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介護予備軍である「メザニンシニア」低栄養傾向「うま味」の提案

池田恵里フードジャーナリスト
高齢化によって食の提案も変化が求められる。しかし企業は一律のごとく・・・(写真:アフロ)

高齢化にむけての食の提案、現状、そして今後

既に高齢者が全体の25%を占め、そんななか、小売りが行っている高齢者向け提案を見ると、一皿、1パックにおける量を減らすといった、ちょっと厳しい言葉ですが、誰でも出来る安直な提案で留まっている。関東、関西のスーパーを定点観測しているが、これまで松竹梅でパックされていた商品がほんのちょっと容量を少なくして販売している。

松竹梅販売、代表選手ポテトサラダ

一例を上げるとポテトサラダ。どの地域でも売れ、サラダではNO1商品に君臨している。いずれのスーパーも大中小と容量、価格を変え、所謂、松竹梅販売をしている。これにより売り場の面を広げ、売れる商品を徹底して売る。確かにポテトサラダの売り方としては王道であるため、販売方法は変わらないまでも、スーパーの一部では、小パックを100g以上から80gと変更をかけているところも出てきた。

「食が細くなってきているからって、パックの容量を少なくする。それだけだと意味がないと思う」という声も。確かに、顧客ニーズに即した提案は、量だけでは解決しない。

高齢化による医療費のふくらみ、介護費も、しかしその前に打つ一手

今後、医療費は2012年39兆円から2025年には62兆円、12年の介護費9兆円から25年には21兆円と推計(みずほ銀行、ライフケアチーム参照)され、その多大なる費用を考えるとその前に手だてが必要なのだ。

アクテイブシニアと要支援と介護

さてここで問題なのは、カテゴリー分け。これまで一般に、アクテイブシニア、そして要介護と介護と2つに分かれていることが多い。しかし最近、問題となっているのが、アクテイブシニアの中に要介護予備軍、つまり「メザニンシニア」が30%から40%いることだ(厚生労働省による)。

要支援・要介護に至るまでの経過、要因として、

モデル例

地域包括支援センター業務マニュアルをもとにみずほ銀行産業調査部作成
地域包括支援センター業務マニュアルをもとにみずほ銀行産業調査部作成

この表のプロセスでもわかるように運動機能の低下、骨折から要介護、介護となる。しかしそこに「低栄養」が引き金になり運動機能、骨折を起こしやすくなっていることも一理ある。すでに65歳では男女17%、85歳にいたっては30%以上は「低栄養」に陥っているという。

日経参照2015年7月16日
日経参照2015年7月16日

タンパク質の摂取が少ないことから起こるとされ、マニュアルなどを見ると「お肉を若い人より多く食べましょう、牛乳を飲みましょう」といったわかりやすいアドバイスが多い。

しかし味覚障害から食欲低下をおこし、低栄養になっていることも無視できない。

年齢がいくに従って、なんらかの病気を患い、その治療薬の副作用、亜鉛欠乏(若年者の味覚障害に多い)により、味覚障害が引き起こされるという。このほかに40歳以上ではピロリ菌保有者は70%以上が感染し、このことからの胃潰瘍による食欲低下となり、もちろん年齢がいくにしたがって、口内の乾燥により、味の伝達がしにくいため、味がわからなくなっていくとされる。

そこで解決策の一つとして、うま味の役割は大きい。

甘味・塩味・酸味・苦味うま味

五味のなかで、うま味を感じないと食欲に大きく影響を及ぼすと言われる。他の味(甘味・塩味・酸味・苦味)のものが正常であっても、うま味が感じない場合、味覚障害の1割の方が「味がしない」という言葉が返ってくるという。うま味といえば、これまでリピート、つまり病みつきになる味ということは知られているところ。これに健康維持、つまり食欲を維持するうえで、「うま味」は大きな担い手となる。

そこでうま味のなかでもグルタミン酸について

グルタミン酸が胃で受ける内臓感覚の情報が脳に伝えられ、迷走神経を介して反射的にタンパク質の消化機能を高めると同時に、脳に伝えられて嗜好性判断、食欲の調節に影響する。さらにはグルタミン酸ナトリウム含有餌摂取によりピロリ菌感染胃炎の発症も抑えられる

出典:『日本味と匂学会誌』 東京医科歯科大学・歯学部・口腔保健学科 杉本久美子氏 味の素株式会社 畝山寿之氏引用

「メザニンシニア」はタンパク質不足から引き起こされ、と同時にそこに味覚障害が潜んでいることも頭に入れ、日々の日常生活に注意が必要と思う。年齢が行くにしたがって、このように食事を考えながらというのは、煩わしさを感じるかもしれない。しかしちょっとした心がけとそれを知ることで、健康年齢、つまり日々、人間らしい生き方を伸ばすことができる。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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