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なぜレアルは"エムバペ問題"を解決できずにいるのか?ヴィニシウスとの関係…指揮官の試行錯誤。

森田泰史スポーツライター
この夏にマドリーに移籍したエムバペ(写真:ロイター/アフロ)

本来の自分たちの姿を、取り戻さなければいけない。

今季のレアル・マドリーは、好不調の波に苦しんでいる。リーガエスパニョーラで2位。クラシコでは、バルセロナに0−4で敗れた。チャンピオンズリーグでは、2勝2敗で18位に位置している。

■エムバペ問題

耳目を集めているのはキリアン・エムバペだ。今夏、パリ・サンジェルマンからフリートランスファーで加入したフランス代表のアタッカーは、大きな期待を背負ってマドリードに到着した。だがマドリーで与えられる新たな役割、タスクにおいて、適応に苦しんでいる。

バルセロナとのクラシコでは、8回、エムバペはオフサイドに引っ掛けられた。ハンジ・フリック監督の戦術に嵌められ、その他の決定機逸のシーンも相まって、「戦犯扱い」された。

エムバペは今季のリーガで、すでに15回以上、オフサイドを取られている。これはクリスティアーノ・ロナウド(22回/2013−14シーズン/10試合消化時点)以来の数字だ。

なお、多くのオフサイドを記録したC・ロナウドだが、13−14シーズン、47試合に出場して51得点15アシストをマークしている。そして、そのシーズン、マドリーはチャンピオンズリーグとコパ・デル・レイを制覇。ドブレーテ(2冠)を達成した。

クラシコでは見せ場をつくれず
クラシコでは見せ場をつくれず写真:ロイター/アフロ

そう、オフサイドの回数自体は問題ではない。ストライカーというポジションが、そもそも、何度オフサイドを取られても、1ゴールを奪えば「勝ち」というポジションである。

エムバペの場合、課題は別にある。ひとつ、気になるのは、ヴィニシウス・ジュニオールとの関係だ。

■ヴィニシウスとの関係値とベリンガム

ヴィニシウスは、マドリーで成長曲線を描いている間、カリム・ベンゼマと連携してきた。ヴィニシウスの加入当初こそ、うまく化学反応を起こせなかった2人だが、パス交換の頻度は2021−22シーズン(6.2分毎に1回)、22−23シーズン(6.7分毎に1回)と安定していき、 攻撃を活性化させていった。

今季、エムバペとヴィニシウスのパス交換頻度(9分毎に1回/公式戦16試合消化時点)は高くない。エムバペの本当の意味での適応は、ヴィニシウスとの関係改善から、はじまるだろう。

守備のタスクが増えているベリンガム
守備のタスクが増えているベリンガム写真:ロイター/アフロ

懸念材料はエムバペの適応だけではない。ジュード・ベリンガムのパフォーマンスが、中々、上がらない。

昨年夏、移籍金1億300万ユーロ(約161億円)でマドリーに加入したベリンガムは、リーガ最初の10試合で10ゴール3アシストを記録した。

だが、今季のベリンガムは、公式戦11試合に出場してノーゴールだった。リーガ第13節のオサスナ戦で、ようやく初ゴールが生まれたが、アウェーのスタジアム、本拠地サンティアゴ・ベルナベウでなかなか快音を響かせられずにいる。

無論、昨季とは状況が異なる。昨季、カルロ・アンチェロッティ監督は【4−4−2】のシステムでトップ下にベリンガムを組み込み、自由を与えていた。「ベリンガム・システム」とまで称されたそれは、機能し、なおかつベリンガムのパフォーマンスを最大限、引き出した。

今季、ベリンガムには、より守備のタスクが求められるようになっている。エムバペとヴィニシウスが「前残り」するシチュエーションが増えるなか、その分、どうしてもベリンガムやフェデリコ・バルベルデが走らなければいけないのだ。

■模索する指揮官

アンチェロッティ監督は試行錯誤を続けている。セルタ戦では、【3−4−3】を採用して、オウレリアン・チュアメニを3バックの一角で起用した。クラシコでは、ベリンガムを「偽WG」で使ったが、バルセロナに大敗する結果に終わった。

マドリーを率いるアンチェロッティ監督
マドリーを率いるアンチェロッティ監督写真:ロイター/アフロ

「我々は(クラシコで敗れて)心を痛めている。難しい時間だ。だが、サポーターの応援に感謝したい。何もかもをゴミ箱に捨てるような真似をしてはいけない。シーズンは長い。顔を上げなければいけない。最後の敗戦から、我々は多くを学んだ。それと同じだ。学び、リアクションすることだ」

「敗戦は気になるものだ。しかし、すぐに立ち上がる必要がある。コンペティティブになり、戦い続けることだ。我々にはベルナベウで0−4でバルサに負けて、チャンピオンズリーグとラ・リーガのタイトルを獲った過去がある。あの時のように、戦う。昨シーズンと比べて、特別、悪くなったわけではない」

これはアンチェロッティ監督の言葉だ。

語弊を恐れずに言えば、マドリーは、カオスのなかで力を発揮する。能力の高い選手が集まる集団だからこそ、混沌たる状況は生きるピッチの中でポテンシャルを引き出す。

しかしながら、ベルナベウでのクラシコの大敗は無視できる類のものではない。放置された末の混沌ではなく、生み出されるべくして醸成された必然的な混沌をつくれなければ、いくらマドリーの選手たちと言えど、苦しみ続ける。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『WSK』『サッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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