Yahoo!ニュース

新生バルサは、どうなるか。ガビの「偽WG」とギュンドアン加入で訪れる変化。

森田泰史スポーツライター
バルサの中心選手であるガビ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

少しずつ、輪郭を伴ってきている。

バルセロナは昨季、リーガエスパニョーラで優勝した。一方、チャンピオンズリーグでグループステージ敗退。ヨーロッパリーグでも決勝トーナメント進出を懸けたプレーオフでマンチェスター・ユナイテッドに敗れ、欧州の舞台では結果を残せなかった。

CLでは苦しい思いをしたバルサ
CLでは苦しい思いをしたバルサ写真:ロイター/アフロ

リベンジを果たすため、バルセロナはこの夏、補強に動いている。イルカイ・ギュンドアン、イニゴ・マルティネスをフリートランスファーで獲得。また、移籍金3000万ユーロ+ボーナス3100万ユーロでビトール・ロッキ(2024年夏に正式加入予定)を確保した。

■新たなバルセロナの機能性

問題は、チームがどのように機能するかだ。

シャビ・エルナンデス監督は、これまで守備を重視したチーム作りを行ってきた。

他方で、攻撃には課題を残していた。

その辺りが、改善されるかどうかーー。「新生バルサ」を追ってみよう。

バルサ移籍が決定したギュンドアン
バルサ移籍が決定したギュンドアン写真:ロイター/アフロ

大きいのは、やはり、ギュンドアンの加入だ。

ギュンドアンはシティでインサイドハーフ、アンカー、ゼロトップと複数ポジションでプレーしてきた。ジョゼップ・グアルディオラ監督の指導を受けており、ポゼッション、ポジショナルプレーを理解してもいる。

ここで、気になるのは、「偽ウィング」の行方だ。2022−23シーズン、シャビ監督は中盤型の選手を4人並べるため、ガビを左WGに配置。【4−3−3】を維持しながら、MFを多く起用するというプランを固めていった。

■ガビの偽WGと四人の中盤

ガビを偽WGで使う効能は大きい。

ガビがフリーロールで、中央に入ってくる。その時、中盤には4枚が配置され、数的優位を作りやすくなる。また、開いた左サイドの大外のレーンを左SBが埋められる。全体のバランスが良くなるのだ(図1参照)。

ガビの「偽WG」をキープするなら、ギュンドアンにはインサイドハーフのポジションが与えられることになる。

またバルセロナは22−23シーズン終了時にセルヒオ・ブスケッツが退団している。代役としてオリオル・ロメウ(ジローナ)の獲得が濃厚だが、その辺りの機能性もポイントになってくるだろう。

アンカーのポジションについては、当面、ロメウとフレンキー・デ・ヨングで回していくことになるはずだ。個人的には、カンテラーノのニコ・ゴンサレスを推したいが、彼には移籍の可能性が残されている。22−23シーズンの起用法を見る限り、ロメウとデ・ヨングに信頼を示すと考えるのが妥当だ。

デ・ヨング(ロメウ)、ペドリ・ゴンサレス、ギュンドアン、ガビが新たなシーズンの「四人の中盤」になる。

シャビ監督の信頼を勝ち取ったデ・ヨング
シャビ監督の信頼を勝ち取ったデ・ヨング写真:なかしまだいすけ/アフロ

この四人の中盤でシャビ監督が考えるべきは「ポケットの使い方」である。

22−23シーズン、この点においては、壊滅的だった。インテルやヘタフェのような5バックシステムのチームを崩せなかった大きな要因の一つはここにある。

■ポケット攻略法

ポケットを狙うタスクを任せたいのは、ガビとギュンドアンだ。ガビが左WGなら、ギュンドアンには右IHのポジションを与えたい。この2人は逆サイドにいるべきだ。

右サイドに関してはシンプルだ。右WGに、突破型の選手(デンベレ/ハフィーニャ)がいる。その選手をワイドで張らせる必要があるため、右のハーフレーンをギュンドアンが使う。

■左サイドとローリング

次に、左サイドである。ガビ(左WG)がポケットを取るために動く。

この時、大外のレーンが空く。そこをペドリ(左IH)とアレッハンドロ・バルデ(左SB)が状況に応じてスペースを埋めるのが重要だ。

どういうことなのか。

ガビが中央に入る。ペドリ(左IH)がサイドに開き、バルデが内側のポジションに留まる。

あるいは、ペドリが内側のレーンに入ってくる。バルデが大外のレーンを駆け上がる。

この記事は有料です。
誰かに話したくなるサッカー戦術分析のバックナンバーをお申し込みください。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

森田泰史の最近の記事