彩りを味わう秋の野山へ 立ち止まれば見えてくる大切なこと
春が花を愛でる季節とすれば、秋は冬枯れを前に木々が躍動する季節です。
今年の色づきはどうでしたか。一言で片づけるなんて少し勿体ないのでゆっくり山を歩きながら葉っぱ達を見てみましょう。
皆さんは紅葉を見て何を感じましたか?
・今年の夏は雨が少なかったせいか、葉先が痛んでいるのが多いようですね。
・全く葉緑素が分解されず夏の頃のような木もありますね。
・寒さがまだ来ていないのにすっかり葉を落とした木もありますね。
・日当たりの良い沢沿いの方が色味がきれいなようですね。
赤や黄色の元は何なのでしょうか?同じ葉っぱなのにいろいろな色が出るのはなぜでしょうか。
日本列島は緯度、標高や場所、気象、植生など様々な条件で千差万別の秋が詰まっています。さあ、週末は玉手箱のような野山に出かけましょう。
きれいとは主観的なものです。そしてどこかと比較する必要はありません。
今歩いている目の前の木々を観察してみましょう。
葉っぱにはもともと黄色の色素であるカロチノイドと葉緑素クロロフィルが同居しています。黄葉は葉緑素が分解することで隠れていたカロチノイドの黄色が目立つわけです。赤い色素アントシアニンは葉っぱに蓄えられた糖質が寒さが切っ掛けで起きる化学反応で合成されるものです。
⇒ 光が当たらない部分はアントシアニン合成に十分な糖が無かったようです。
春の新緑から秋の紅葉まで低山なら7~8か月の間、アルプスの樹林帯なら4~5か月の間、せっせと葉っぱ工場は稼働して幹を太らせ花を咲かせ実を実らせ冬越しのエネルギー貯蓄をしています。この期間は十分な水、日照と適度な気温が大切です。
2023年の夏山!何か思い出しましたか。
登山を通じて自然を感じることは地球環境の変化に目を向ける切っ掛けとなります。素晴らしいと感じることが環境を守りたいという行動に繫がっていくのです。
⇒ 落葉樹はどうして秋になると葉っぱを落として裸んぼになるのでしょうか。
木々も身体を維持するのに必要なエネルギーを上回る生産物を光合成で生み出さなければ、成長もできず花も咲かせず実もつけられず子孫を残すことができません。
秋が近づくと日照時間が短くなり、気温も下がってくるので光合成の効率が低下してきます。生き物に共通することですが、生きている限り自らの身体を維持するためにエネルギーが必要です。収入と支出が赤字になる前に”光合成工場”を閉鎖する作業が”紅葉&落葉”なのです。
工場閉鎖のまえにクロロフィルを分解して役立つ成分を枝に向かって回収を始めます。と同時に葉っぱと枝の間にコルク質の離層をつくって枝から葉っぱへ水分や栄養が流れるのを遮断します。まるで現実社会の債権回収プロセスのようで切ないです。
⇒ なぜ、アントシアニンを合成して赤くなる必要があるのでしょうか。
赤くなった葉っぱのアントシアニンが太陽光線で生じる活性酸素を抑制するとか、紫外線障害を防いでいるとか、害虫が嫌う成分であるとか、諸説があるようです。
自然の営みにはたくさんの謎が隠されています。自分で見て触って、自分の頭で感じた素朴な疑問や好奇心を大切にしていきましょう。