卵! 外食・中食でブーム そして今、海外へ
卵の栄養の見直し 売り場では・・・
「卵は一日1個だと思っていたけれど、2個でもいいそうよ」
「卵は食べすぎるとコレステロールが高くなる」
これまで卵の健康効果は、さまざまな意見に分かれ、正直、迷うことがしばしばあった。
ある知り合いの医者(糖尿病専門)に聞くと「糖尿病患者の食生活を記録、ヒアリングしていると、卵をとりすぎている人は心臓病のリスクが高い」と言われたことがある。
確かにハーバード大学公衆衛生学大学院によると、毎日1個、あるいはそれ以上の玉子を食べていた糖尿病のある男性は、週1個以下の糖尿病男性に比べて2倍も心臓病のリスクが高いとされている。
ところが最近、卵摂取と糖尿病の関係、そして栄養についても、ずいぶん情報が蓄積され、以前とは違った見解が見受けられるようになったのだ。
そしてスーパーの売り場、中でも関西では、卵の栄養の見直し以前から、ここ5年ほどずいぶん卵焼き弁当が見受けられ、関東では店舗内で出し巻き玉子を焼いているところまである。
今、卵の栄養の最近の見直しもあって、卵料理にとって追い風となるであろう。
そこで今回、卵についていろいろな角度から見ていきたい。
なお栄養・健康については、専門家ではないので論文をいくつか挙げてみた。
卵の健康効果について
日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、卵の摂取量と糖尿病の有病率との間に関連は認められないと記述されている。
国立がんセンターの多目的コホート研究(JPHC研究)のタマゴの摂取と糖尿病発症との関する論文では、11保険所管内に住む40歳から69歳の63000人の追跡調査を5年行った。タマゴの摂取量によって4つのグループに分類し、5年間の糖尿病発症との関連を調べたところ、男女ともに卵の摂取量が多い群でも最も少ない群に比べて糖尿病の発症リスクに差はなかった。また、女性ではむしろ発症リスクが低い傾向がみられた。
海外
スペイン人約16000人(平均38・5歳)を対象とし、6・6年追跡したコホート研究。
タマゴの摂取頻度を1週間あたり、1個未満、1個、2から4個によって糖尿病発症のリスクに差は認められなかった。
東フィンランドで中高年の男性2332人(42歳から60歳)を対象に、卵の摂取量と糖尿病の発症リスクの関係を平均19・3年追跡調査。タマゴの摂取量によって、4つのグループに分類。
・タマゴの最も少ないグループ→摂取量1日14g未満、一日あたり四分の一相当
・タマゴの摂取量上位2つのグループ→1日27gから45g、一日あたり四分の三
と比較すると多く摂取している方が発症リスクが約40%低かった。
糖尿病の発症後について
日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、糖尿病患者において、タマゴの摂取量と冠動脈疾患リスクとの関連は認められなかった。
このほかにタマゴとメタボリックシンドロームの関係については、毎日2個相当食べるグループと卵を食べないグループを14週間後、体重などの変化を比較した研究では、体重および血中中性脂肪、コレステロール濃度の値に両軍で優位な差はなかった。
ダイエットにも効果
この他にアメリカではBMI25から37の肥満の40歳から70歳のアメリカ男性31人を一日3個を摂取するグループ、コレステロールを含まない代替品を摂取するグループに分けて、12週間後、結果はタマゴを摂取したグループの体重が一人あたり6.7キロ減少した。
ちなみに1個(約50g)ではエネルギーは76カロリーである。
つまり卵ダイエットなのである。
栄養について
卵は人間にとって必要な栄養素がすべてと言ってよい程、含まれている。これは雛が孵化するのに必要なあらゆる栄養素がぎゅっと詰まっているからだ。ビタミンC、炭水化物を除いて。
つまり卵に主食とビタミンCを摂取すれば栄養価が揃うのだ。
そして抗酸化反応にきわめて重要な役割となるセレンはタマゴ1個に対して必要量の約半分補うことができる。
ということで高齢化が進むにつれ、たんぱく質の摂取量が減少し、介護予備軍が増加していることからも卵料理は注目されている。
介護予備軍である「メザニンシニア」低栄養傾向「うま味」の提案
外食
最近では外食で卵を使った料理がいろいろな形でメニューとして登場されるようになった。中でも外食の最近の傾向は「卵かけご飯の定食」の提供である。オペレーションも滞りなく回る。
ライスメーカー「ミツハシ」が行っている「GOHANYA GOHAN」の卵かけ定食1000円(税込み)
販売数量は安定しているとのこと。
当初、卵かけご飯をメニューに投入するか否か、危惧されたそうだが、お客様のなかには卵を追加注文される方もいる。
確かに実際、食べてみると、1個だけでは物足りないのでついつい追加してしまうのがよくわかる。
店によっては「卵かけご飯」を朝食用に提供している店もある。
朝食需要は、外食にとって半ば売り上げに貢献しないあきらめの境地の時間帯であるが、オペレーションなどを考慮すると卵かけ定食は一般の方にもわかるように非常に楽であり、日本では定番中の定番である。
卵かけご飯は内食でも
たまごかけご飯な内食でも新たなる展開がある。
最近ではJA全農たまごがたまごかけご飯専用の卵「とくたま」を発売(2017年から東日本限定)。
糖蜜・魚粉・こめ油をあわせることで黄金バランスに仕上げ、コク、粘りのある黄身でごはんと合わせることで卵かけごはんのさらなる進化を遂げているのだ。
「とくたま」には
「キミ(黄身)しか見えない」
その心は
「おかずが嫉妬するたまご」
「全農」を「全能」の神ともじっている。昭和的なユニークさでストーリーを展開している。
ふと笑ってしまうので、ご覧あれ。
全農たまご関係者にお話しを伺うと、この「とくまた」は好調とのことで関西でも販売を手掛け、「フードアクション・ニッポン・アワード2017」で入賞している。
中食では関西から卵
さて中食では、この栄養の見直し以前、5年ほど前から、関西のスーパーで見受けられるようになったのが「卵焼き弁当」である。
関西と言えば、弁当激戦地区と言われ、スーパーでの価格設定はあるベンダーの低価格弁当が陳列されるようになり、すっかり398円以下が定着してしまったのだ。原料が高騰するなか、いっこうに景気は回復しないため、価格設定を引き上げることは難しい。その一方で利益を生まなければならない。そんなジレンマの中で、「物価の優等生」とされる卵に注目されるようになったのである。
下記の写真は梅田という激戦地区の立地もあって、高め設定であること悪しからず。こんな卵焼き弁当が関西のスーパーでは多く見受けられる。
この他に関西ではパンを昔からある厚焼き玉子サンドも登場。
名古屋のサンドはこれ
九州ではこんな感じ
パンに塗る用にサラダにしている。
ということで卵の商品は他の大手スーパーでも軒並み地域関係なく陳列している。
そして出し巻き玉子もパック売りもしている。
卵の価格については今年も至極安定しており、4月から5月は164円と過去10年間でみても最も低い
そして他の畜肉とも比較してみると
子供の弁当のおかずで人気なのが1位「唐揚げ」2位「卵焼き」(マルハニチロ 2018年5月30日)。これまで1位の唐揚げは弁当、そして単品パック売りでも販売できる商品。ここに「卵焼き」が最近加わるようになった。
海外へ
生の卵を食べるという文化は全世界的にみても珍しく、海外の人にも認知してもらうのは良案といえる。実際、日本で食べた卵かけご飯がおいしいという外国人も多い。ドイツ人の友人は「日本の卵は美味しい、たぶん飼料が違うのだろう」と感心しきり。
今、このように訪日客が自国に戻って食べたい要望から、輸出も増加している。
平成29年の鶏卵輸出額は10・2億円(対前年比20%増)
輸出量3891トン(対前年比20%増)
平成31年の輸出額達成率は39%とされている。
(「食肉鶏卵をめぐる情勢」平成30年5月農林水産省参照)
2006年に卵かけご飯が香港の富裕層でブームになったことがあったが、今回は来日をきっかけに卵輸出の追い風となっている。
31年1月から4月の数値をみると輸出額は44%増、輸出量も45%増となっている。
まだまだ続く卵ブーム
これまできわめて安定した価格帯を推移している卵。これに先述したように栄養面も良いとなれば訴求効果は抜群である。
そして最近、高齢化になるにつれ、たんぱく質をとることがいかに大切であるか、ようやく認知されつつある。
他の畜肉と比較しても、卵は和洋中と広く使われる食材であり、今後、より卵の開発が進められるのではないだろうか。
参考文献 タマゴとコレステロール (タマゴ科学研究会)