この気圧配置でまさかの豪雨 沖縄・奄美で異例の大雨—高い海水温と気候変動も影響かー
11月8〜10日、沖縄県や奄美地方では記録的な雨が降り、気象庁はこれらの地域に相次いで「記録的短時間大雨情報」「顕著な大雨に関する情報(線状降水帯発生情報)」を発表しました。24時間雨量は与論島で594ミリ(観測史上一位・国内の11月の記録としても二位)、沖縄県国頭郡東村でも486.5ミリ(観測史上一位)の大雨が観測され、9日には鹿児島県与論町に「大雨特別警報」が発表されるなど、11月としては異例の豪雨となりました。
豪雨時の天気図
通常、沖縄や奄美の11月は台風シーズンが終わり、比較的穏やかな天候が続きます。当時の地上天気図(タイトル画像参照)をみても、本州付近は大陸から進んできた大きな高気圧に覆われ、一見すると穏やかな天気。南西諸島は高気圧の縁にあたり雨雲がわきやすいことが伺えますが、低気圧や前線は解析されておらず、とても大雨になるような気圧配置に見えません。
しかし、上空の様子をみると今年は太平洋高気圧の勢力がいまだに強く、南西諸島周辺では梅雨時を思わせるような湿った空気が充満している状況でした。そこへ東シナ海に形成された気圧の谷に向かって暖かく湿った空気が収束し、大量の水蒸気が供給されて、短時間での記録的な豪雨となったのです。
隠れた要因「東シナ海の海水温」
前述したように、今回の豪雨の直接の原因は気圧配置によるところが大きいのですが、それにしてもこれほどの大雨は予想されていませんでした。8日早朝に発表された予想雨量は沖縄本島で24時間に120ミリ、1時間雨量は多いところで40ミリという値です。この雨量でも11月としては多いのですが、実際には予想の3倍以上にのぼる大雨になりました。その隠れた要因と考えられるのが東シナ海の海水温です。
今年の東シナ海は、真夏の時から水温が高く、それがこの季節になっても平年より2度ほど高い状態になっています。水温が高ければそれだけ水蒸気の蒸発量が多く、同じ気圧配置でも雨量が増すことになります。
気象庁によると、沖縄県内の11月の降水量は通常100ミリ前後(アメダス1地点あたり)とされますが、今年は9日~10日の2日間に18件もの記録的短時間大雨情報が発表され、場所によってはすでに平年の3倍以上の雨量が観測されています。
異常気象が常態化
今回の沖縄や奄美の豪雨は今後の防災においても重要です。なぜなら、もともと雨が多い沖縄で、この時期にさらに大雨の記録が更新されたからです。言ってみれば、記録の上限がカサ上げされているわけです。
気候変動による異常気象が増加する中、沖縄だけではなくその他の地域も「季節外れ」が常態化するかもしれません。気候変動によって従来の「季節」という概念が揺らぎつつあると言えるのでしょう。