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「トランプ氏はまともだ」と総理周辺が言う愚かさ

田中良紹ジャーナリスト

フーテン老人世直し録(262)

霜月某日

10日に行われた安倍総理とトランプ次期米国大統領との電話会談で、安倍総理の周辺が「トランプ氏はまともだ」と言ったと報道されている。そんな報道が出てくることはこの国の政治がどうしようもなく幼稚なレベルにあることを物語っている。

まるで日本の政治中枢は選挙中のトランプ氏を「まともでない」と考えていたことを証明するかのようで、また日本の政治中枢はトランプ発言を「暴言」とみるアメリカのメディアを鵜呑みにするだけで、日本の国益を前提に独自の視点で大統領選挙を取材していなかったと告白しているようだ。

フーテンは選挙中のトランプ発言をひどいとは思ったが、しかし体制に挑もうとする者が米国民の不満がどこにあるかを探り当て、やり玉に挙げるポイントを掴んでいるとは思ったし、またメディアが非難する「暴言」には実はアメリカ人好みの「本音」が隠れているとも思っていた。

アメリカは民主主義とか人権を最優先にする社会だが、しかしその裏側では極めて差別主義的で日本以上に男尊女卑であることをフーテンは見てきた。ハリウッド映画とはまるで逆の世界がアメリカには存在する。だからこそアメリカ社会は建前を重視し本音を封じ込める必要があったのだと思う。

トランプは建前をかなぐり捨てて本音で勝負する選挙戦を行った。おそらくは自分が当選するとは思っていなかったからかもしれない。それでも民主・共和両党の既成政治に挑戦するためトランプは国民の不満を噴出させることだけに集中した。

大統領選挙で健闘すればアメリカ政治に一石を投じ、それはその後の自分のビジネスにも好影響を与える。そう計算していた可能性もある。ところが予想を超えて国民の支持を集め、トランプは大統領選挙に勝利してしまった。選挙に勝ってトランプは実は困っているのではないかとフーテンは思っている。

すべてはこれから考えなければならない。とりあえず4千人を超える官僚を交代させる人事を行わなければならないが、そのうち千人は議会の承認を得なければならない。とてもトランプ・ファミリーの手に負える仕事ではない。

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ジャーナリスト

1969年TBS入社。ドキュメンタリー・ディレクターや放送記者としてロッキード事件、田中角栄、日米摩擦などを取材。90年 米国の政治専門テレビC-SPANの配給権を取得。日本に米議会情報を紹介しながら国会の映像公開を提案。98年CS放送で「国会TV」を開局。07年退職し現在はブログ執筆と政治塾を主宰■オンライン「田中塾」の次回日時:11月24日(日)午後3時から4時半まで。パソコンかスマホでご覧いただけます。世界と日本の政治の動きを講義し、皆様からの質問を受け付けます。参加ご希望の方は https://bit.ly/2WUhRgg までお申し込みください。

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