函館本線貨物列車脱線事故で「北海道の交通の脆弱さ」露呈 バス代行の特急北斗号は11/19より運転再開
2024年11月16日の午前1時40分ごろに北海道のJR函館本線、森―石倉間で発生した貨物列車脱線事故の影響で、函館―長万部間でバス代行輸送が行われている特急北斗号。JR北海道は、復旧について「順調に作業が進んでいることから、作業が終了し安全を確認したうえで11月19日(火)の始発から運転を再開する見込みである」ことを発表した。
札幌―函館間には特急北斗号11往復が運行されているが、事故発生当日の11月16日は洞爺―函館間が終日運休となり、4往復のみが札幌―洞爺間で折り返し運転となった。当初JR北海道は、「必要なバス台数確保の見込みが立たないため実施しない」と発表していたが、11月16日17時に翌日の11月17日と18日の運転計画を発表。函館―長万部間で特急北斗号の4往復についてバス代行輸送が実施されることとなったほか、朝の1往復は札幌―洞爺間で折り返し運転となったが、大幅な本数削減となった感は否めない。
報道によると代行バスの利用者は片道200名余りで、長万部駅では札幌方面からやってきた乗客と函館方面からやってきた乗客が入れ違いとなり混雑した様子だったという。札幌と函館を結ぶ高速バスや航空便も軒並み混雑となり、札幌―函館間の都市間交通はパンク状態となり、ビジネス客や観光客に大きな影響を及ぼした。中には札幌から函館までタクシーでの移動を試みた方もいたという。
今回の貨物列車脱線事故で改めて浮き彫りとなったのは北海道の交通の脆弱さだ。報道では、函館駅で足止めされた乗客が「JRが止まればほかに利用できる交通手段が限られ非常に困る」といった趣旨のインタビューが流れていた。特に長万部―函館間はほかに列車が迂回できるルートもなく、札幌―函館間を結ぶ特急列車のほか、タマネギやジャガイモなどの農産物などを乗せて北海道各地の貨物駅を出発し、本州方面に向かう貨物列車が全て集中する区間である。
今回の貨物列車の断線事故についてはJR北海道の経営問題と結び付けて指摘をされる方も見られるが、JR北海道が経営危機に陥った本質的な原因については、国の運輸政策の失敗にあることを筆者の記事(JR北海道が経営不振に陥った根本原因は何か 発足当初の適正赤字額は年間500億円とされていた)でも詳しく解説している。北海道の鉄道貨物輸送の安定化を図ろうと第二青函トンネル建設構想もある中で、北海道の交通を強固にするため国の施策として鉄道に対しても道路財源の一部を活用する形で積極的な再投資を行い、これまでの廃止一辺倒の議論から鉄道ネットワークの多重化の議論へ舵を切るべきではないだろうか。
(了)