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MCTオイルの進化とその驚きの効果:美味しさと健康を手に入れる新しい選択肢

池田恵里フードジャーナリスト
MCTプラス・コンソーシアム写真提供

MCTオイルの急速な広がり 

最近、MCTオイルが、第3のオイルとして注目を集めている。

MCTオイル(中鎖脂肪酸油)は、古くから病院食などで活用されてきたが、最近ではその健康機能に注目した一般消費者向けの商品や飲食店でのメニューが、日本国内でも急速に広がりを見せているのだ。

MCTオイルとは?

MCTオイルとは、中鎖脂肪酸油(Medium Chain Triglyceride)のことで、頭文字をとって、MCTと名付けられている。主成分である中鎖脂肪酸は、母乳や牛乳などの乳製品、さらにはココナッツなどのヤシ科植物の種実に含まれる成分。一般的な食用油(長鎖脂肪酸油:LongChainTriglycerifde:LCT)などと比べて、素早く消化・吸収されケトン体を生成し、エネルギーになりやすい特長がある。医療やスポーツ、生活習慣病予防など、様々な場面で利用されている。(MCTプラス・コンソーシアム参照)

MCTオイルの飛躍的成長

2019年から2023年度のMCT関連商品の販売金額を見ても、過去4年連続で最高の売り上げを記録しており、特に昨年2023年の売上増加率は、前年比203%となり、飛躍的な成長を遂げているのだ。

KSP-SP出典
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約6割は油として利用されているが、図でもわかるようにドレッシングからはたまたヨーグルト、クッキーなどに利用され、多様化している。しかもそのアイテムは増加しており、2019年から見ると、2023年は約4倍になっている。

KSP-POS 出典
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次なるオイルとして、飛躍的な伸びを誇っているMCTオイル。

健康効果に注目されていることが大きい。

そしてMCTオイルという油を摂取すると、体内で素早くエネルギーとなり、様々な健康効果を発揮すると言う。

ということで、今回、MCTオイルの効用について、取り上げたい。

MCTオイルの速やかなエネルギー転換 脂肪燃焼効果の期待も

MCTオイルの主成分である中鎖脂肪酸は、分子の長さが通常の油に含まれる長鎖脂肪酸と比べて短いため、水に馴染みやすく、代謝経路も短いため、通常の油よりも4~5倍速く分解され、効率的にエネルギー源となる。つまり、素早く消費されることで、脂肪が蓄積しにくい特性があるのだ。

効用として

・脂肪燃焼効率が高い

・疲労回復

・便通の改善

・運動パフォーマンス向上

・低栄養の改善

・認知機能改善

・乳児の発育促進

老若男女問わず、あらゆる年齢層に効用があるのだ。そしてその裏付けも実証済みである。

美味しさをより感じるMCTオイル

人間は食物を口に入れると、舌の味蕾(みらい)がセンサーとして働き、料理や飲料からの味の信号を感じ取る。味蕾には水溶性と脂溶性の2種類の受容体があり、この2つが揃うことで味が伝わりやすくなり、「美味しさ」を感じやすくなるのだ。MCTオイルは、水溶性に近い特性を持つため、味を感じやすくさせる効果があることが判明した(鈴木隆一 先生監修、AISSY株式会社代表取締役社長 / 慶應義塾大学大学院理工学研究科 特任講師)。

美味しさを増幅させるMCTオイルの効果

MCTオイルは、美味しさを増幅させる効果がある。例えば、コーヒーやご飯ではコクが増し、味噌や野菜ジュースでは旨味が強調されるのだ。

美味しさを妨げる要素を軽減する

さらに、MCTオイルは美味しさを妨げる要素を軽減する効果もある。例えば、ブロッコリーにMCTオイルを加えると苦味が軽減され、ヨーグルトでは酸味が抑えられ、食べやすくなるのだ。

実際、MCTオイルを使用し、提供している店舗もある。

リスカフェでは、コーンキャラメルかき氷とMCTオイルを掛け合わせして提供。1700円(写真提供MCTプラス・コンソーシアム写真提供)
リスカフェでは、コーンキャラメルかき氷とMCTオイルを掛け合わせして提供。1700円(写真提供MCTプラス・コンソーシアム写真提供)

高田馬場にある「リスカフェ」では、コーンキャラメルかき氷とMCTオイルを掛け合わせて提供されている。

前田代表「コーンクリームソースにMCTオイルを入れることで、コーンのまろやかさが増し、一体感が生まれます」

MIXOLOGY HERITAGEではラズベリーMCTオイルとブラッディメアリーカクテル、マンゴーアマニオイルとパプリカヨーグルトカクテルで提供。2200円(MCTプラス・コンソーシアム写真提供)
MIXOLOGY HERITAGEではラズベリーMCTオイルとブラッディメアリーカクテル、マンゴーアマニオイルとパプリカヨーグルトカクテルで提供。2200円(MCTプラス・コンソーシアム写真提供)

日比谷にある「MIXOLOGY HERITAGE」 では、フルーツをMCTオイルとアマニ油に漬け込み、それをカクテルとして提供されている。

伊藤マスター「オイルを使うことで、カクテルの旨味を引き立てながら、甘味、コクのバランスを保っています」

これまでのオイル、これからのMCTオイル

油というと、どうしても健康とは真逆のイメージを持たれがちであったが、MCTオイルはその常識を覆し、健康的な効果をもたらす新しい選択肢として注目されている。そしてMCTオイルは、通常の油よりも速やかにエネルギーへと変換されることで、脂肪の蓄積を抑え、健康的な生活をサポートするのだ。美味しさに関しても、食材の味を増幅する力も持っているのだ。

MCTオイルの急速な広がりは、単なるトレンドではなく、私たちの食生活における新たなスタンダードとなる可能性を秘めているのではないか。MCTオイルを日々の食事に取り入れることで、従来の油とは一線を画した健康的なライフスタイルを手に入れることができると思う。

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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