「景気が良くなる」という目先の利益に騙される愚
フーテン老人世直し録(166)
葉月某日
新国立競技場の建設計画を巡る杜撰さが色々と明るみに出てきた。7日に開かれた第三者検証委員会に提出された資料によると、事業主体のJSC(日本スポーツ振興センター)が当初1300億円としていた工事費は、オリンピック招致が決まる前から設計業者に3000億円超と見積もられ、しかしそれでも招致活動は続けられた。
そしてIOC総会に乗り込んだ安倍総理は「どこの競技場とも似ていない真新しいスタジアム」と「確かな財政措置」を売りにオリンピック招致を勝ち取った。
ところが3000億円という数字が公表されると世論の批判が高まる。そこでJSCは1300億円に近い「見せかけ」の数字を作るようになる。今年の初めにゼネコンからも3000億円超と見積もられると、JSCはそれとは別に2100億円の数字を作って文科省に報告していた。
おそらく「見せかけ」の数字で誤魔化しておけばあとはどうにでもなると高をくくっていたのだろう。森元総理が言うように「日本国民は日露戦争勝利以来の喜びようだった」と考えているから、ぎりぎりになって「オリンピックのため」と言えばどんな数字でも国民は受け入れると思っていたのである。まさか白紙撤回など考えてもいなかった。
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