アベノミクス4本目の矢で地獄への道を歩む日本
フーテン老人世直し録(507)
卯月某日
フーテンは4月20日の深夜「世界では新型コロナウイルス終息後を見据えた動きが始まっているのに、日本ではいまだ終息の見通しが立たず、ひたすら国民に我慢を強いる方策ばかりが示される。それもこれも東京五輪が災いしているのではないか」とブログを書いた(「新型コロナウイルス後の世界で東京五輪のハンデを負う日本」)。
すると翌日、IOC(国際五輪委員会)のホームページに「安倍晋三首相は2020年に関する現行の契約条件に沿って、日本が引き続きコストを負担することに同意した。IOCの負担が数億ドル(数百億円)になることは確実だ」とする記事が掲載された。
東京五輪延期によって1兆3千5百億円と言われる大会経費に加え、3千億円を超える追加費用が発生すると見られているが、IOCはその大部分を日本側が負担することに安倍総理が同意したとの認識を示したのである。
日本側は、3月24日に行われたIOCのバッハ会長と安倍総理の電話会談で、経費の問題は議題にならなかったとしてこれを真っ向から否定、IOCもホームページから安倍総理が同意したという部分を削除し、「IOCと日本側は延期によって引き起こされる影響を共同で評価し、議論し続ける」と差し替えた。
フーテンがブログを書く4日前の16日にはIOCと東京五輪組織委による電話会議が行われ、終了後の記者会見でIOCのコーツ委員長が「安倍総理は非常に賢い。中止ではなく延期の提案をされた時には、必ずや日本の経済にプラスになると確信して提案されたんだろう」と安倍総理をひたすら持ち上げた。フーテンは「ほめ殺し」を感じた。
そして気になったのは3月31日にロイターが伝えた東京五輪を巡る疑惑の記事だ。東京五輪が中止ではなく延期と決まった1週間後に、ロイターは東京五輪を巡る金銭疑惑を世界に発信したのである。疑惑の人物として名指しされたのは元電通専務で東京五輪組織委理事の高橋治之氏と森喜朗元総理だ。
安倍総理がスーパーマリオに扮するチンドン屋まがいのことまでやって勝ち取った2020年の東京五輪だが、その選定を巡ってはフランス捜査当局が今でも買収疑惑を捜査している。今回のロイターの記事はまず東京五輪招致委から高橋氏の口座に約9億円の資金が振り込まれていたというものだ。
高橋氏はロイターの取材に対し、世界陸連の元会長でIOC委員も務めていたラミン・ディアク氏らにロビー活動を行い、手土産などを渡したが何ら不正なことはしていない、また招致委員会から支払われた金の使途を明らかにする義務はないと語った。
しかし2016年に開かれたリオ五輪では、ラミン・ディアク氏に2万ドルの買収資金を渡して招致を成功させたブラジル五輪委(BOC)のカルロス・ヌズマン会長が2017年に逮捕されている。
そして日本の五輪招致委もシンガポールにあるディアク氏の息子の口座に2億2300万円の送金を行ったことがフランス捜査当局に突き止められている。その金額もやり方もヌズマン会長の買収の時と同じである。
リオ五輪の場合は五輪閉幕後にヌズマン会長逮捕となったが、東京五輪の場合は開幕前から捜査が始まり、竹田恒和JOC会長が事情聴取を受けて辞任する騒ぎになった。しかし辞任しても捜査が終わった訳ではないことをロイターの記事は示している。
その記事には森喜朗元総理が理事長を務める財団法人「嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター」にも1億4500万円が招致委員会から支払われたと書かれた。しかしその財団が招致活動を行った記録はないという。
ロイターの取材に対し、日本政府は「JOC及び東京都が説明すべき」としてノーコメント、JOCは「招致委員会とは別組織である」とし、東京都は「招致活動は招致委員会の役割で承知していない」と答えた。そしてIOCは「自分たちは被害者で、何らかの賠償を求める可能性もある」としている。
つまりこの記事がこの時期に出たことについてフーテンは、東京五輪の延期を求めたのは安倍総理であり、追加費用は日本側が負担するのが当然で、もしそれに不満を言うようなら、買収疑惑に火をつければ賠償を要求することだってできるとIOCがブラフをかけているように思う。
ロイターが疑惑の中心とした高橋治之氏も森喜朗氏も安倍総理と極めて近い関係にある。森喜朗氏は言わずもがなだが、高橋治之氏については多少説明を要する。高橋氏の父親である高橋義治氏は旺文社の赤尾好夫氏らと共に日本教育テレビ(現在のテレビ朝日)を創立して取締役を務めた。息子が二人いて長男が治之氏、次男は治則氏である。
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