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家庭の野菜の食品ロスをなくし食費を安くする10ヶ条

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(ペイレスイメージズ/アフロ)

兵庫県神戸市が、2016年冬と2017年夏、市民モニター約700世帯を対象に食品ロス実態調査を行なった。その結果、家庭で手付かずのまま捨てられる食品の約半分が、キュウリやレタス、キャベツなどの生鮮野菜だった。理由の多くは「品質の劣化」だという。

農林水産省でも、これまで定期的に食品ロスに関する統計調査を行なっており、平成26年度に実施された調査で同様の結果(家庭で発生する食品ロスのうち、野菜が約半分を占める)が得られている。

農林水産省の調査結果によれば、単身世帯、2人世帯、3人以上世帯のすべての世帯員構成別で、最もロスが多かったのが「野菜類」。調査対象全体の平均で47.7%。次いで「果実類」。次に「調理加工食品」となっている。

世帯員構成別、主な食品別の食品ロス量割合(世帯食一人1日当たり)(平成26年度 農林水産省 統計調査)
世帯員構成別、主な食品別の食品ロス量割合(世帯食一人1日当たり)(平成26年度 農林水産省 統計調査)

家庭の野菜の食品ロスを減らすにはどうしたらいいのだろう。10ヶ条にまとめてみた。

1、買い過ぎない

今回の調査結果は神戸新聞(2018年4月21日付)でも報じられており、「神戸市は今後、有識者会議で具体的に検討する。(中略)生鮮野菜の保存や使い切りの工夫を情報提供することなどが考えられるという」としている。

岡山県の一般社団法人パステルでは水菜やネギなどの余剰野菜が食堂の献立に上手に活用されていた(筆者撮影)
岡山県の一般社団法人パステルでは水菜やネギなどの余剰野菜が食堂の献立に上手に活用されていた(筆者撮影)

一方、神戸市が発表した食品ロス実態調査 結果概要を読んでみると、「保存の工夫だけでは生鮮野菜のロスは減らない」とある。保存期間が伸びても、最終的に使い切れなければ廃棄されてしまう可能性を指摘している。

野菜の廃棄が多い、というと、具体的な対策の一つとして、「保存方法」(の啓発)が挙げられる。もちろん、これも有効な手段だ。だが、そもそも買い過ぎているから使いきれない可能性もあると思う。

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の12番目のゴール「つくる責任 つかう責任」(国連広報センター)
SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の12番目のゴール「つくる責任 つかう責任」(国連広報センター)

2015年9月に国連サミットで採択された、2030年までに世界で達成するSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の17の目標のうち、12番目にあるのが「つくる責任 つかう責任」だ。これまでの大量生産・大量消費から、「適切な量をつくり、つかう」ことが求められている。

買い過ぎないために有効なのが、簡単で構わないので、献立メモと買い物メモを作って買い物に行くことだ。神戸市の調査結果でも、在庫チェックをしないで家にあるものを買ってしまうことや、賞味期限の長いものを買う行動が、廃棄回数の増加に繋がっている。買い物メモを作ると、自然に在庫チェックするようになる。毎週やっていると習慣になり、何がどれだけどこにあるか、頭に入ってきて、「あれ(食品)を使わなくちゃ」と、意識に留まりやすくなる。

2、”入れたら、出す”

「入れたら、出す」が基本。多くの人は、買ってきて、冷蔵庫に買ってきたそのままの状態で入れて終わってしまう。入れっぱなし、ではなく、入れたものは出す(使っていく)。冷蔵庫は、いつまででも日持ちする魔法の箱ではない。「一時的に保管する」場所だ。冷蔵庫に詰め過ぎないで、循環させていく。

ミニトマトは洗って保存容器に(筆者撮影)
ミニトマトは洗って保存容器に(筆者撮影)

今回の神戸新聞の記事をYahoo!ニュースが公式ツイッターで取り上げており、そこに『冷蔵庫の食品ロスを減らすには「入れたら、出す」が基本だという。』と書かれていた。記事中に「入れたら、出す」とは書かれていなかったが、もしかして、筆者の書いた記事がYahoo!編集部の方に浸透しているのかも・・・と思ったら嬉しくなった。

Yahoo!ニュース公式ツイッターで発信された神戸市の調査結果(筆者撮影:Yahoo!ニュース公式ツイッターより)
Yahoo!ニュース公式ツイッターで発信された神戸市の調査結果(筆者撮影:Yahoo!ニュース公式ツイッターより)

参考記事:

防災食「入れたら出す」仕組みで無駄なく活用

7年目の3.11 防災備蓄食品を「食べずに捨てる」から「おいしく食べる」で食品ロスを減らす取り組み

「入れたら、出す」は、筆者が食品企業勤務の時、日本トイレ研究所の加藤篤さんらと共著を出したり、シンポジウムを開いたりして、出てきた言葉だ。多くの人が、「食べる(入れる)」ことには高い関心を示すが、「排泄する(出す)」ことには関心を向けない。今でこそ、トイレに注目が集まってきたが、当時は今ほどではなく、「入れたら出すの循環が大切」ということを啓発してきた。

仕事も同じで、インプット(入れる)したら、アウトプットする(出す)。

3、買い方は ”つつましく”

神戸市の調査結果で、単身高齢者世帯は食べ残しが多く、主な理由が「作りすぎ・量が多い」(53%)だった。筆者が、一般消費者向けに食品ロスの講座を行なった時、質疑応答で出たのが「キャベツは丸ごと買った方が安いので買うけど、使いきれないで腐らせる」「牛乳は商品棚の後ろから新しい日付のものを取る、そうしないとダメになる」という意見だった。両方とも、70代の一人暮らしの方だった。「キャベツは、半分とか、4分の1を買ったらどうですか?」と答えたが、「丸ごとの方が安い」とのことだった。

神戸市の調査では「生鮮野菜の廃棄が48.7%で多かった」という結果が出ており、夏も冬も多かったのが、きゅうり、レタス、キャベツ、もやし、ミニトマト、にんじん、だいこん、たまねぎ、とのこと。

きゅうりやにんじん、たまねぎなどは複数入ったまとめ売りが多いし、レタスやキャベツ、だいこんは、丸ごと売られている。一方、1本ごとに売られたり、キャベツの半個売り、4分の1個売り、だいこんの4分の1本売りなどもある。1個売りや半個売りは、割高かも知れないが、使いきれずに捨てるくらいなら、少なく買った方が、結果的にはいい。要る分だけを買うようにする。

レモンは以前、絞って使っていたが、皮をむいて丸ごとスムージーに使うようにした。農薬を使っていないレモンの皮は、イタリアのレモンリキュール「リモンチェッロ」を作って保存することができる(筆者撮影)
レモンは以前、絞って使っていたが、皮をむいて丸ごとスムージーに使うようにした。農薬を使っていないレモンの皮は、イタリアのレモンリキュール「リモンチェッロ」を作って保存することができる(筆者撮影)

4、カット野菜を上手に活用

筆者の身内が畑で作った野菜を送ってくれることがある。できるだけ無駄のないよう使っていくが、どうしても手が伸びづらいのが「かぼちゃ」だ。切るのが面倒だし、いったん切ってしまったら、全部使うか、少なくとも下処理しないといけない・・と思うと手が伸びない。硬いかぼちゃも、電子レンジにかけると包丁で切りやすくなる・・・と聞いてからは、そのようにしている。でも、かぼちゃは丸ごと買おうとは思わない。スーパーでは、カットしたかぼちゃがあるので、そちらを選んでしまう。

豚肉の生姜焼きに付け合わせするキャベツの千切りも、時間があればキャベツそのものを買ってくるが、時間の余裕がなかったり、すぐ後に出張や旅行の予定があるときには、市販のキャベツの千切りを買ってきて使い切る。

カット野菜は、自分や家族の予定を見ながら、臨機応変に上手に使えば、無駄を出さなくなる。

カット野菜を保存容器に移して使い切っていくと便利(筆者撮影)
カット野菜を保存容器に移して使い切っていくと便利(筆者撮影)

5、日持ちの短いものから順番に

冷蔵庫の野菜室の中でも、日持ちの長いもの、短いものがあるので、短いものから先に使う。トマトなど、熟したものが値下げして売られていたりするので、そういうのは先に使う。

長ネギは、先に傷みやすい緑の部分を使い、白い部分は野菜保存用袋へ入れておく(筆者撮影)
長ネギは、先に傷みやすい緑の部分を使い、白い部分は野菜保存用袋へ入れておく(筆者撮影)

1つの野菜の中でも、部位によって傷みやすい部分とそうでない部分がある。たとえば長ネギだと、緑の部分が先にシナっとなってきて傷みやすい。緑の部分を先に使う。セロリの葉っぱは刻んで、スープやスムージーに入れたりする。

セロリの葉っぱ(手前)は放っておくとすぐ黄色くなり、結局捨ててしまうことになりがち。刻んで袋に入れ、スムージーに活用して使い切る(筆者撮影)
セロリの葉っぱ(手前)は放っておくとすぐ黄色くなり、結局捨ててしまうことになりがち。刻んで袋に入れ、スムージーに活用して使い切る(筆者撮影)

神戸市は、公式サイトで、ちょっとの手間でおいしさ長持ち♪ ~はじめませんか?お財布にも地球にも優しいこと!~として、買ってきた野菜をそのまま冷蔵庫に入れるのではなく、ちょっとひと手間かけることで長持ちすることを紹介している。たとえば、もやしなどは、電子レンジで加熱したり、ちょっとゆでたりしておくと、持ちやすい。「水に浸しておく」という方法もあるようだが、もやしに含まれるビタミンCは水に溶ける水溶性ビタミンなので、電子レンジにかけるか、さっとゆがいておくぐらいがよいと思う。

神戸市発行「おいしさ長持ち保存チラシ」

6、買ってきたら”ちょっとひと手間”

買ってきて、そのまま冷蔵庫に直行・・・というのが傷みやすい。保存容器に移し換えるといい。葉物野菜もすぐにシナっとなるが、湿らせた新聞紙でくるむ、野菜保存用の袋に入れ替える・・・などの、「ちょっとひと手間」だけで、日持ちが違う。

買ってきたほうれん草を野菜保存用袋(手前)に移し替えて、野菜室の中で立てて(植わっていた格好で)保存する(筆者撮影)
買ってきたほうれん草を野菜保存用袋(手前)に移し替えて、野菜室の中で立てて(植わっていた格好で)保存する(筆者撮影)

7、”おうちサルベージ” で変身

サニーレタスなどは葉っぱが多いので、余ってしまったりする。そんな時、別の料理に使って変身させる。ブロッコリーの芯は、捨てられやすいが、炒めると噛みごたえがあって美味しい。2018年3月5日に開催されたイベント、瀬戸内キッチンでは、ブロッコリーを刻んでコロッケにしていた。

2018年3月5日に開催された「瀬戸内キッチン」のコロッケ。スーパーで余ったブロッコリーが刻まれて入っている(筆者撮影)
2018年3月5日に開催された「瀬戸内キッチン」のコロッケ。スーパーで余ったブロッコリーが刻まれて入っている(筆者撮影)

筆者は、2012年3月に発売された「グリーンスムージーダイエット」(日東書院)という書籍の監修をして以来、ほぼ毎朝、野菜のスムージーを作っている。青菜や果物(バナナやキウイ)などをミキサーにかけるだけ。半端に余ったものやセロリの葉っぱなどはここに入れて使い切っている。

野菜のスムージー。レタスの葉っぱや余ったサニーレタスも入れた(筆者撮影)
野菜のスムージー。レタスの葉っぱや余ったサニーレタスも入れた(筆者撮影)

レシピにはない素材でも、冷蔵庫に余っている野菜があれば、使ってみる。いわば「おうちサルベージ」だ(サルベージとは救い出すという意味)。先日は、アクアパッツアを作るとき、冷蔵庫に余っていたオクラがあったので、使ってみた。

魚料理のアクアパッツア。トマトやパセリなどを使うが、冷蔵庫で余っていたオクラも入れてみた(筆者撮影)
魚料理のアクアパッツア。トマトやパセリなどを使うが、冷蔵庫で余っていたオクラも入れてみた(筆者撮影)

8、計って ”見える化”

神戸市の調査では、廃棄した食品を4週間、毎日記録してもらう「食品ロスダイアリー」を活用した。協力を申し出た約900世帯のうち、225世帯が途中で断念したそうだが、回答した約700世帯は、週を追うごとに廃棄量が減少したという。

体重を減らしたい場合も、「計る」ことが有効だ。スーパーのユニーは、ゴミを19種類に分別し、各店舗ごとに計測することで”見える化”し、ロスを減らして、第5回食品産業もったいない大賞の農林水産大臣賞を受賞した。

筆者も2017年6月から、家で発生した生ゴミを家庭用生ゴミ乾燥機にかけ、前後の重量を計っている。乾燥機は、島産業の「パリパリキューブ」。計測回数は147回になった。計ることを続けていると、ゴミを減らそうという意識が上がり、発生抑制につながる。神戸市の調査結果でも「食品ロスの量や食品ロスにつながりやすい行動を自覚することで、減らす工夫が取り入れられ、削減につながったと考えられる」としている。

島産業「パリパリキューブ」で乾燥させた生ゴミの例(筆者撮影)
島産業「パリパリキューブ」で乾燥させた生ゴミの例(筆者撮影)

参考記事:

生ごみ乾燥機を105回使った結果・・・全国ごみ排出量ランキングから自治体のごみ削減対策について考える

9、野菜を育て愛をはぐくむ

ベランダ菜園でも、野菜を育てていると、愛情がわいてくる。筆者は豆苗を育てている。買ってきた豆苗を炒め物に使い、根っこを捨てないで水やりすると、だんだん育ってくる。

買ってきた豆苗を使い、根っこを捨てずに水やりして育った豆苗(筆者撮影)
買ってきた豆苗を使い、根っこを捨てずに水やりして育った豆苗(筆者撮影)

環境省事業で、学校給食の残渣を減らす取り組みでも、小学生が自分たちで育てた野菜はしっかり食べるという事例がある。とはいえ、全員がそのような取り組みはできないだろう。その場合、生産者に会う、生産者のことを知る、という取り組みが、学校給食では効を奏している。これは家庭にも言えるのではないだろうか。

参考記事:

環境省平成29年度学校給食の実施に伴い発生する廃棄物3R促進モデル事業報告「食品ロスと子どもの教育」

10、乾物にする

これは難易度が高いかもしれない。天気のいい日に、外に干しておく・・・というものだ。

市販の乾燥パパイヤ(筆者撮影、香川県で購入)
市販の乾燥パパイヤ(筆者撮影、香川県で購入)

野菜がなぜ傷みやすいかというと、水分が一つの要因だ。乾かすことで、日持ちが長くなる。

乾物を作るザルで作った干し芋(筆者撮影)
乾物を作るザルで作った干し芋(筆者撮影)

以上。ここで改めて10ヶ条をまとめてみる。

1、買い過ぎない

2、”入れたら、出す”

3、買い方は”つつましく”

4、カット野菜を上手に活用

5、日持ちの短いものから順番に

6、買ってきたら ”ちょっとひと手間"

7、”おうちサルベージ”で変身

8、計って”見える化”

9、野菜を育て愛をはぐくむ

10、乾物にする

出典:井出留美「家庭の野菜の食品ロスを減らして食費を安くする10ヶ条」

10個すべてではなくても、どれか1つから始めてみることで、家庭の野菜の食品ロスが減り、結果的に、家計が安くなることにつながると思う。

参考記事:

高騰する野菜を安く買い、無駄なく使いきる買い方・使い方 5つのポイント

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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