JR北、レール検査で異常を認識も腐食見落とし 函館線貨物列車脱線事故
2024年11月16日の午前1時40分ごろに北海道のJR函館本線、森―石倉間で発生した脱線事故。この事故の影響で、函館本線森―八雲間は終日運休となり、札幌―函館間を結ぶ特急北斗号は1日11往復から4往復に減便され、長万部―函館間でバス代行輸送を実施。北海道と本州方面を結ぶ貨物列車の運行はストップし、トラックの代行輸送が難しかったとことから、タマネギやジャガイモなど農産物の出荷が一部でストップしたほか、宅配便などの到着にも遅れが生じた。さらに、書店では雑誌などの入荷が遅れるなど、北海道の物流にも大きな影響を及ぼしたが、11月19日の始発列車から運行が再開された。
今回の脱線事故の原因について、JR北海道は11月18日に開かれた記者会見で、レールに著しい腐食があったことが脱線の一因の可能性であるという見解を示した。鉄道用のレールは車輪が触れる頭部と枕木に固定される底部があり、頭部と底部の間の部分を腹部と呼ぶが、この腹部が腐食していた。1992年のレール設置当初は15mmの厚さがあったものの、今回の事故現場では最も薄い部分で3mmになっていたという。この脱線事故現場である鷲ノ木道路踏切では9月12日に超音波検査を実施したところ異常が検知され、その後目視により頭部の確認は行っていた。しかし、踏切の敷板を外してレールの腹部の確認までは行っておらず、JR北海道の内規でも確認は求めていなかったという。
さらに、この記者会見では、「特急でも破断はあり得たのか」という記者からの質問に対してJR北海道では「可能性は否定できない」との見解を示した。これが最高時速120kmで走行する特急北斗号の通過でレールが破断していれば大惨事につながっていた可能性もあり得たことになる。JR北海道は今回の現場と条件が似ている鹿部―長万部間の踏切全10か所を点検し、安全の確認をしたという。今回の事故現場で異常を検知しながら詳しく調べなかった現状に対して、有識者からは「検査体制の不備」や「内規があいまいで作業員が未熟だった可能性がある」と厳しく指摘されている。
JR北海道は、2011年5月に石勝線列車脱線火災事故が発生し、9月には中島尚俊社長が自殺。2013年9月に発生した函館本線大沼駅構内の貨物列車脱線事故では、脱線現場の線路の検査データが改ざんされていたことが発覚し、翌2014年1月に坂本眞一元社長が自殺した。その直後、国土交通省からJR北海道に対して事業改善命令が出されることとなった。その後、改善命令は2018年と今年2024年の3度にわたって受けている。
今回の事故のように、特急列車や貨物列車の幹線ルートである函館―長万部間が寸断されてしまえば、北海道経済や食料を含めた日本の安全保障に対する影響は計り知れない。こうしたことから、安定的な鉄道輸送を確保するためにも、国の施策として北海道開発予算や道路財源の一部を鉄道に活用し、予算を厚くすることや、一部の路線が寸断された際の迂回ルート確保の観点から鉄道ネットワークの多重化。さらに、JR北海道が北海道の鉄道を今後にわたって経営を行っていくにあたり、本当に適切な組織体であるのかという点についても踏み込んだ議論が必要ではないだろうか。
(了)