路線バス無料デーで訪れた「日本極寒の地」北海道・朱鞠内 鉄道廃止から約30年、人は減りお店も消えた
2024年11月3日、今年度9回目となるジェイ・アール北海道バス深名線でバスの運賃が無料となる「無料DAY」が実施されている。この路線は1995年9月3日限りで深川―幌加内―朱鞠内―名寄間が廃止となってJR北海道深名線の鉄道代替バスとして誕生した路線だ。バス「無料DAY」は3年目の取り組みとなり、年間で13日間実施される。2024年度は、11月3日以降は、11月23日(土祝)、1月13日(月祝)、2月11日(火祝)、2月23日(日祝)に実施される。なお、運賃が無料となるのは幌加内町内のバス停を利用する場合のみで、例えば深川市内の深川―多度志間や、名寄市内の名寄―天塩弥生間のみでバスを利用してしまうと、降車の際に運賃が請求されるため注意が必要だ。
深名線のバス「無料DAY」は、沿道の日帰り温泉施設である政和温泉「ルオント前」バス停でバスを降りると、降車時に運転手より入浴料の割引券などが受け取れることは記事(路線バスが無料で乗り放題! JR北海道、旧深名線「深川ー名寄間」廃止代替バス 特典で温泉割引き券も)でも詳しく触れた。筆者は3時間ほどルオントで過ごしたのち、次の13時25分発の名寄行のバスに乗り、朱鞠内を目指すことにした。JR深名線があった時代の朱鞠内駅は運行上の拠点駅となっており、朱鞠内駅から深川方面と名寄方面の列車の系統が分かれていた。また、朱鞠内駅には駅員も常駐しており、硬券の入場券や乗車券の販売も行っていた。
名寄行のバスは、ルオント前を発車すると人口希薄地帯へと入り、バスの車窓には荒涼とした原野に白樺の並木が広がる。日本極寒の地である幌加内町の人口は、深名線が廃止された1995年当時は2500人余りであったが、現在の人口は1200人余りとなっており、鉄道の廃止後29年間で半減している。幌加内町母子里地区では1978年2月に日本最低気温とされる摂氏-41.2度を記録している。
途中、政和と添牛内では当時の駅舎が残されていることを確認できた。そして、ルオント前からバスに揺られること34分。朱鞠内には13時59分に到着した。朱鞠内駅跡地はすでに更地となっており、線路のあった場所は道路となり、その道路脇にバス待合所が建てられていた。バス待合室に入ったところ、ちょうど地元の高齢女性と中年男性の方が談笑をしていたので話を聞いたところ、「今は朱鞠内からお店も無くなってしまい、買い物に行くのも大変な状況になってしまった。昔は木工所も2件あったが、今では何もなくなり人は減っていくばかり」と話してくれた。
深名線が現役だった1995年、当時中学生だった筆者は複数回朱鞠内を訪問しているが、朱鞠内駅前にあった商店で買い物をした記憶がある、しかし、その商店はすでになく、朱鞠内駅全景を撮影するために歩いた駅前の坂道についても、坂上の人家がすでになくなったためか、廃道の如く荒れ果てていた。
(了)