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「王様のブランチ」リポーターを経て、初ヌード写真集も話題。30代を前に、丸裸になって挑むしかなかった

水上賢治映画ライター
「遠くへ,もっと遠くへ」で主演を務めた新藤まなみ 筆者撮影

 結婚5年目、年上の夫にもう見切りをつけた女と、家を出ていった妻のことをいまだに引きずっている男。

 いまおかしんじ・監督、井土紀州・脚本による映画「遠くへ,もっと遠くへ」は、こんな女と男の出会いの物語だ。

 ここではないどこかを探し求める二人が辿り着く先は?

 新たな愛へと踏み出そうとする彼らの旅路が描かれる。

 その中で、主演を務めるのは、「王様のブランチ」リポーター出身で昨年発表したデジタル写真集が大きな話題を呼んだ新藤まなみ。

 ある意味、天然で自由人、でもものすごく現実的でしっかりもしているヒロインの小夜子役を艶やかにキュートに演じ切っている。

 ちょっとびっくりするユニークなヒロイン像を作り上げた彼女に訊くインタビューを五回にわたって連載したが、ここからは番外編として少し作品から離れて、今後のことなどいろいろと訊いていく。(番外編全二回)

「遠くへ,もっと遠くへ」で主演を務めた新藤まなみ 筆者撮影
「遠くへ,もっと遠くへ」で主演を務めた新藤まなみ 筆者撮影

30代を前に、わりと切羽詰まったものが自分の中にあった

 まず、映画「遠くへ,もっと遠くへ」の少し振り返りにもなるが、この映画出演は自分としてもひとつターニングポイントを迎えたときだったという。

「この映画のお話をいただいたときはひとつの岐路に立っていました。

 30代を前に、わたし自身、なにかを変えたいというか。このままじゃいけないと思ったんです。

 ここでひとつ何か新たな側面をみせるとか新たな挑戦をするとかしておかないと、これから先はないみたいな。

 わりと切羽詰まったものが自分の中にあったんです。

 もう20代後半だし、芸能界において、ここを踏ん張るか踏ん張らないかで、この先が決まってくるなと。

 それで、わたしの芸能活動のひとつの軸としてあるのがグラビアで。

 4年ぐらい前にグラビアのDVDを出したんです。

 24~25歳ぐらいのときだったんですけど、水着で海で遊ぶみたいなDVDを出した。

 でも、これがまったく売れなかったんです(苦笑)。わたしとしてもなにか思いきりが足りなかった感覚があって。

 売れる売れないとかの前に、自分を出し切ったような手ごたえがなかった。

 その後、いまの事務所に映って、改めてグラビアをやりましょうということになった。

 そのとき、もうぜったいに5年前のDVDのようなことにはしたくなかった。

 『やり切れなかった』とか後悔したくなかった。

 だから、宣言したんです。『もうできることはなんでもやります』と。

 と言うことで、『フライデー』さんの誌面でいきなりヌードに挑戦させていただきました。

 そのヌードのグラビアがあって、『それぐらいできるならば』ということでお話いただいたのが今回の『遠くへ,もっと遠くへ』だったんです。

 で、前に少し話しましたけど、わたしはいろいろやってきて、たぶんこれからもいろいろやっていくとは思うんですけど、メインとしてはお芝居をやっていきたい。

 そうずっと思ってきた。だから、お話をいただいたときはとにかくうれしかった。また、『もうなんでもやります』と腹くくって脱ぎまくった(笑)結果、自分が一番やりたかったことにつながった。そして、30代手前、29歳というときに出会った作品で、ほんとうにここから気持ちを新たにステップアップできたらなと思いました。

 で、前回お話した通り、実際に素っ裸になってますけど(笑)、いい意味で自分の気持ちとしても自分自身を包み隠すことなく丸裸で作品に飛び込んでいくことができた。

 30代を前に、いいチャレンジができてありがたいなといま思っています」

「遠くへ,もっと遠くへ」
「遠くへ,もっと遠くへ」

あまりそう見えなかったかもしれないんですけど(苦笑)、

わたしとしてはそうとう気合を入れて現場に立っていたんです

 そうした意欲もあってのことだろう、「遠くへ,もっと遠くへ」で演じた小夜子は、おそらく新藤まなみでなければ成立しなかったといっていいぐらいの存在になっている。

 声のトーンから、唐突に「ヤッホー」というところなど、ユニークないまおか演出にもきっちりと対応しながら、絶妙な佇まいで夫のとの離婚が決定的になった女性の心の揺らぎを体現している。

 とても明るくもみえれば、ちょっと寂しさも感じさせる、ドライに生きているようで、実は人一倍、愛情深い、そんな小夜子を見事に演じ切っている。

「そういっていただけるとうれしいです。

 やはり小夜子が『新藤まなみで良かった』と思ってもらえる人物になるよう演じ切ることが、わたしの中では大きな目標でしたから。

 これが誰かほかの人でもと思われちゃうようではダメ。そうならないようにわたしとしても小夜子には全力を注ぎました。

 あまりそう見えなかったかもしれないんですけど(苦笑)、わたしとしてはそうとう気合を入れて現場に立っていたんですよ。

 いや、大げさと言われるかもしれないんですけど、自分という役者の力が試されるときで、小夜子を魅力的に見せられなかったら、もう役者人生は終わるんじゃないかというぐらいの気持ちがありました。だから、もうさきほどいったように丸裸になって挑むしかなかった。いままでやってきたことをすべてここに注ぎ込むような意識がありました。

 だから、当然ですけど、自分の中でも思い出深い役になったことは確か。

 いまは、みなさんの目に小夜子が魅力的に映ってくれることを願っています」

(※番外編第二回に続く)

【新藤まなみ第一回インタビューはこちら】

【新藤まなみ第二回インタビューはこちら】

【新藤まなみ第三回インタビューはこちら】

【新藤まなみ第四回インタビューはこちら】

【新藤まなみ第五回インタビューはこちら】

「遠くへ,もっと遠くへ」ポスタービジュアル
「遠くへ,もっと遠くへ」ポスタービジュアル

「遠くへ,もっと遠くへ」

監督:いまおかしんじ 

脚本:井土紀州

出演:新藤まなみ 吉村界人

和田 瞳/川瀬陽太/大迫一平/佐渡寧子

黒住尚生/広瀬彰勇/佐藤真澄/茜 ゆりか

広島県・横川シネマにて12/24(土)~公開

ポスタービジュアル及び場面写真はすべて(C)2022レジェンド・ピクチャーズ

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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