屋外でのバッティングを再開した梅野隆太郎(阪神タイガース)、“日にち薬”で日々前進
■ファンに安心してもらいたい
「あーあ。昨日、(負傷後)初めてフリーバッティングしたのに、(メディアは)誰も来とらんかったもんなぁ」。
3月3日、鳴尾浜球場で阪神タイガースの梅野隆太郎選手は、冗談めかしてこうぼやいた。前日は珍しくメディアが一人も顔を出さなかったことを言っている。いや、何も自分が注目されたいわけではない。ファンのことを考えてのことなのだ。
春季キャンプ中に右肩の肉離れを発症し、そこから情報が出ていなかった。「うめちゃん、どうしてるのかな」「うめちゃん、元気かしら」「うめちゃんの回復具合はどうなんだろう」…SNSでも心配するファンの声が多く見られた。
ファンをたいせつにする梅野選手らしく、前進していることをメディアを通して伝え、ファンに安心してもらいたいという思いからの発言だった。
■屋外でのフリー打撃を再開
前日2日に屋外でのフリー打撃を再開し、2日連続で敢行した。これまで屋内でティー打撃は行っていたが、この土日はファーム本隊が教育リーグの遠征に出ており、残留野手がシェルドン・ノイジー選手、山田脩也選手、百﨑蒼生選手と人数が少ないことから、コーチに申し出たという。
「昨日やって、あんまりよくなかったらやめよかなと思ったけど、患部の状態も全然気になることできたんで。この2日は何も影響なくやれたかな。打つことに関してはもう全然普通にいける」。
久しぶりの屋外でのティー打撃、続いてのフリー打撃に笑顔がこぼれた。そして、今後も継続してやっていくと話した。
■患部の状態と気温も考慮して
バッティングのあとは「足を動かしたいから」と、上本博紀コーチのノックでゴロ捕球も行った。ゴロを捕って即、スローイングの体勢を作ったあと、振り返って斜め後ろ2mほどの近距離に構えるトレーナーに、軽く山なりのボールを投げるという動作を続けた。
だがこれは「近い距離はとくにそんなに(痛みや違和感を)感じることなかったんで」と、「スロー」の範疇に入るほどのものではないようだ。
先日は壁当てをする姿も見せており、「室内で軽めの確認程度のショートスローもやっている」と明かす。「投げるのは自分の様子を見ながら、ちょっとずつ上げていけたら。急に上がるかもしれないし、逆に停滞するかもわかんない」とスローイングも徐々に進捗しているようだ。
沖縄から帰り、関西はまだまだ寒い。この日も陽は差しているものの海風が冷たく、いい気候とはいえなかった。
「寒かったら、あんまり無理せんとこうと思って。そのへんも管理しながらやっていこかなと。この土日はスローはなしでやろうと思って、バッティングを入れてどうかなという確認をした」。
今後も患部の状態だけでなく、気温とも相談しながら投げる距離を伸ばし、強度を上げていく。
■日にち薬で完全に治す
日々の確認は非常に重要だ。
「やっぱり段階を経ないとね。こればっかりは『投げられるから投げます』じゃ、なかなか怖さもあるんで。やりたい願望は一日も早くやりたいし、逆に我慢することも今は大事。この土日はスローも我慢した。また月曜明けて、火曜どうかなっていう感じで。順調にはきている。とにかく前に進んでいる」。
決して後退はしないよう、「今は肩を治すことに集中」と自身の“体の声”に耳を傾け、安全に歩を進めている。
「シーズンに入ってチームに迷惑をかけることがないように。一日でも早く合流したいっていう気持ちだけはもって治療に励んでいる」。
一番の良薬は“日にち薬”だ。幸いにもまだ開幕前だ。じっくりと、そして完全に治してチームに戻る。
■おっさんになった?
メニューの最後は外野のポール間走だった。高校の卒業式を終えて帰阪したルーキーの山田選手、百﨑選手と一緒にレフトからライト、折り返してライトからレフトと繰り返し走った。
「やっぱ涼しく走ってる高校生の顔を見ると、俺もおっさんになったなぁと思って(笑)」。
30歳を越えたとはいえ、童顔の梅野選手の口から「おっさん」という言葉が出るのは違和感があったが、場を和ませようというサービス精神だったのだろう。
その走る姿は十分に若々しく、今季も溌溂プレーでチームを引っ張ってくれそうだ。梅野選手の復帰を、「うめちゃんファン」とともに待ちたい。
(写真の撮影はすべて筆者)
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