なぜレアルは“補強”を考え始めているのか?ミリトンの重傷と離脱…守備陣の人材不足。
チャンピオンチームが、苦しんでいる。
レアル・マドリーの話だ。リーガエスパニョーラで、2位に位置。チャンピオンズリーグでは、昨季の優勝チームがグループステージで全体の18位に沈んでいる。
しかし、それ以上に、カルロ・アンチェロッティ監督を悩ませているのが「負傷者続出トラブル」だ。
リーガエスパニョーラ第13節、オサスナ戦。マドリーは、ヴィニシウス・ジュニオールのハットトリックなどで、この試合をモノにした。
だが、4−0と大勝した試合で、チームの雰囲気は重たかった。エデル・ミリトン、ルーカス・バスケス、ロドリゴ・ゴエスが次々に負傷でピッチを後にしていたからだ。
ダニ・カルバハル、ダビド・アラバ、ティボ・クルトワ、オウレリアン・チュアメニという『負傷者リスト』に、ミリトン、バスケス、ロドリゴの3名が新たに加わった。指揮官とクラブが、煩悶としているのは明らかだろう。
■昨季の経験
少し、時を遡る。2023−24シーズン、同じようにマドリーは苦境に立たされていた。
シーズン開幕の段階で、クルトワ、ミリトンが次々に負傷。2023年12月には、アラバがひざを痛めた。ラ・デシマクアルタ(クラブ史上14回目のCL制覇)を成し遂げたチームの主力の3人が、戦線離脱を余儀なくされた。
「直接アラバと話したわけではないが、メディカルスタッフの見立てでは、前十字をやっているとのことだった。非常に残念だ。また一人、負傷でピッチを離れる選手が出てしまった」
「数ヶ月で、3人、前十字靭帯の負傷をした。私としても、こういう経験はない。我々がすべきは、耐え続けること。これまでやってきたように、だ。問題があっても、このチームは耐えてきた。周囲の人たちが予想していた以上のパフォーマンスをしてきた。これから、何ができるかは見てみよう」
これは当時のアンチェロッティ監督のコメントだ。
結論から言えば、マドリーはシーズン中に補強を行わなかった。そして、リーガとチャンピオンズリーグを制してドブレーテ(2冠)を達成した。
ただ、今季は少々、状況が異なる。アラバの復帰の目処は立っておらず、ミリトンが再び長期離脱を強いられた。本来であれば代役を務めるはずのチュアメニやバスケスまでアウトになったという状態だ。
またマドリーは、今夏、ナチョ・フェルナンデスが退団した。数多のタイトル獲得に貢献したマドリーのカンテラーノは、契約満了に伴いサウジアラビアのアル・カーディーシャに移籍。元主将の抜けた穴は、意外に大きかった。
■補強の可能性
マドリーは、現在、守備陣の補強に複数選手をリストアップしている。アイメリック・ラポルト、カステロ・ルケバ、ヨナタン・ターといった選手が候補に挙げられている。
ラポルトはアトレティック・クルブ、マンチェスター・シティ、アル・ナスルでプレーしてきた。いまもなお、スペイン代表に定着しており、クオリティの高い左利きのCBだ。だが1500万ユーロ(約24億円)から2000万ユーロ(約32億円)が見込まれる移籍金、800万ユーロ(約13億円)という高い年俸がネックになっている。
ライプツィヒに所属しているルケバは、21歳と若く、近年のマドリーの補強方針に合致する選手だ。しかしながら2029年夏まで契約を残しており、その契約解除金は今夏に9000万ユーロ(約144億円)まで跳ね上がるといわれている。
ヨナタン・ターは、レヴァークーゼンでシャビ・アロンソ監督の下、レギュラーのCBとして活躍している。195cmの高身長を生かしたヘディングの強さ、スピードが武器だ。契約期間は2025年夏までとなっており、マドリーとしては交渉しやすい選手になる。
一方、先のオサスナ戦では、ラウール・アセンシオが出色のパフォーマンスを披露した。ジュード・ベリンガムの今季初ゴールをアシストして、守備でも対人の強さとカバーリング能力の高さを見せた。
カンテラーノに頼る、というのは一つの手段だ。だがマドリーはジョアン・マルティネス、ヤコバ・ラモンといったカンテラの選手まで負傷で離脱を強いられている。
「現時点で補強については考えていない。クリスマスまで、この戦力で戦わなければいけない」とはアンチェロッティ監督の弁だ。
マドリーは歴史的に冬の移籍市場において選手を”当てる”ことができていない。いや、マドリーに限らず、冬のマーケットというのは、難しいものだ。
だが、いまのマドリーは、補強をせざるを得ない状況に追い込まれているように見える。財政的に、余裕がないクラブではない。もう少し、時間はあるが、いずれにせよここでの判断は今季のタイトルの有無に大きくかかわってくるはずだ。