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並大抵ではないマンション共用施設を魅力的にする苦労。「ゲストルーム」には課題も……

櫻井幸雄住宅評論家
マンションの「ゲストルーム」には、大型浴槽を設置するケースが多いが……筆者撮影

 2023年11月、ユニークなマンション共用施設が報道陣に公開された。三菱地所レジデンスと三菱倉庫が事業主となった「ザ・パークハウス 板橋大山大楠ノ杜」(すでに、全戸完売)で、建物が竣工したのに合わせ、中庭や共用施設が公開されたものだ。

 その特徴は、旧敷地から既存樹木を引き継ぎ、蔵や井戸、母屋などを共用施設として活かしていること。既存樹木は高さ10メートルを超えるクスノキ2本など。クスノキはマンションが建設される前の屋敷にあったものをそのまま遺している。

中庭に蔵やクスノキを遺した「ザ・パークハウス板橋大山大楠ノ杜」。筆者撮影
中庭に蔵やクスノキを遺した「ザ・パークハウス板橋大山大楠ノ杜」。筆者撮影

 さらに、旧・屋敷内にあった蔵はマルチルームとして活用。母屋はコモンハウスとしてフリーに出入りできるコミュニケーションの場として活用される。

 なんとも魅力的な共用施設となっているのだが、この共用施設を実現させる苦労は並大抵ではなかったと推測される。たとえば、中庭の大木をそのまま遺すため、新たに建設するマンションの建物は配置を制限された。パズルのように建物を配置するため、建築コストもかさんだはずだ。

 また、蔵や母屋といった古い建物を遺すため、建築基準法や消防法でクリアしなければならなかった問題がいくつも発生したことが推測される。しかし、樹木や建物の一部を遺すことが開発条件となっていたため、むずかしいプロジェクトへの挑戦が行われた。

 1000平米を超える広さの中庭には小川も再現されているのだが、この水の流れを循環させるのも並大抵の苦労ではない。安全のため、水深を浅くし、なおかつ流れがよどまないようにしなければならないから造園に苦労する。水が循環し続けるようにするには水の浄化設備が必要になるし、水道水よりも塩素濃度を高くしないと、水苔が発生してしまう……魅力的で凝った中庭や共用施設をつくり、維持してゆくことは、一般に考えられるほど簡単なことではないと思い知らされた。

 加えて、今回の報道公開では、マンション共用施設として人気がある「ゲストルーム」の課題も浮き彫りにされた。

 これからのマンション「ゲストルーム」は、大きく様変わりする可能性が高いのだ。

 「ゲストルーム」の課題とは。そして、これからの形とはどんなものなのかを解説したい。

「ゲストルーム」で徴収されるリネン代が……

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住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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