乳幼児であっても絶対に飲食店でオーダーしなければならないのか?
未就学児の注文
飲食店に子連れで訪れる際には、何か注文しますか。注文するとすれば、何を注文するでしょう。
以下の書き出しで始まる記事を拝読しました。
子連れの主婦が飲食店へ訪れた時に、未就学児であっても必ず1品注文しなければならないというルールを目にし、以下のように不満を述べました。
こういった飲食店のルールが法的に問題あるかどうかについて、弁護士は飲食店と客の契約となるので「一定の条件をつけることは基本的には自由」であると説明しています。
そして、一品オーダーや子供の入店禁止など、飲食店を利用する際の条件を決めるのは、飲食店の自由であるとして、以下のように結んでいます。
飲食店は営業的な観点から、好きにルールを決めればよいということです。
子連れ客
私はこれまでに、飲食店へ訪れる子連れ客に関して以下の記事を書いてきました。
飲食店における子連れ問題について、正解はありません。働き方やライフスタイル、そして、社会における子供のあり方や扱われ方が、時代や場所によって異なるからです。
ただ、正解はないというものの、客と飲食店が互いのことをよく知る必要はあるでしょう。そうしなければ、互いに歩み寄ることが難しいからです。
飲食店がルールを決めることは法的に何の問題もありません。
ただ、今回の件に関しては、いくつか留意する点があると考えています。
他の飲食店ではどうか
飲食店で1人1品オーダーとなっているのは普通のことでしょうか。
カフェやファミリーレストラン、カジュアルダイニングからファインダイニングまで、1人1品オーダーが課せられていることは珍しいことではありません。
カフェであれば最低でも1杯のコーヒーや紅茶を飲まなければならなかったり、大衆居酒屋であれば何かしらの酒肴を選ばなければならなかったり、ファインダイニングではコースかアラカルトを注文しなければならなかったり、イノベーティブレストランではおまかせコースしか選択肢がなかったりします。
バーであればカクテルやワイン、アルコールが苦手であったり飲めなかったりしてもソフトドリンクをオーダーする必要があるでしょう。フードコートであったとしても、そこのスペースに入居し、共益費を支払っているテナントから何かを注文しなければ、イスやテーブルを使用する権利はありません。
以上のことを鑑みれば、今回の件でも、1人1品オーダーしなければならないのは、特におかしいことではないと考えられます。
乳児と幼児の区別
1人1品オーダーすること自体は問題ないとして、話を進めましょう。
未就学児とは、以下の通り、小学校入学以前の子供のことです。
つまり、0歳から6歳までの乳幼児を指しています。
では、乳児と幼児はそれぞれどういった違いがあるのでしょうか。
乳児とは満1歳未満くらいのいわゆる乳飲み子のことであり、幼児とは乳飲みを卒業した子供のことであるとされています。
件の飲食店では、未就学児でも1人1品オーダーが必須とされているので、幼児はもちろん、乳児も1品オーダーしなければならないことを意味します。
幼児は乳飲みを卒業した子供なので問題ありませんが、乳飲み子である乳児は一体何を注文し、食べたり飲んだりすればよいというのでしょうか。
母乳もしくは粉ミルクしか摂取できない乳児が、飲食店で何かを注文することは現実的ではありません。
未就学児でも1人1品オーダー必須と定めるのではなく、幼児以上は1人1品オーダー必須と定めるべきではないでしょうか。
子供用メニュー
幼児以上は1人1品オーダー必須と決めたとしても、まだ憂慮するべき課題が残っています。
件の場合では判別できませんが、1人1品というのは、料理のことなのかドリンクのことなのか、もしくは、料理でもドリンクでもよいのかによって、事情が異なるからです。
もしも、1人1品が料理のことであるとすれば、かなりハードルは高くなります。件の主婦が述べた通り、「子どもメニューはありません。うちの子は2人とも少食です。大部分を残しても、注文しなければいけないのでしょうか」という不満も理解できるでしょう。
いくら書き入れ時のランチタイムとはいえ、幼児に対して料理をオーダー必須とするのであれば、せめて子供用メニューを用意しておかなければなりません。大人用メニューしか用意されていないのは無理があるからです。
大人と同じボリュームで食べ残さずに完食できる幼児など、そうそういません。味覚の観点からしても、大人であれば楽しめる酸味や苦味を、幼児が味わうのは厳しいものがあるでしょう。
かなり高級なファインダイニングであれば高校生、ほとんどのファインダイニングでは中学生以上を対象として入店を許しており、大人と同じコースのオーダーを要求します。
つまり、最低でも中学生以上であれば大人と同等のボリュームを食し、豊かな味覚で食事を楽しめるということです。したがって、未就学児に料理のオーダーを課すのであれば、子供用メニューを提供することは義務であるといってよいでしょう。
食品ロスの問題が叫ばれて久しいですが、いくら売上を増やすためとはいえ、明らかに食べ残しが予想されるのに、幼児に大人用メニューを注文させるのは、食に携わる飲食店として相応しい考えであるとは思えません。
ドリンクも対象かどうか
では、オペレーションの効率や負担を鑑みた結果、子供用メニューを提供できない場合にはどうすればよいでしょうか。
その場合には、料理を必須にするのではなく、料理もしくはドリンクを必須にすればよいでしょう。
幼児であれば、親がオーダーした料理を少しだけシェアすれば、十分に足りることが多いです。料理をシェアすれば、適切な分量となり、料金も抑えられるので客としては喜ばしいことでしょう。
まともな作り手であれば、食べ残されるために料理を作るのを残念に思うものです。
幼児であれば、ミルクやお茶、ジュースであれば問題なく飲むことができるので、ドリンクを選択できれば客は助かります。ドリンクは、倒してもこぼれない子供用の小さなプラスチック製容器で提供されていればベストでしょう。
幼児にも1人1品オーダーを必須とし、かつ、子供用メニューが用意されていないのであれば、料理だけではなくドリンクも選択可能にするべきです。
子連れ客の対応をしっかりと考える
これまで、飲食店の未就学児も1人1品オーダー必須というルールについて考察し、いくつか問題点を説明してきました。
もしも、未就学児にも1人1品オーダー必須というルールを課しながら、これらの問題を解決できなければ、飲食店はどうすればよいでしょうか。
子連れを禁止にするルールを設ければよいです。
子連れ入店を許可しているにも関わらず、半端な1人1品オーダー必須というルールを課しているからこそ、子連れ客に不満が募り、飲食店の評価が下がり、場合によっては他の客にも迷惑をかけてしまうのではないでしょうか。
できるだけ多くの消費者をターゲットにしたいからといって、本来は子連れ客に優しいコンセプトでなかったり、子連れ客を対応する余裕がなかったりするのに、子連れ客に寛容であるふりをするのはいけません。
子連れ客にしっかり対応するのかしないのか、対応できるのかできないのかを、飲食店は自らしっかりと考えて、ルールを定めるべきであると考えています。