バルセロナを襲う「若さ」という麻薬。シャビの思考に、「プラス」と「マイナス」の両面。
21年ぶりのチャンピオンズリーグ敗退が、決定した。
バルセロナが厳しい状況に追い込まれている。CLではグループステージ最終節でバイエルン・ミュンヘンに完敗して3位でヨーロッパリーグに回ることになった。リーガエスパニョーラにおいては首位レアル・マドリーと勝ち点差が18ポイントまで開き、8位に位置している。
バイエルンとの”決戦”で、活躍したのはトーマス・ミュラーだった。リオネル・メッシではなくロベルト・レヴァンドフスキのバロンドール受賞を願っていたドイツ人のアタッカーは、メッシの古巣であるバルセロナに対して牙を剥いた。ミュラーの先制点がゴールライン・テクノロジーで認められると、バルセロナの選手たちの戦意は削ぎ落とされてしまった。
ミュラーは32歳だ。一方、バルセロナのガビ(17歳)、ニコ・ゴンサレス(19歳)、ロナウド・アラウホ(22歳)といった選手に比べれば、大ベテランである。だが勝敗を決したのはそのベテランで、ヤングプレーヤーではなかった。
■麻薬と中毒性
若さは、ある種の麻薬だ。
バルセロナのようなクラブでは、特にそうだ。「ラ・マシア」「プレーモデル」「クライフイズム」そのようなワードが、日々、メディアを通じて消費される。大衆は心のどこかでそれを求めてもいる。
バルトメウ政権において、キケ・セティエンの就任の際、ソーシャルメディア上で「クライフィスタ(クライフ信者)」のハッシュタグがスペインでトレンド入りした。
耳障りのいい言葉は、危険だ。受け入れられたら、希望は湧き起こる。しかしながら、その後、実が伴わなければ、期待から失望への落差は激しいものになる。
いま、我々は立ち止まって考えるべきかも知れない。マシアを。プレーモデルを。クライフイズムを。何より、若さの、本当の意味を、である。
■シャビのアプローチと可変システム
シャビのアプローチが、間違っているとは思わない。【4−3−3】と【3−4−3】を可変で使う形は、理にかなっている。バルセロナの選手たちは、確実に走るようになってきた。
ただボールを回すのではなく、必要に応じて、組織的にプレスを嵌める。ウィングはワイドに開いて、1対1で仕掛ける。インサイドハーフは中間ポジションに位置取り、ハーフターンで前を向く。時折、”全盛期”のバルセロナを彷彿とさせるプレーがある。
シャビの理想は、システムが試合中にスムーズに可変で動くことだ。両サイドバックの選手が「つるべの動き」で上下する。SBが上がった側のサイドでは数的優位を作れるようになる。その逆サイドでは守備を固めるというのが可能になる。
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