冬、様々に変化した水の姿を探しに山へ行こう!
人の身体は年齢によって差はあるものの、その60~70%が水であるといわれています。みずみずしい年頃が懐かしい年代はもっと少ないですが、いずれにしても私たちは水と共に生きているわけです。
私たちの日本は水の国であり、日本書紀にも瑞穂の国と記述される稔り豊かな国です。田んぼが春までお休みの冬、四方の海からもたらされる水の旅姿を感じながら山歩きをしていきましょう。
最近の住宅では滅多に見ることができない窓霜ですが、厳しい寒さと寒暖差が日常の山小屋であれば出会えるチャンスは多いものです。
陽が当たるとともに消えていってしまう窓霜の原料はどこから来るのでしょうか。私たちの体から蒸発する水分でしょうか?キッチンの鍋からでしょうか?
目には見ることができない”気体である水蒸気”が旅の途中で姿を現す様々な姿を紹介していきます。
前日までの降った冷たい雨に湿った山稜、夜にはすっかり雲の無くなり明け方は放射冷却による冷え込んだ朝を迎えました。
次の写真は地面を覆った表面霜です。小さな広葉樹の落ち葉が敷き詰められたようでした。
地表に降ってくる雨も上空高い場所では小さな氷の粒です。地表の気温に比べ、1000m上空では凡そマイナス6度、5000m上空ではマイナス30度も低いのですから、空に浮かぶ雲の中は極寒の世界なのです。
小さな氷の粒がくっついていくと大きくなって重力の影響を受けて落ちていきますが、激しい上昇気流を伴う寒冷前線付近の大きな積乱雲の中では、重力の影響で下降する氷の粒は繰り返し積乱雲の中で上昇と下降を繰り返すうちに大きな粒に成長しています。
上昇気流と重力の戦いは決着しました!
大きくなった氷の粒は雹となり、小さな氷の集合体は霰となって地表まで到達します。
上空約1500m付近である850ヘクトパスカルの高層天気図での寒気が西日本付近まで南下するようになると、1000m代の山地でも霧氷が木々を飾ってくれます。
過冷却のごく小さな水滴が事物に衝突した瞬間に凍ってできる氷のことで霧氷、樹霜、粗氷、雨氷などに細かく分類されていますが、総じて”霧氷”といって差し支えないでしょう。
樹氷といえば、蔵王、八甲田山、森吉山といった雪のモンスターが有名です。元の姿かたちがわからなくなるほど、度重なる霧氷が付着したものです。
日本海上空でたっぷりと水分を蓄えた冷たい季節風はアオモリトドマツといった常緑針葉樹をぶ厚く覆っていきます。その姿には圧倒されます。ロープウェイで訪れることができる場所もあるので、防寒対策をしっかりして楽しんでみてください。
樹氷に覆われた樹木が寒そうだと思うかもしれませんが、実はぶ厚い雪が”断熱材”となって、樹木が冬越しできるのです。
ちょっとクイズです。
雪は何色?
白!なんて当たり前のことを!と思われますが、雪は水のひとつの姿です。科学的な正確さではなく、自然に親しむ感覚的なわかりやすさを重視した表現ですが、透明である”氷”を小さく小さく細かくして、たくさんの空気を含んだ姿が”雪”ですね。たくさんの小さな空気の粒と氷の粒でできた雪のマントはダウンジャケットみたいなものなのですね。
温暖化はどういう形で現れるのでしょうか。山で何が起きているか、事実に興味関心を持つことは大切です。
例えば
- 海水温度が上がって水蒸気供給量が増えたら?
- 山の積雪が少なくなったら植生はどう変化する?
いつもの山登りが違った山登りに感じるかもしれませんね。
風が無く、氷点下10度を下回った気象条件に出現するといわれるダイヤモンドダストとサンピラーです。冬でも営業する北アルプス西穂山荘の標高は2376mで、冬であれば十分ダイヤモンドダスト出現の気温条件です。
あなたはチャンスを狙って、山に上がってみますか?
湖面に張る氷も縞々を描きます。
お風呂は良くかき混ぜないと上ばかり熱く、底の方が冷たいことはよくあります。冷たい水の方が温かい水より重たいのに、氷は水より冷たくて軽くて表面に浮いています。身近な水もよくよく考えてみると不思議な物質ですね。
雪は様々な形に変化していきます。きれいな雪の結晶形を保って地表に到達しても気温、圧力、風などの外圧によって形は崩れ、積雪も密度を高めていきます。
冬の強い北風は積雪を削って様々な造形を見せてくれます。
地表に降り立った雪は風に吹き払われ、風下に吹き溜まって”雪庇”をつくります。雪粒は風によって風上から風下に移動して行きます。
庇を形作っていなくても、稜線から風下側に吹き溜まった積雪を雪庇といいます。”雪の庇”は雪庇の一部なのです。
日本列島は中緯度にあり四方を海に囲まれた四季のある気候、豊富な雨と雪をもたらす複雑な地形、海洋プレートの沈み込みがもたらすのはバラエティーに富む地質や火山や温泉です。
忘れてはいけないのが風水害・地震・火山噴火などの自然災害への備えです。
限られた資源で快適に、時には命を繫ぐ技術や知恵、精神を磨くには登山を通じた経験を積むのがとても役立ちます。
新しい年の第一歩は小さな新しい事から取り組むのも良いですね。