夢はタイガースガールズ!「ダンスパーティ」で輝いた未来のタイガースガールズたち
■第1回タイガースアカデミー・ダンススクール発表会「ダンスパーティ」
キラキラしていた。その踊りが、その衣装が、そしてその笑顔が―。すべてが輝いていた。
2月3日、東リいたみホールで行われた第1回タイガースアカデミー・ダンススクールの舞台発表会「ダンスパーティ」でのことだ。出演者たちはみな、手足をいっぱいに伸ばして、ステージ狭しとばかりに躍動した。
阪神タイガースのアカデミーが開校したのが昨年4月。ベースボールスクールとダンススクールがあり、そのダンススクール・1期生の集大成となる発表会だった。西宮校、芦屋校、川西校、宝塚校、潮芦屋校、北神戸校のそれぞれキッズ、リトル、ジュニア、それにアドバンスコースの総勢243人が出演した。このダンススクールの講師はタイガースガールズの現役とOGが務めている。
ステージはまず、タイガースガールズのキレキレのダンスで幕開けした。続いて矢野燿大監督からのメッセージ映像が流れたときには、どよめきが起こった。矢野監督はスクリーンを通して「思いきって踊って」と激励してくれた。
前半はオリジナルのPOMダンスだ。チアの象徴ともいえるポンポンを持ち、全員がおそろいの衣装にリボンをつけて踊る。曲や振り付けはそれぞれの教室によって違う。
トラッキー&ラッキーも登場し、タイガースガールズとともにパフォーマンスを披露したあと、後半はオリジナルダンスの発表となった。
それぞれの教室で曲、振り付け、そして衣装も趣向を凝らし、観客の目を楽しませた。ウエスタン調あり、ふわふわのスカートあり、チャイナ風あり、またスパンコールでキラキラしたコスチュームありと、曲に合わせた衣装はどれもステキだった。
なにより踊っている本人たちがもっとも楽しそうだった。カラフルなライトを浴び、客席からの手拍子や掛け声に自然とテンションが上がり、ノリノリでこれまでの練習の成果を発揮していた。
出演者たちに話を聞くと、「練習がすごく楽しい」「難しい踊りとか、わからないときは仲間に教えてもらう。スクールの前とか、居残りしたり」「前にもダンスを習ってたけど、ここはチームでやるのが楽しい」「タイガースガールズに教わるのが嬉しい。お姉さんたちみたいに綺麗に踊れるようになりたいし、将来はタイガースガールズに入りたい」「タイガースガールズは憧れ。小さいときから甲子園に見にいってたし、自分も球場で踊りたい」など、次々と言葉が飛び出してくる。
それぞれがタイガースアカデミー生の誇りを持ち、楽しくレッスンしてきたのが窺える。その集大成が形になり、充実感でいっぱいのようだった。
■それぞれのカラーが一つの花束になる
タイガースガールズ、そしてタイガースアカデミー・ダンススクールのスペシャルアドバイザーである小島智子氏は、幼いころからタイガースファンだったという。「ずっとタイガースにチアがいたらいいなと思っていたから、タイガースガールズができてファンとしてこれほどの喜びはない。そしてこうしてスクールもできた。幸せを噛みしめている」と白い歯をこぼす。
「子どもたちが踊るだけではない。来てくれた人、企画してくれた人、みんなが笑顔になれるようダンスを通して共有したい、そんな思いを込めて」と、発表会のタイトルを「ダンスパーティ」としたという。
そして、「チアというのは応援する役。普段は脇役。でも今日は主役になって、小さな『できた』をたくさん積み重ねてほしいし、保護者のみなさんは小さな『できた』をたくさん褒めてあげてほしい。今日は1年間、頑張ってきた成果だから」と語りかけた。
テレビドラマなどの題材になったり、海外で活躍する日本人チアのニュースが届いたりして、チアダンスは認知度を上げ、急速に普及している。小島氏は「見るより、やると難しいんです。初めてダンスをやるという子もたくさんいて、発表会といっても前例のない中、子どもたちは本当に頑張ってくれた」と目を細める。
ここまで夏の京セラドームと甲子園球場でのファン感謝デーでお披露目の機会があった。その経験からくる自信が身についてきたことを、小島氏は讃える。「表情も変わってきたし、姿勢も伸びてきた。この小さな成長を見るのが楽しみだった」。
そして、「このまま続けてタイガースガールズになってほしい。そうなふうに繋がっていけばいいな」との願望を口にする。
自身は大学時代にチアに出会い、そこから多くのものを学んだ。今、母になって感じることがあるという。「ここでは家庭でできないことが学べるんです。大きな声を出すこと、返事をしっかりすること、チームメイトと協力すること、できないことを自分で考え、みんなで考えられること。チアならではのチームスポーツであるし、チアスピリット(相手を応援する気持ち)を学べる。兄弟も減っている社会環境の中で、一つになるということを家庭で学びにくいけれど、ここではそれができる」。
そして「チアをやっている子は、常に笑顔が輝いている。その場をパッと明るくできる」と誇らしげに胸を張る。「それぞれのカラーが集まって一つの花束になる。それが団体競技のいいところ。前に出る子、引っ込み思案な子、いろんな性格の子がいるけど、それぞれに居場所がある。こうしてみんな一緒にタイガースを応援する仲間になれるのは、すごくいいなと思う」。
この日もそれぞれのスクールの“花束”が集まり、さらに“大きな花束”になった。それを見つめる小島氏の眼差しは、子どもたちへの愛にあふれていた。
■島田若枝子ディレクターが退任
このステージでは、3名の講師の卒業も発表された。北神戸校のMaya先生と潮芦屋校のSarina先生、そしてアドバンスコースを受け持ってきた島田若枝子先生だ。
島田氏はタイガースガールズの創設時からのディレクターで、ダンススクールではアドバンスコース12人の指導をしてきた。「ダンス経験のある子も未経験の子もいる。2018年にアカデミーが始まって、その集大成をこのホールで迎えられて感慨深い」と、しみじみ語る。
2014年に立ち上がったタイガースガールズだが、島田ディレクターが常に言っていたのは「女の子たちに『タイガースガールズになりたい』と憧れてもらえるようになっていきたい」ということ。
「そういう子たちがこんなにも集まってくれて、現役とOGが直接教えることができる。笑顔とか、応援すること、仲間を思いやる気持ち…そんなタイガースガールズで習ったことを伝えられる。こうして形になったことが本当に嬉しい」と目尻を下げる。
そして「舞台を用意してくださった方、協力してくださった方に感謝という気持ちが一番。いつもは『応援』がメインで、京セラでも甲子園でもまずは『応援』だったけど、今日は生徒たちが主役。彼女たちにスポットライトが当たって、笑顔がとても輝いていた」と、島田ディレクター自身もキラキラの笑顔を見せた。
タイガースガールズでの5年間を「立ち上がったときは手さぐりだった。まず、(タイガースファンに)受け入れていただけるかというところから始まった。徐々に受け入れていただいて、ともに応援したいと言っていただけるようになった」と振り返る。
大学時代からの旧知の仲である小島氏も「もえD(島田ディレクターの愛称)は問題が出てきては解決して、道のないところに道を作る力を持っている。タイガースガールズはもえDの力なくしてはできなかった」と感謝の念が尽きないという。
島田ディレクターは「一緒にタイガースを作っていく一員になれればいいなと思いながらやってきた。つらいときも、たいへんなこともあって、山あり谷ありだったけど、楽しかった。大好きな野球、大好きなタイガースに関われて、一生の中でも特別な5年間だった。今日、こういう形で引き継ぐことができて、嬉しい」と感慨深げにうなずいた。
新ディレクターのもと、タイガースガールズがさらに飛躍することを願っていた。
■憧れのタイガースガールズへの第一歩
タイガースアカデミーのダンススクールは2019年度、新たに3校が開校し10校となる。さらに中学生のユースコースが2校で新設される。現在、各校で生徒を募集中だ。
発表会に出演した生徒たちが「体験会に行ったらわかりやすく教えてくれた」と話していたが、今年も無料体験会が開催される。(詳細⇒タイガースアカデミー ダンススクール)
これがきっと、憧れのタイガースガールズへの第一歩になるだろう。
(撮影はすべて筆者)
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