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「核廃絶」は祈りで具体的政治課題でないというのか

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(96)

葉月某日

自民党の土屋正忠衆議院議員が集団的自衛権に言及した長崎市長の「平和宣言」をブログで批判した。

ブログには「長崎市長は歴史的体験を踏まえた核廃絶について語るから権威があるのだ。集団的自衛権云々という具体的政治課題に言及すれば権威が下がる」とあり、「核廃絶の祈りではなく、平和を維持するための政治的選択を語りたいなら長崎市長を辞職して国政に出ることだ」と結論付けている。

このブログから読み取れることは、まず「核廃絶」は祈りであり、具体的政治課題ではないと土屋氏が考えていることである。次に具体的政治課題ではないから「核廃絶」を主張することに権威があると考える。そして具体的政治課題に言及したければ長崎市長という権威ある職を辞して、自分のように権威のない国会議員になるべきと主張しているのである。

ここにフーテンは戦後の日本人の「戦争と平和」に対する典型的な思考を見る。つまり「核廃絶」は祈りであり、決して現実の具体的政治課題とは考えない。そして祈りには「権威」を与え、誰も異を唱えられなくはするが、しかしそれは神棚に祭り上げられて現実政治と切り離され、現実政治はその祈りとまともに向き合わないのである。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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