12月としては2017年以来の大雪か 日本海寒帯気団収束帯とメソ低気圧が重なるパターン
日本の上空には今季一番の寒気が流れ込んできています。この寒気は先週金曜日(11日)にロシアのオイミャコンで氷点下55.1度を記録したものが、形を変えてやってきているものです。
16日(水)にかけて西日本や東海地方でも初雪となり、名古屋などでも積雪になる恐れがでてきました。(新幹線にも影響が出るかもしれません)
JPCZとメソ低気圧
この原因は、JPCZと呼ばれる「日本海寒帯気団収束帯(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)」です。ここ数年、大雪になると話題に上る「JPCZ」というワード。その仕組みの鍵は、中国と北朝鮮の国境付近にある長白山脈にあります。
長白山脈は2500メートル以上の山々からなる山脈で、その最高峰は白頭山(標高2744メートル)、一年のうち8カ月は雪に覆われ北朝鮮の聖地としても知られています。この高い山脈によって、大陸から日本海へと吹いてくる冷たい季節風(寒気)が分断され、その風下で再び風がぶつかって収束帯(前線のようなもの)ができるわけです。この収束帯は、日本海から水蒸気の補給を受け、帯状の雪雲の列となって本州へ流れ込んできますが、この際、寒気の勢いが強いと収束帯上に小さな渦ができ、大雪をもたらすことになるのです。この渦をメソ擾乱(じょうらん)とかメソ低気圧といいます。
「メソ」とは、「中間」という意味で、メソポタミアのメソと同じ意味です。蛇足ながら「メソポタミア文明」というのは、チグリス川とユーフラテス川の「中間の文明」という意味です。
気象学でいうところのメソは、規模にすると2キロ~2000キロで、そのなかでも大雪をもたらす現象は20キロ~200キロ程度の、比較的小さなスケールの渦で起こります。やっかいなのは、これらの渦の一つ一つが天気図には現れないことです。
このように、最新の研究ではJPCZができたら単純に大雪が降るのではなく、JPCZに関連して局地的にメソ低気圧が現れ、豪雪パターンが変化することもわかってきました。降るところでは大雪になるが、降らないところでは降らない、つまり、夏の線状降水帯やゲリラ豪雨のようなことが日本海側の大雪でも起こっていることがわかってきたのです。
上空の寒気と海水温
JPCZそのものの現象は昔から分かっていましたが、名前がついたのは1988年頃のことで、メディアで扱われるようになったのはここ数年です。
記憶に新しいのは、平成30年(2018)の通称「北陸豪雪」でしょう。この年も、前年の秋からラニーニャが発生し、12月から日本海側で周期的に大雪となりました。この時の上空5500メートルの気温は石川県輪島で-30度くらい、今回は16日(水)に-35度と予想されています。(平年は-27度)
もう一つ重要なのは、今年の日本海は例年に比べて海水温が高いことです。特に11月の記録的な暖かさの影響もあって、日本海の海水温は平年より2~3度高く、15度前後もあります。水温が高いと海から蒸発する水分が増えて降雪量も多くなり、さらに大気の不安定度も増すのです。
今回、特に注意が必要な地域は西日本から北日本の日本海側の山間部ですが、北陸や東北、山陰などは警報級の大雪になる恐れがあります。また、この寒波は週末にはいったん緩みますが、来週には再び流れ込んでくる見込みです。最新の一カ月予報でもクリスマスごろにかけて、全国的に低温となり日本海側は降雪量が多くなると予想されています。いよいよ本格的な冬への備えが必要です。
参考
九州大学研究チーム 川村隆一教授他「日本海の冬季準定常収束帯における長白山脈と朝鮮半島の動的役割」
荒木健太郎氏他「北陸地方に暴風雪や大雪をもたらすメソスケール擾乱について」
森さやか氏 ニュース記事「シベリアでマイナス55.1度 来週は日本も大寒波」
※トップ写真に「オイミャコン」を入れました