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NHK・TBS・日テレはジャニーズ性加害問題をどう検証?テレ朝・フジはまだ逃げる? #専門家のまとめ

松谷創一郎ジャーナリスト
テレビ朝日(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 10月16日、ジャニーズ事務所が幕を閉じた。今後は社名変更をしたスマイルアップが被害者への補償会社となり、それとはべつに所属タレントの受け皿となる新会社が立ち上がる予定だ。しかし、旧ジャニーズが保有する多くの資産の行方など、どの程度ファイナンス面の問題が解決するかも不透明だ。

 一方、今回の問題で大きな注目を浴びているのはテレビ局だ。報道機関であると同時に、コンテンツ制作においてジャニーズ事務所と深い関係を築いてきた。抑制的だった過去の報道姿勢と、制作・編成の深い取引にどの程度関連があったのか──テレビ局の姿勢が強く問題視されている。

 それもあって、テレビ局各社は自社で検証を始めた。NHK、TBS、日本テレビがそうだ。それらはまだ完全なものではないが、今後のさらなる検証につながる内容だ。そこで、現在公開されている動画・記事をまとめた。

▼「この1年の間にも、ジュリー氏を通して圧力があった」「すぐに『タレントを引き上げるぞ』と言う」(TBS『報道特集』)

▼競合タレントはキャスティングしないことが不文律。タレントの不祥事報道でも忖度あり(日本テレビ『news every.』)

▼「TBSのジャニーズの特別扱いはひどかった」公共性よりも利益追求を重視してしまったテレビ局(BS-TBS『報道1930』)

▼ジャニーズ顧問の元NHK理事は取材拒否。検証に対して専門家は「突っ込み不足」と指摘(NHK『クローズアップ現代』)

 以上、検証番組を最近のものから並べた。だが、それらの内容はまだ十分とは言えない。たとえばNHKでは『紅白歌合戦』の人選や、BSの『ザ少年倶楽部』についての検証はされていない。『クローズアップ現代』放送後には20年前の局内での性加害報道もあり、さらなる検証は必須だ。

 一方、フジテレビとテレビ朝日はいまも検証を行っていない。今後することになると見られるが、どれほど踏み込むかはわからない。なぜなら、両者ともジャニーズと深い関係を築き上げてきたからだ。

【2023年10月19日追記:フジテレビは10月2日に『イット!』で簡単な検証を行っているが、制作・編成サイドへの調査は行われておらずかなり簡易なものに留まっている】

 とくに、報道に力を入れてきたもののいまも頑なにこの問題を正面から扱おうとしないテレビ朝日には、今後もかなりの注視が必要とされる。その姿勢は明らかに不自然だからだ。

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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