函館本線貨物列車脱線事故で部分運休の特急北斗 函館―長万部間でバス代行輸送開始
2024年11月16日の午前1時40分頃ごろに北海道のJR函館本線、森―石倉間で発生した貨物列車脱線事故で、札幌と函館、本州方面を結ぶ鉄路が寸断された。事故発生当日、JR北海道は当初「必要なバス台数確保の見込みが立たないため実施しない」と発表していたが、11月16日17時に翌日の11月17日と18日の運転計画を発表。函館―長万部間で特急北斗号のバス代行輸送が実施されることとなった。
特急北斗号は札幌―函館間で1日11往復が運行されているが、このうち6往復が運休。長万部行の特急北斗号は4往復が運転され、長万部駅で代行バスに接続。札幌―函館間をおおむね4~5時間で結ぶことになった。また、このほか、朝の1往復については洞爺駅折り返しの運行となるが、洞爺駅から先のバス代行は行われていない。札幌と函館を結ぶ高速バスなども混雑が続いているようで不便な状況が続きそうだ。
函館本線の脱線事故現場に国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官が現地に入り、損傷したレールや脱線した車輪の状況などを調査したところ、レールが損傷するなどした森町の鷲ノ木道路踏切近くから脱線が始まっていたことを確認できたという。JR北海道とJR貨物の発表では、この踏切近くのレールで3か所での破損が確認された。このうち踏切内では列車進行方向右側のレールが破断し、レール外側の踏切の敷板がはがれ、地面の一部がえぐれたようになっていたという。
今回の脱線事故で寸断された函館本線の長万部―函館間は、札幌と函館を結ぶ特急列車の都市間幹線ルートだけではなく、北海道と本州方面を結ぶ貨物列車の大動脈ルートで、札幌だけではなく北見、旭川、富良野、釧路、帯広など北海道内各地から本州方面に向かう貨物列車がすべてこの区間に集中し、ほかに迂回できる路線もない。北海道からはタマネギやジャガイモなどの農産物や乳製品などが輸送されているほか、貨物列車で輸送される北海道内発着の宅配便も多い。こうしたことからも貨物列車の運休による北海道民の生活への影響が心配される。
8月に発生した石勝線の豪雨被害では4日間にわたって札幌と帯広・釧路方面を結ぶ鉄路が寸断された際は、ほかに迂回できる路線もなく昨今のドライバー不足の影響から貨物列車のトラック代行輸送や特急列車のバス代行輸送もままならない状況が表面化した。こうした状況から、今後の鉄道貨物輸送や都市間旅客輸送の安定化を図る観点からも、今までのような廃止一辺倒の議論ではなく、北海道内の鉄道ルートの多重化に関する議論があってもよいのではないだろうか。
(了)