なぜマドリーは補強に動こうとしているのか?守備陣の負傷と移籍市場の妙…ペレスを襲うジレンマ。
期待値というのは、難しいものだ。
今季、苦しんでいるのがレアル・マドリーだ。シーズン開幕時、マドリーの期待値は高かった。昨季、ドブレーテ(2冠)を達成したチームに、キリアン・エムバペが加わったからである。
マドリディスタの期待は俄かに高まっていた。リーガエスパニョーラ開幕後、マドリーは12試合を消化して勝ち点27を獲得。首位バルセロナ(13試合消化/勝ち点33)に6ポイント差をつけられ、2位に甘んじている。
■補強の可能性
加えて、マドリーは負傷者が続出するトラブルに見舞われている。現在、ダニ・カルバハル、エデル・ミリトン、ティボ・クルトワ、ダビド・アラバ、オウレリアン・チュアメニ、ロドリゴ・ゴエス、ルーカス・バスケスが起用不可な状態だ。
そのような状況が、マドリーに補強に目を向けさせている。
マドリーが最も強く関心を寄せているのはカステーロ・ルケバだ。先にライプツィヒと2029年夏までの契約延長を行ったルケバだが、ライプツィヒは「売り手」側のクラブだ。この夏、ダニ・オルモがバルセロナに移籍したように、交渉次第で移籍の可能性はありそうだ。
一方、近年のマドリーの若手推進プロジェクトに合致する選手がいる。ヨレル・ハトだ。アヤックスでプレーする18歳のDFで、左利きのCBであるという希少性も備えている。
また、その希少性で興味を引いているのがアイメリック・ラポルトである。しかし、ラポルトに関してはアル・ナスルが2023年夏に移籍金2700万ユーロ(約43億円)をマンチェスター・シティに支払い、獲得を決めている。相応の移籍金が要求されるのは不可避で、簡単な取引にはならないだろう。
そして最近、スペインのメディアを賑わせているのがヨナタン・ターだ。今季終了時にレヴァークーゼンとの契約が満了を迎えるヨナタン・ターには、マドリーのほか、バイエルン・ミュンヘン、バルセロナといったビッグクラブが触手を伸ばそうとしている。28歳と若くはないが、逆に言えば経験豊富なCBだ。
■冬の移籍市場と歴史
ただ、歴史を紐解くと、マドリーは冬のマーケットに強いクラブではない。
記憶に残っているのはトーマス・グラベセンだ。2004−05シーズン途中、移籍金350万ユーロでエヴァートンからマドリーに移籍。クロード・マケレレのような中盤の汗かき役としてのプレーが期待されたが、チームメートとの揉め事もあり、2007年夏に移籍金280万ユーロでセルティックへと去って行った。
アントニオ・カッサーノ(2006年加入)、シシーニョ(2005年)、フェルナンド・ガゴ(2006年)、ジュリアン・フォベール(2009年)、クラース・ヤン・フンテラール(2009年)、エマニュエル・アデバヨール(2011年)、ルーカス・シウバ(2015年)…。その他、複数選手が冬の移籍市場でマドリーに加入した。しかし、大きな成功を収めた者はいなかった。
成功例がないわけではない。ブラヒム・ディアス(2019年加入)、カゼミーロ(2013年)、マルセロ(2006年)はマドリーで確かな足跡を残している。
だが、彼らは中長期のスパンで成功した選手だ。レンタル移籍での武者修行、あるいはコンバートで自らの道を切り開き、最終的にマドリーで栄光を手にした。そして、一様に、若くしてマドリーの門戸を叩いている。
かように、フロレンティーノ・ペレス会長にとって、冬のマーケットは「鬼門」になっていると言える。
「(先日のオサスナ戦では)前半のうちに3選手がケガをした。それは普通ではない。この日程では、時に選手を休ませられない。彼らは普段より疲労が溜まったコンディションで試合を行わなければいけない。負傷のリスクは高くなる。これはレアル・マドリーだけの問題ではない」
「今後、しばらく、どうなるかは見てみよう。いま、できることは何もない。できるだけ多くの選手が回復してくるのを祈るばかりだ。その後、1月にどういう動きができるか検討したい」
これはカルロ・アンチェロッティ監督のコメントだ。
マドリーにとって、冬の移籍市場というのは、相性の良いものではない。
しかしながら、負傷者が続出しているのは事実だ。かつてない逼迫した状況が、ペレスとマドリーのジレンマになっている。