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黄身(君)だけでなく、卵白に注目! 

池田恵里フードジャーナリスト
卵をなぜか全部、お見せしなかったのはまだまだ未知なる栄養があるという表現(写真:アフロ)

卵の凄さ

超長寿になりつつある今、「健康的な老後を過ごしたい」と思っている人々も多い。

そのためには介護予備軍「メザニンシニア」をいかに少なくするか、各人の身体作りが大切で、そのカギとなるのが「たんぱく質」というのはご承知の通り。

前回は摂取する大切さもあるが、なかなかたんぱく質を摂取するのはなかなか難しいため、「旨みの大切さ」を述べた。

介護予備軍である「メザニンシニア」低栄養傾向「うま味」の提案

卵の栄養についても以前、紹介した。

卵! 外食・中食でブーム そして今、海外へ

今回はさらに掘り下げるために、卵白に注目した。

たんぱく質、中でも白身に注目

とある展示会に行き、そのなかのキユーピーのブースに目が止まったのだ。

卵白??

展示会で見た卵白の栄養と吸収率
展示会で見た卵白の栄養と吸収率

キユーピータマゴ株式会社 開発本部 価値開発室室長の有満和人さんにお話を聞くと

卵白について

「卵白は体内で合成できない必須アミノ酸すべてがバランスよく含まれているんです」

「卵白は他のたんぱく質のなかでも体内利用率はNO.1なんです」

体内利用率、つまり正味のたんぱく質利用率が卵白はなんと大豆、乳清より高く、同じようなグラム数で摂取するなら、卵白をとることでたんぱく質の吸収率が高いとのこと。

資料も送って頂いた。

卵白タンパク質には、コレステロール濃度を低下させる作用があるという研究結果が 報告されている。総コレステロール濃度が210~220 mg/dLの台湾の女子大学生を対象に、卵白摂取群、豆腐摂取群、プロセスチーズ摂取群の3群に分けて比較した研究がある。エネルギー、タンパク質、脂質の摂取量を各群で揃えて、コレステロール摂取量もほぼ同量となるように調整したところ、27~33日間の摂取後の脂質測定で卵白摂取群は、HDLコレステロール濃度が豆腐摂取群とチーズ摂取群に比べて有意に上昇し、LDLコレステロール濃度と総コレステロール濃度はチーズ摂取群に比べて有意に低下しているという結果になった)。また、高コレステロール食を与えたラットを使った実験で卵白タンパク質のコレステロール低下作用のメカニズムを検討したところ、卵白タンパク質によるコレステロールの胆汁酸ミセル形成阻害がコレステロールの吸収低下につながることを支持する研究 結果が報告されている。そして、卵白タンパク質に含まれるシステインがコレステロール濃度を下げる可能性も示唆されている。

出典:タマゴとコレステロール― 科学的根拠に基づいた知見 ―

私も含めて、卵白のたんぱく質の吸収率の高さを知っている人は少ない。

そして卵白に関して俄然、注目するようになった。

同書ではこのほかに

卵白のタンパク質成分には、前述のようにコレステロール低下作用のあることが確認されているが、その他に、卵白タンパク質を摂取後、軽度の運動負荷により血漿分岐鎖アミノ酸(BCAA)が効率的に利用され、筋肉量の増量や、筋力の増大の効果が報告されて いる)。卵白のタンパク質成分には、前述したようにコレステロール低下作用のあることが確認されているが、その他に、卵白タンパク質を摂取後、軽度の運動負荷により血漿分岐鎖アミノ酸(BCAA)が効率的に利用され、筋肉量の増量や、筋力の増大の効果が報告されている。

菅野道廣 タマゴ科学研究会 理事長 九州大学・熊本県立大学 名誉教授

近藤和雄 東洋大学 食環境科学部教授 お茶の水女子大学 客員教授・名誉教授

磯博康 大阪大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学教授 監修

出典:タマゴとコレステロール― 科学的根拠に基づいた知見 ―

卵白は摂取後、運動すると効率的なのだ。

キユーピー文献を調べてみると、

キユーピー(株)が低栄養に陥り易い高齢者の栄養改善のための卵を使った商品による提案について紹介した。「たまごかけご飯」は生卵の一般的な料理であるが,病院や高齢者福祉施設の給食で提供されることはほとんどなく,食べたくても食べられないメニューになっている。これはサルモネラ菌による食中毒リスクのためである。同社開発の「ジャネフ ワンステップミール たまご風味」は低栄養の原因である食欲の低下に着目し,食欲の喚起をテーマとしたごはん用調味料である。小袋1袋(ご飯1膳分)で60kcalのエネルギーが摂取できる。「ジャネフ ワンステップミール 料理に混ぜる栄養パウダー」は卵白蛋白質を用いて高齢者の栄養改善を目指したもので,栄養価の高い卵白をペプチドまで分解した同社の「ペプチドファイン」を配合している。

出典:月刊フードケミカル

そこでキユーピーの広報の村居さんにマヨネーズについてさらにお聞きすると、マヨネーズを製造する際、卵黄を使用し、その残りの卵白を何とか有効利用ができないと考えたが、最初は、食品の原料としての活用だけだったとのこと。研究を進め、現在では卵白の機能成分にも着目し、食品の日持ち向上剤やウイルス対策のアルコール除菌剤、化粧品の材料などにも応用されているとか。

プロテイン(たんぱく質)市場拡大

日本食糧新聞によると、従来はアスリート=プロテインというイメージが強かったが最近では高齢者、若い女性のニーズが上昇しており、富士経済によるとスポーツ系を中心とするプロテイン市場は過去10年間伸び続けている。

2016年 257億5100万円(前年比17・5%増)

2017年 301憶5200万円(同17・1%増)

10年間で約3倍の規模に拡大している。

最近のヒット商品ではコンビニのサラダチキンはご存知の通り。

2018年はサラダフィッシュだった。

2019年 卵白に大いに期待できるのではないだろうか。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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