災害に自分と家族を守る!山岳ガイドが日頃の非日常体験が役に立つと言う訳を紹介します。
1995年1月17日の阪神淡路大震災から26年、寒い時期に起きた大災害では多くの方が亡くなりました。六甲山塊と大阪湾に挟まれた神戸の街には全国から救いの手が差し伸べられました。そして、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では広範囲にわたる被害拡大に多くの地域で救援が届きにくい辛い時間が多くありました。
便利な都会生活と車社会と快適な住環境は私たち人間の生きる力や耐える力を試す機会を奪っています。登山やキャンプはたかが遊びですが、されど遊びなのです。災害を乗り越える力を遊びを通じて楽しみながら身に付ける13のポイントをご紹介します。
1:命の根幹「頭部」を落下物から守る
高所からの落下物や岩や突起物での頭部への打撃と損傷を防ぐ以外にも、転倒時における衝撃もヘルメットは吸収します。登山用ヘルメットは軽さや通気性に富み、フィット感を高める調整機能が充実しています。
アルプス登山などのヘルメット着用推奨ルートでの死亡事故はヘルメット着用によって大幅に減少しています。市民一人一人が重大な怪我を避けることで、救急医療体制に負担をかけずに済むという点は大規模災害時では特に重要です。
頭部の怪我は脳への損傷以外にも出血の多さなど私達一般市民にとって、冷静で適切な対処が難しいものです。とにかく怪我の予防が大切です。
2:自由に移動するために不可欠な「足」を守る
災害時に、地表には様々なガレキが散乱しています。サンダルや薄い靴底で歩き回ることは危険です。丈夫なアッパー素材とぶ厚い靴底が鋭い岩角、ガレキや釘から足を守ります。
泥や汚物からの破傷風や様々な感染症を予防するためには登山靴が最適です。履き慣れるためにも月に一回程度は山歩きをしてみてはいかがでしょうか。
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3:作業に不可欠な「手」を守る
外傷や火傷を防ぐための手袋は欠かせません。最低でも軍手は用意しておきたいですが、皮革製も用意しておくと安心です。小さな切り傷や刺し傷でも作業能力は大きく低下します。
どの部位の怪我でも基本は受傷部の洗浄と圧迫止血と保護です。きれいな水を使って異物を除去します。小さな傷用のバンドエイドやきれいなガーゼとテープを入れたファーストエイドキットを用意しておきましょう。
4:命を繋ぐ「水」を確保する
生きていくために絶対に必要なのは「酸素」です。水中に没する危険以外では、閉じた空間での酸欠、火器使用で発生する一酸化炭素中毒です。二番目に重要なのが「水」です。山岳遭難においても水があることで長期間生き長らえる可能性は格段に上がります。
浄水器を使ってみました!
5:生きる源「食べ物」を確保する
最近はローリングストックという非常食の家庭内備蓄が提唱されています。実際、防災意識を高めるニュースがあるたびにスーパーマーケットに足を運ぶのですが、自宅にどのように保管管理するかを考えているうちに備蓄自体をするのを忘れてしまうということを繰り返してしまいます。
登山用のアルファ化米は時間はかかりますが、お湯でなくても水で食べることは可能です。そうめんやスパゲッティなどの乾麺も水を入れたジップロックに入れて十分水分を吸収させたのち、袋のまま鍋で茹で上げれば食べることができます。鍋のお湯はきれいなままなので、貴重なきれいな水を繰り返し活用できます。レトルトカレーなどは持ち運ぶには重たいですが、家庭で使うには便利です。
水道が止まる等きれいな水が手に入りにくい状況では、レトルト食品から直接スプーンで食べることで覚えておくと良いでしょう。食器にラップを被せるなどすることで水を節約できますので、数本のラップ類を備蓄しておくと安心です。
6:温かい食事をつくる「火」を確保しコントロールする
温かい食べ物は心をホッとさせてくれます。身体が温まり体中に糖質が巡り出すと、会話も弾んできます。
家庭にある鍋用のコンロ、予備のガスカートリッジも確認しておくと良いです。登山用を用意しておけば、自宅を離れなくてはいけない状況でも安心です。
7:寒さから身を守る「ウェア」のポイント
人の身体は平熱が一番良いのですが、雨に濡れたり、風に吹かれたり、低温に曝されたりすると低体温症の危険が高まります。寒さを防ぐためには乾いた服を身に付け、風が通しにくい生地と断熱性が高い素材のウェアを身に付けます。手首や頸部など脈を計ることができる部位を露出しないようにするのがポイントです。
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8:心を温める「プライベート空間」を確保する
登山で使う1~2人用テントは1~2キログラム程度で大変コンパクトです。設営も慣れれば5分程度でできます。透ける様な薄さの生地で防音性もありませんが、プライベートな空間が簡単にできます。
自家用車をお持ちの方が車内で生活したケースも多いですが、手足をしっかり伸ばせるキャンピングタイプでないとエコノミークラス症候群など健康を害してしまうリスクがあります。また、密閉空間での酸欠や一酸化炭素中毒の危険もあることを忘れないようにしましょう。
9:明日への気力「睡眠」を快適にする
健康には良質の睡眠が不可欠です。登山用は携帯性と軽さを優先するために細身のマミー型ですが、自宅の布団感覚に近い封筒型寝袋が寝やすいでしょう。
意外と見落とし勝ちなのがマットレスです。硬い床や凸凹、冷えを防ぐためにはマットレスが重要になります。手荒く扱っても性能劣化が無い独立気泡スポンジラバーのタイプが良いです。空気を吹き込んで溜めるエアー注入型は軽量コンパクトですが、穴が空いては機能が発揮できないので災害時用にはお薦めできません。
10:夜に備え「灯り」を確保する
夜間に行動することは多くありませんが、やむを得ず暗くなった登山道を歩くことを想定して、必ず持っていくのが、両手を自由にすることができるヘッドランプです。
ろうそく等の使用による火事発生を防ぐためにも、電池式のランタンを準備しておくと安心です。
11:水洗トイレの代替「携帯トイレ」を用意する
水洗トイレは水があってこその設備です。阪神淡路大震災の時、マンション倒壊は免れたものの、トイレが本来の機能が発揮できず、汚物による住環境が悪化した例は数多くあります。十分な水量が無いと排水パイプは詰まってしまうのです。
トイレを我慢するため、水分補給を減らして健康悪化してしまうケースもありました。
12:不安やデマに惑わされない「情報源」を確保する
ソーシャルメディアを使った情報発信や共有は当たり前となりましたが、災害の程度によってはインターネット環境そのものの復旧が遅れるケースも出てくる可能性があります。
私はAM/FM/TVを受信できる小型ラジオを用意しています。イヤホンを用意しておけば公共の場や避難所でも他の方に迷惑にならないようにできます。
13:情報と通信に必要な「電力」を確保する
最近のスマートフォンの電池消費は大きいものがあります。登山中のように近くに中継局が見つからないケースではより激しく電池が消耗します。災害時においては必要なタイミング以外では機内モードなどで電池節約を心掛ける必要があります。
予備バッテリーや蓄電池を充電しておくことで数日分は確保できるようにしておきましょう。私は太陽電池パネルを使った登山用の携帯型の充電機器を用意しています。
災害はいつ来るかわかりません。日頃からご近所ウォーキングを通じて自宅周りの避難経路を確認してみましょう。
山歩きで暑い・寒いなど様々な自然環境を経験したり、荷物を背負って歩く力を高めることは健康増進にも役立ちます。
コロナに負けない身体つくりも兼ねて、山歩きを2021年の目標にしてみてはいかがでしょうか。