載されるようになった「ラーメン」への注目度は高く、2015年には世界で初めてラーメン専門店が「星」を獲得して様々なメディアが取り上げた。「ラーメン店がレストランと肩を並べた」「ラーメンが他の料理に追いついた」など、ミシュランへの掲載がラーメン業界における一種のステータスになった事も事実だ(関連記事:ミシュランでラーメン店が「星」を獲った理由)。
その反面、ミシュランが選んだラーメンが人気度や知名度と合致しているか否かが議論となり、特に豊富な味のジャンルがラーメンの特徴であるにも関わらず、清湯スープの醤油ラーメンなど掲載される店の味には偏向性が感じられると、そのリストに疑問を呈するラーメンマニアも多い(関連記事:なぜミシュランは東京のラーメンを選んだのか?)。
4軒のラーメン店が初掲載
「ミシュランガイド東京2020」では、464軒の飲食店・レストランが掲載されているが、そのうちラーメン店の掲載は22店舗で、「一つ星」の評価を受けたのは『創作麺工房 鳴龍』『SOBA HOUSE 金色不如帰』の2店舗。新たに「ビブグルマン」に選ばれたのは『銀座 八五』『西荻燈』『純手打ち 麺と未来』『中華そば こてつ』の4店舗となった。
一時期は鶏白湯や味噌など、掲載されるラーメン店のジャンルも拡がりをみせていた「ミシュランガイド東京」だったが、今回の初掲載店はいずれも透明なスープの清湯ラーメンとなった。東京版ミシュランにラーメンが登場して6年。ミシュランが東京のラーメンに求めているものが、ある程度見えてきたように感じる。
ミシュランがラーメンに求めているものは
ラーメンは今や世界各地にある食べ物だ。その中で日本および東京のラーメンに求められているものは、まず「地域性」であろう。日本らしい、東京らしいラーメンとは何か。昔ながらの中華そばが東京ラーメンを代表するものとは言わないが、透明な醤油ラーメンが東京をイメージさせるものであることは間違いない。今回の掲載店にもそのルーツを喜多方や白河に求められるものもあるが、広義的に解釈するならば日本らしい、東京らしいラーメンが選ばれていると考えて良いと思う。
そしてもう一点はラーメンの「料理性」ではなかろうか。スープを取る手法や麺を作る技法などに、料理人の経験やラーメン職人としての探究心などが反映されたラーメンが多く掲載されており、その傾向は年々強くなっている印象がある。フレンチのベテランシェフが作り上げたスープや、製麺機を使わずに手で作った麺など、おいそれと模倣出来ないアイディアやクオリティのラーメンが高く評価されている。
「ミシュランガイド東京」は、少なくともラーメンを「B級グルメ」とは認識しておらず、一つの「料理」として高く評価していることは間違いない。果たしてこれから先、東京のラーメン店で星を獲得する店は増えるのか、史上初の二つ星獲得店は現れるのか。料理としてのラーメンの真価がミシュランから問われている。
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※写真はすべて筆者によるものです。