坂上忍氏が日本人禁止ラーメン店に述べた「ラーメン食べればフライドポテト持ち込みOK」が正しくない理由
日本人の入店を禁止
石垣島のラーメン店が、2019年7月1日から9月末までの3ヶ月間、日本人の入店を禁止しているということで話題となっています。
その理由は日本人客のマナーの悪さで、具体的には次の通りです。
ラーメン店の店主いわく、1人1杯注文のルールを守らなかったり、飲食物を持ち込んだり、お断りにしている乳幼児を連れて入店しようとしたりする客がいるということです。
テレビでも取り上げている
日本人だけ入店禁止という、あまり聞いたことがないルールを設けたということもあって、SNSで議論が巻き起こりました。
フジテレビの「バイキング」でも、この件を取り上げています。
マナーが悪い客の中には、フライドポテトを持ち込んで食べた人もいたようです。
MCを務める坂上忍氏が、ラーメンを注文して食べているのであれば、フライドポテトを持ち込んで食べてもよいのではないかと述べたところ、ここでも賛否両論がありました。
ラーメン店への持ち込み
私は、飲食店がルールをつくることに賛成しているので、ラーメン店がルールを定めたことは何も問題がないと思っています。
ルールを曖昧にするのではなく、しっかりと定めて、納得した客にだけ利用してもらった方が、無用なトラブルや不毛なやりとりが少なくなり、透明性があって健全だからです。
ただ、これまでも私は、飲食店やフードコートへの持ち込みはよくないことであると述べてきただけに、持ち込みを許容する坂上氏の発言にはあまり賛同できません。
関連記事
いくら注文してラーメンを食べたからといって、フライドポテトを持ち込んで食べるのはよくないことです。
その理由を述べていきましょう。
場所にもコストがかかっている
ラーメン店は、ファインダイニングやファミリーレストランに比べれば少ない面積でも運営できる業態です。イスがあまり座り心地のよくないスツールであったり、テーブル幅が狭かったりすることも多いでしょう。しかし、客がその空間を専有していることに変わりはありません。
イスやテーブルにもお金がかかっていることはもちろん、空調を行ったり、電灯を点けたりしているので、光熱費が発生しています。
客が席に着いているだけで、その空間にいるだけで、ラーメン店にコストがかかってくるのです。
滞在時間が長くなる
店内で注文して食べるのであれば、売上になるので空間にコストがかかっていても仕方ないでしょう。
しかし、持ち込んだ食べ物を食べたとしても、飲食店の売上には全くつながりません。それどころか、持ち込んだものを食べている時間は、無駄なコストがかかるだけです。
余計なものを食べているせいで滞在時間も長くなり、当然のことながら、回転率も低下してしまいます。
ラーメン店の立場からすれば、フライドポテトなど食べずに、早く退店してほしいと思うのが当然のことではないでしょうか。
注文機会を損失する
フライドポテトを持ち込んだ客は、もしもフライドポテトを食べていなければ、まだお腹が満たされておらず、他に何か食べたいと思ったかもしれません。
もしかして、ラーメンをもう1杯注文したかもしれませんし、別の料理をオーダーしたかもしれないでしょう。
そこまで空腹ではなかったとしても、麺の替え玉を追加したり、ラーメンに具材をトッピングしたりして、ボリュームをアップさせていたかもしれません。
食べ物ではなく、ドリンクを飲んでいた可能性もあります。
しかし、フライドポテトを持ち込んだことによって、胃袋も気持ちも満足してしまい、他のものを注文したかもしれない機会を奪ってしまったのです。
注文機会を損なうという点においては、持ち込みは明らかに飲食店に被害を与えているといってよいでしょう。
食べ合わせ
注文する機会を奪ったというが、そもそもラーメン店にフライドポテトがなかったから、他で買って来たフライドポテトを持ち込んだと、反論する人もいるかもしれません。
確かに、食べたいものがないから、他で買って食べたいという気持ちは分かります。しかし、先程述べたように、空間にはコストがかかっているのです。
また、ラーメン店の店主はラーメンがよりおいしくなるようにと日々精進しています。当然のことながら、自分のラーメン店で提供しているラーメンに相応しいメニューを取り揃えているはずです。
したがって、もしもフライドポテトが用意されていないのであれば、設備やオペレーションの観点だけではなく、フライドポテトがラーメンに合わないという理由も大いに挙げられます。
せっかくラーメン店に入ったのであれば、そこのラーメンと相性がよい、その店のサイドメニューを食べた方が、よりよい食体験が得られるのではないでしょうか。
持ち込みが可能になる場合
持ち込みが飲食店で認められていないかといえば、そうでもありません。
カジュアルな飲食店であっても、ファインダイニングであっても、持ち込みを容認している飲食店は意外にあります。
許容している場合には、定額で好きなだけお酒を持ち込めたり、ワイン1本毎に持ち込み料金が発生したりすることがほとんどです。
主にお酒が対象となっており、食べ物が容認されていることはほとんどありません。というのも、飲食店としては、せっかく訪れたのであれば、是非とも料理を食べてもらいたいと考えているからです。
それはファインダイニングのような業態に限らず、カジュアルな業態であるラーメン店であっても同じことでしょう。
また、ラーメンはコース料理ではなく、食べるのにそれほど時間もかからないので、お酒とのマリアージュはあまり重要視されていません。
そういうこともあって、ラーメン店では、食べ物はもちろん、飲み物も、持ち込めるようになることはほとんどないでしょう。
食中毒
食中毒のことを考えても、持ち込みは好ましくありません。飲食店は店で食べ飲みされるものに対して衛生上の責任を負います。
持ち込んだ食べ物によって食中毒が起きた場合、保健所がしっかりと調査して、何が原因であるかを特定します。
しかし、営業停止となり、食中毒のニュースが世間を賑わした後に、持ち込んだものを食べたことによって食中毒が起きたことが分かったとしても、信頼を取り戻して、以前と同じ経営状態に戻すことは、まずできないでしょう。
というのも、飲食店の衛生管理に問題なかったと判明したとしても、メディアがそのことを改めて報道しなかったり、最初のネガティブなニュースを打ち消したりすることが難しいからです。
ラーメン店のフライドポテトの持ち込みであっても、同様であることはいうまでもありません。持ち込みを許容することは、飲食店にとってリスクが大きいのです。
正しい食のあり方
食は人々にとって身近なものなので、テレビでもよく取り上げられます。番組で様々な食の事象を取り上げて、多くの視聴者に関心をもってもらうのはよいことです。
ただ、テレビは影響力がとても強いだけに、番組内での取り上げ方によく危惧を覚えます。識者が誰も参加しておらず、ただ単に面白ければよいというだけで番組が構成されていれば、視聴者に誤った認識が植え付けられてしまうからです。
今回の件も、飲食店への持ち込みという、飲食業界に関わる者であれば、当たり前のように問題であると認識していることに対して、やや無責任なつくりであったように感じます。
面白おかしくしたり、過激にしたりして、視聴率が稼げればそれだけでよいということではないでしょう。正しい食のあり方もしっかりと伝えていくのが、影響力のあるテレビにとって必要な矜持であると思います。