台風10号 進路を決める「指向流」 カギを握るのは上空9500メートルの風
台風10号は強い勢力で北上を続けていて、今週にも西日本から東日本に接近、または上陸する可能性が高まっています。ただ、進路予想は更新のたびに東に寄ったり西に寄ったり、最新の予想では九州地方も予報円に入ってきました。一体、いつどこに接近、上陸するのか?これを判断するのに重要なのが「指向流」です。
台風の進路を決める流れ「指向流」
台風がどのように進むかは、台風を流す上空の風によって大きく影響されます。コンピュータが未熟だった時代には、台風の進路予測が非常に困難でした。そのため、台風を動かす風として「指向流」という概念が生まれました。
では、指向流とはなんでしょう。
例えば積乱雲の大きな塊があるとします。積乱雲は絶えず出来ては消え、出来ては消えという再生を繰り返しますが、その再生する仕組み(システム)は、大気の大きな場によって決まります。そしてその大きな場を動かすのが指向流なのです。
したがって台風にとっての指向流は、台風を動かす上空の風の向きを指します。この場合、台風の規模や強さに応じて台風がどのように流されるかが異なりますが、一般的には台風の規模が大きいほど、上空、高いところの風によって流されます。
台風の規模と指向流の関係
先人の経験則も含めて言うと、台風の中心気圧が980hPa〜970hPa(最大風速が40メートル)だと、指向流の影響を受ける高度は約500hPa(高度約5500メートル)です。しかし、風速が60メートルに達するような強力な台風では、指向流の高度は約300hPa(高度約9500メートル)に達します。
台風が大きく強いほど、その重心は上の方にあり、台風を流す指向流の高度も上の方に持ち上がります。したがってこれを今回の台風10号に当てはめると、300hPa(上空約9500メートル)の風がカギを握っていると考えられます。
寒冷渦と偏西風
そこで上空9500メートルの風をみると、台風のすぐ西側には左周りの大きな渦(寒冷渦)、そして日本付近では南西から北東方向に大きな流れ(偏西風)があります。この風を指向流と考えると、今回の10号は、寒冷渦の流れに沿って西へ大きくカーブしたあと、偏西風に乗って北東方向に向かう公算が高いと言えるでしょう。
つまり寒冷渦の引っ張る力が大きければより西へ行き(小さければそれほど西へ向かわない)、その後、偏西風(気圧の谷)が降りてくるタイミング次第で上陸地点や接近地点、その時期が変わってくるということです。
こうした基本的な考えを踏まえて台風10号の進路図を見ると、おおまかには指向流に沿って動くものの、日本近海では指向流そのものにもまだブレがあるため、依然として予報円が大きく(更新ごとにずれが生じる)、いまは上陸地点や接近地点を断定できる段階ではありません。
強い勢力で接近か できる限りの警戒を
とはいえ例え進路が多少東西にずれても、指向流の向きから日本付近は台風によって大きな影響を受ける可能性が高いと言えます。
現時点では27日(火)~29日(木)ごろに西日本から東日本に接近、上陸、その後30日(金)にかけて日本列島を縦断北上していくものとみられます。また日本に近づくにつれて中心気圧が950hPa、中心付近の最大風速は60m/sと非常に強い勢力まで発達すると予想されています。
そうなると台風の中心から右側(危険半円)にあたる地域は暴風雨に見舞われるのはもちろんのこと、左側(可航半円)の地域も吹き返しの風が吹き荒れるとみられ、さらに沿岸部では記録的な高潮が発生する恐れもあります。
いずれにしても、今週半ばは広範囲で警戒を要するでしょう。常に最新の情報を確認し、台風接近の前にできる限りの備えをしていただきたいと思います。
追記
台風の進路予想図に一部間違いがあったため、25日午後3時発表のものにすべて差し替えました。