日本列島上空で壮絶な季節の争い 地震被害地は暴風・雪崩・土砂災害の恐れ
日本海と本州南岸には低気圧があって、ボコボコとした形状の発達した積乱雲が見られます。この二つの低気圧は今夜(15日夜)から明日にかけて、急速に発達しながら北日本へ進む見込みで、特に南岸にある低気圧は中心気圧が994hPa(今朝)から948hPa(あす朝)へと、なんと24時間で48hPaも気圧が下がる予想です。俗に急激に気圧が下がる低気圧を「爆弾低気圧」と言いますが、あっという間に悪天候になりそうです。
関東から東海にかけてはすでに雨が降り始めていますが、大きな地震のあった東北の太平洋側は夕方から夜にかけて激しい雨と、最大瞬間風速30メートル~35メートルの暴風になる見込みです。
また、最大震度6強を観測した宮城県や福島県、最大震度5強を観測した栃木県では、地盤が緩んでいる可能性が高く、通常より少ない雨量でも土砂災害が発生する危険があります。
熱帯低気圧の要素を持った低気圧
今回の低気圧は見た目は二つありますが、発達度合いからもわかるように南岸の低気圧が主力です。さらにこの低気圧の起源をみると、沖縄の南東海上からやって来たもので、湿った空気を大量に持ちこんでいます。こうした南方海上からやってくる低気圧は、普通の温帯低気圧と区分するために近年では「亜熱帯低気圧」とも呼ばれるようになってきました。
季節の境目・ジェット気流
季節の境目を表す目安として、日本の上空を流れるジェット気流(偏西風の強いところ)があります。一つは冬の寒さをもたらす「寒帯ジェット」、そしてもう一つがこの時期、春の訪れの目安となる「亜熱帯ジェット」です。今回の南岸低気圧は、この亜熱帯ジェットの流れに沿って、南から湿った空気を大量に持ち込んでいます。その意味で今回の大雨は、実は季節が変わった証拠とも言えるのです。
そのため、今回は東北地方の山間部でも雪ではなく雨になる見込みで、積雪地域は雪が全体的に流れ落ちる「全層雪崩(ぜんそうなだれ)」に注意が必要です。全層雪崩は大規模になりやすく、また雪が融けることによって「融雪洪水(ゆうせつこうずい)」の心配もあります。注意事項ばかりで恐縮ですが、今年は特に積雪も多くなっているので、雪国はいつもの年以上に警戒が必要です。
季節を進める暴風雨のあとは真冬の寒さ
そしてもう一つ、季節はまだ2月ですからこのまま季節が一気に進むというわけにはいきません。大雨や暴風など極端な天気のあとには、必ず揺り戻しがあります。
今回も、この低気圧がオホーツク海上に達した後、寒冷渦となって居座り、今度は日本に真冬の寒気をもたらす予想です(上図参照)。今シーズンは12月から5回ほど強い寒波がやってきていますが、今回予想される寒波は、初めて「顕著な大雪に関する情報」が発表された1月7日~9日に次ぐ強さと予想されます。このとき、北陸自動車道などで一時1200台以上の車が立ち往生し、自衛隊が派遣される事態となったことは記憶に新しいでしょう。また、仙台の最低気温は-7.6度(1月9日)、福島で-7.4度(1月10日)と今季一番の冷え込みとなりました。
その時に比べると、日本海の海水温が低いですから、多少割り引いて考えたとしても(この理由については過去記事参照)、日本海側は大雪に、また東北など太平洋側でも雪が降り、厳しい寒さとなる見込みです。そして、積雪地域は今回の雨で解けたところに改めて雪が積もることになるため、さらに雪崩の危険性が高まります。また、今は大潮の時期でもあるため、北日本は16日未明から16日朝にかけて高潮やそれに伴う浸水にも警戒が必要です。
ここ数日の4月並の暖かさから一転、今週は暴風雨や暴風雪、雪崩、そして地震後遺症の土砂災害。このような急激な天候の変化は、日本の上空で壮絶な季節の争いが起こっている証でもあります。
※寒気の予想を追記しました。
参考資料
気象庁発表 「暴風雪と高波及び大雪に関する全般気象情報 」
気象庁発表 令和 3 年 2 月 13 日 23 時 08 分頃の福島県沖の地震に伴う