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学生インターンには何を頼むか--「3人一組」での商品・サービス評価がちょうどいい(80社の経験から)

上山信一慶應大学名誉教授、経営コンサルタント
出展:エストニアツールボックス

 採用活動の一環で学生インターンを受け入れる会社が増えた。筆者が教える慶應SFC生も多くが短期や中期のインターンを経験する。

 だが一般に学生インターンといわれる活動の内容は様々だ。多いのは市場動向の調査や新規事業の企画提案を頼んで幹部の前で発表してもらうもの。あるいは2,3の部門に数日ずつ配属され、見学に加え雑務を手伝う。だが、いずれも採用を過度に意識した「お客様扱い」や「会社体験」になってしまい会社の実態がよくわからないままに終わる・・と必ずしも評判は良くない。逆もある。ベンチャーや外資系の場合、即戦力とみなされ、プロジェクトチームや現場に配属される場合もある。いきなり現場に放り込まれるので確かに会社の実態はわかる。だが社員並みの仕事を任され、学業との両立に悩んだり、インターンの名を借りた低賃金労働ではないかと疑われる事例もあるようだ。学生インターンに何をしてもらうか、は企業側、学生側の双方の悩みの種であり、改善の余地が大きい。

〇学生インターンには商品やサービスの第三者評価を頼もう

 日本でのインターンの歴史は浅い。終身雇用制のもと、そもそも外部の人間を現場で受け入れることに慣れていない企業も多い。そこでお勧めしたいのが、インターンを無理に現場に配属せずに、学生3名程度を一チームとして自社の商品やサービスの第三者評価を任せてみることだ。もちろん最初に会社の説明や商品、サービスの理解をしてもらうためのオリエンテーション、見学などはする。それからは学生中心に半分社内、半分お客のスタンスでの第3者評価を頼むのである。

 通常のインターンで行う現場の資料づくりや作業の手伝いなどは実務的だが雑務中心であまり面白くない。企業活動の末端の作業を経験するだけでは会社の魅力や楽しさは伝えにくい。また社員も学生の指導に慣れていない。学生インターンには、無理に日常業務の一部を切り取って頼むよりもお客様目線からの第三者評価を頼んではどうか。

〇慶應SFC上山ゼミでの経験

 手前みそだが慶応SFCの私のゼミ(経営戦略)の紹介をする。ここでは3人一組で各種企業のサービス評価やコンサルティングをやってきた(これまでに累計80社)。ゼミだからインターンよりも長く3カ月かけて一つの企業や行政機関の事業のあり方を評価し、改革の提案までやる。だが受け入れ企業の多くはこのゼミの経験をもとにインターン活動の中身を改良している。学生チームとの協業を経て学生にできること、できないことの見極めがつき、また付き合い方がわかるのだ。

 コンサルテイングの対象企業は様々だ。アパレル商品、食品、飲料から塾やスーパー、外食、キャンプ場、ホテル、キャッシュレス決済まで様々な消費者ビジネスの評価をしてきた。病院や介護施設、日本サッカー協会、大学病院もやった。さらに私鉄の沿線価値、観光地の評価もやった。

 コンサルティングといっても学生だから、蓄積している知識やノウハウは限られる。一方、彼らは社員からの商品説明や事業の歴史などを学んだうえでヒアリングをするので外注調査員への委託よりも高度な調査ができる。SNS活用を含めたITスキルも高くGoogleフォームやインターネットの調査会社などを使って、あっという間にアンケートと分析を終える。

 生の消費者ヒアリングでも学生チームは抜群の威力を発揮する。社員では到底聞き出せない消費者の生の声を引き出してくる。消費者の皆さんも学生の勉強の一環となると協力的だし本音を話してくれる。

〇市民の生の意見を聴取する

 具体的にどうやるのか。劇場ビジネスの評価の例をあげよう。学生チームはまず現場を見学したあと支配人、現場の責任者へのヒアリングをやる。年間の公演実態、集客の様子、売り上げ、コストのほか組織体制や経営ビジョンなどを理解する。

 次には手分けして利用者の生の声を聴く。来ているお客のヒアリングに加えて、ほとんど来ないお客にも「なぜ来ないか」を聴く。来ているお客に関しては実際に来られた日に具体に何を感じたか、例えば公演の内容はもちろん、事前宣伝のやり方、会場内誘導のあり方、トイレの込み具合、チケットの支払い方法、SNSの活用状況までの全て(カスタマー・ジャーニーという)を聴く。その上で実体験に即して今後どうしてほしいかもヒアリングする。

 学生によるヒアリングは社員が行うヒアリングよりもはるかにお客の本音が取れる。学生にはお客様は優しい。気兼ねをしないでしゃべってくれる。学生からのややぶしつけな(あるいはもしかしたら失礼なストレートな)質問でも「学生だから基本的なことをまだ知らないのは当然。私たちが教えてあげる」と極めて寛容だ。

 次にやるべきは職員ヒアリングである。お客様から得た現場情報を頭に入れたうえで、職員になぜチケット予約が今のような仕組みになっているかなど、現状の仕組みや制度を聴く。そのうえで彼らが考える今後の夢や課題をヒアリングする。

〇学生チームとのワークショップ

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慶應大学名誉教授、経営コンサルタント

専門は戦略と改革。国交省(旧運輸省)、マッキンゼー(パートナー)を経て米ジョージタウン大学研究教授、慶應大学総合政策学部教授を歴任。平和堂、スターフライヤー等の社外取締役・監査役、北九州市及び京都市顧問を兼務。東京都・大阪府市・愛知県の3都府県顧問や新潟市都市政策研究所長を歴任。著書に『改革力』『大阪維新』『行政評価の時代』等。京大法、米プリンストン大学院修士卒。これまで世界119か国を旅した。大学院大学至善館特命教授。オンラインサロン「街の未来、日本の未来」主宰 https://lounge.dmm.com/detail/1745/。1957年大阪市生まれ。

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