コロナ禍の食材ロスをラーメンで解決? 今までにない独創的な製法とは
長引くコロナ禍によって飲食業界はダメージを受け続けているが、その中でも客足が落ちているのが居酒屋など夜営業を中心とした業態だ。半年もの間続いた「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」によって、時短営業や酒類販売中止を要請される中で、居酒屋業態は営業が事実上難しく休業していた店も少なくない。
居酒屋の営業が止まることにより食材の流通、消費も止まる。今、豊洲などの仲卸業者が抱える「過剰在庫」が問題になっている。従来のフードロスは規格外であったり仕入れ時や配送途中で傷がつき、買い手が付かず廃棄されてしまう食材が中心だった。しかしながら現在問題となっているのは、コロナ禍による消費の減少が原因となっている、言わば「新型フードロス」だ。
コロナ禍によって生まれた、行き場のない食材を無駄にしないためにどうすれば良いか。その答えの一つとして生まれたのが、神田に今年5月にオープンしたラーメン店『炭火焼濃厚中華そば 海富道(しーふーどう)』(東京都千代田区神田鍛冶町3-3-2 運営:株式会社MUGEN)だ。
食材を無駄にせず余すことなく使い切る
炉端焼居酒屋の『なかめのてっぺん』(中目黒他)などを展開するMUGENは、以前より食材ロスの問題と向き合っており、買い手がつかない魚を有効活用する「もったいないプロジェクト」を掲げて、2015年には居酒屋『築地もったいないプロジェクト 魚治』(東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビルB1)も開業するなど、食材ロスの解決に寄与してきた。
この『海富道』は、昨年オープンしたラーメン店『炭火焼濃厚中華そば 倫道』(東京都港区新橋1-14-8 運営:株式会社越後屋)の姉妹店ならぬ「義兄弟店」にあたる。魚を頭から尾まで余すことなく使い切る、倫道の「炭火焼濃厚中華そば」が食材ロスの解決策として適していると感じたことから、旧知の間柄であったこともありノウハウの提供を頼み込み、今年5月に開業となった。
「どんな魚も心を込めて 炭火で焼いて無駄なくすする」。『倫道』『海富道』の「炭火焼濃厚中華そば」は、魚の頭から尾までを炭火で焼いたものをペーストにして、焼きあご出汁と合わせる独創的な製法のスープが特徴。この製法によって頭や尾など食べられない部分も全て食べ切ることが出来る。『海富道』では店名の通り魚介系素材に特化したラーメンを提供。現在は「鯖」「鰯」「鮭」「海老」「烏賊」の5種類がメニューに並ぶ。
金目鯛と白子を使った濃厚ラーメンが誕生
そんな『海富道』で10月6日より販売がスタートしている新作が「金目鯛と白子」(単品1,050円/定食1,200円)だ。豊洲最大手の仲卸業者である『山治』より相談を受けて生まれたメニュー。金目鯛の頭は居酒屋で煮込みとして使われるが、多くの店の休業に伴い冷凍保存され過剰在庫になっていた。白子も冬場が旬ということで「時期外れ」としてニーズが低く、他の色素が付着してしまい見栄えが悪いという理由で行き場を探していた。
炭火でじっくり焼いた金目鯛と白子をペーストにし、焼きあご(トビウオ)出汁とブレンドしたスープが白眉。金目鯛の香ばしい炭焼きの風味と、白子のとろりとした口あたりと濃厚なコクが一緒に楽しめる濃厚な一杯。具材は別皿で供されるので、スープをストレートに味わうことが出来る。定食にすればご飯もついてくるので、色々な楽しみ方が出来るだろう。
「SDGs(持続可能な開発目標)」が叫ばれて久しい。令和2年4月の農林水産省発表の資料によれば、一年間での食品ロスは612万トンにものぼる。捨てられてしまう食材やコロナ禍で行き場を失った食材をどう活用するかは喫緊の課題だ。ラーメンでそのような食材を有効活用して美味しく使い切る。『海富道』のラーメンをきっかけに一人一人の食材ロスへの意識が高まることを期待したい。
※写真は筆者によるものです(出典のあるものを除く)。