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ラーメン評論家が実食して厳選! 絶対に食べるべきラーメン5選!【2024年10月】

山路力也フードジャーナリスト
絶対に食べておくべきラーメンがある。

ラーメン評論家が心揺さぶられたラーメンとは

たかがラーメン、されどラーメン。
たかがラーメン、されどラーメン。

 ラーメン評論家として活動を始めて早四半世紀。これまで累計で20,000杯以上のラーメンを食べ歩いてきた。何十年も毎日のようにラーメンを食べていて飽きないのかと良く問われるが、作り手の数だけ味があるラーメンの世界は実に奥深く、いくら食べても飽きることはなさそうだ。

 とは言え、これだけ食べてくると感動が薄れてくるのも事実。どこかで食べたような味と出会うことも増えてきた。それでも中には感動して一気に食べてしまうようなラーメンと出会うことがある。まだ食べたことのない新しい一杯や懐かしい味と出会える瞬間のために、日々食べ歩いていると言っても過言ではない。

 ラーメン評論家が思わず唸るラーメンとはどんなラーメンなのか。日々食べ歩きの中で出会った、お薦め出来るラーメンを毎月厳選してご紹介していきたい。とは言え味の好みは人それぞれ。私が美味しいと薦めるラーメンが好みに合うかは分からないが、誠実で丁寧に作られたラーメンばかりであることは間違いない。なお掲載順は地域別に並べているだけで優劣を示すものではない。

76年市場で愛され続ける味『やじ満』(東京・豊洲)

築地から豊洲に移転しても変わらぬ人気の『やじ満』。
築地から豊洲に移転しても変わらぬ人気の『やじ満』。

 1948(昭和23)年の創業。豊洲市場管理施設棟の飲食フロアにある、3代続く老舗の中華食堂が『やじ満』(東京都江東区豊洲6-6-1 豊洲市場7街区管理施設棟3F)。市場で働く人たちや観光客に愛されて76年。2018年に築地から豊洲に移転してもその味と人気は変わらない。

 すっきりとした醤油味のスープに細い縮れ麺。古き良き東京のノスタルジックラーメンは、ラーメンという料理の原点のような味わい。名物の「手作りジャンボシュウマイ」はソースで味わうのが市場スタイル。活気のある厨房とにこやかな接客。まるで昭和のような雰囲気の店で食べると、ここが真新しい豊洲市場のビルの中であることを忘れさせてくれる。

厳選ポイント:ラーメンという料理の原点を感じられる一杯

バランス型家系ラーメンの人気店『寿々㐂家』(神奈川・上星川)

オープンから30年以上経った今も、なお行列が出来る人気店『寿々㐂家』。
オープンから30年以上経った今も、なお行列が出来る人気店『寿々㐂家』。

 昨今ブームとなっている「家系ラーメン」は、醤油がキリッと立ったインパクトのあるスープが特徴だが、これは50年の歴史の中で徐々に変化していったもの。家系ラーメンが認知され始めた1990年代の味は、醤油とスープ、油のバランスが重視されていた。1990年創業の『寿々㐂家』(神奈川県横浜市保土ヶ谷区上星川町464-6)は、往時の味を今も忠実に守り続けている人気店だ。

 「家系御三家」とも呼ばれた名店『本牧家』譲りの、90年代に多かったバランス型家系ラーメンだが、創業時よりもスープの濃度やタレのパンチ、さらには鶏油などもアップデート。クラシカルな面持ちでありながらも、インパクトの強い現代の家系ラーメンにも通じる味わいに進化している。後をひく濃厚な味わいなのでライスとの相性も抜群だ。

厳選ポイント:横浜家系ラーメンの歴史を体感出来るバランス

深みのあるスープと力強い自家製麺『麦づら』(千葉・都賀)

経験豊富な店主が独立開業した『麦づら』。
経験豊富な店主が独立開業した『麦づら』。

 東京からおよそ1時間。千葉のベッドタウン都賀で、2023年の創業以来注目を集めているのが『麦づら』(千葉県千葉市若葉区都賀3-25-7)。店主は都内や千葉県内の人気店で経験を積んだ人物。地元客はもちろん県内外のラーメンマニアもこぞって足を運ぶ人気店だ。

 鶏と鴨のどっしりとした旨味を感じる清湯に、醤油の香りが食欲を加速させるスープ。自家製麺は細麺と手揉み太麺の2種類から選ぶことが出来るが、しっかりと茹で切った太麺はむっちりもちもちとした食感で、啜るごとに噛むごとに楽しい。注文ごとに手切りしたチャーシューや、和出汁で柔らかく仕上げられたメンマなど、具材の一つ一つにも細やかな神経が注がれている。

厳選ポイント:丼の中全てに細やかな神経が注がれた丁寧な一杯

新店なのに老舗のような安定感『中華そば ひかり』(福岡・名島)

福岡名島の地で早くも常連客が多い『中華そば ひかり』。
福岡名島の地で早くも常連客が多い『中華そば ひかり』。

 福岡市郊外で2024年3月にオープンしたばかりだが、早くも地域密着型の営業で常連客が増えている店が『中華そば ひかり』(福岡県福岡市東区名島3-27-3)。店主は人気店『博多一風堂』で長年キャリアを積んだベテラン職人。豚骨ラーメン店が多いエリアだが、敢えて醤油味と塩味の中華そばを提供している。

 豚ゲンコツと鶏ガラに煮干などを合わせた懐かしい中華そばは、価格も抑えられて日常の生活に寄り添うような一杯に。新店とは言えベテランが作るラーメンなのでクオリティは申し分なし。毎年のように変わりゆくラーメンのトレンドとは無縁の存在で、きっと十年後も二十年後もこの名島の地で愛され続けているはずだ。

厳選ポイント:シンプルゆえの難しさを見事にまとめたベテランの技

インパクトのある熟成系豚骨ラーメン『ろくでなし』(福岡・吉塚)

昼はラーメン専門店、夜は居酒屋としても使える『ろくでなし』。
昼はラーメン専門店、夜は居酒屋としても使える『ろくでなし』。

 福岡県福津市の人気店『福間ラーメン ろくでなし』(福岡県福津市中央4-22-30)が福岡市内へ待望の初進出。JR吉塚駅前に2024年8月オープンした『ろくでなし 吉塚店』(福岡県福岡市博多区東公園2-24)は、本店同様昼はラーメン専門店、夜はラーメン居酒屋として使うことが出来る注目の店だ。

 豚頭だけを使って熟成させないスープと、そこにゲンコツや背脂などを足して時間をかけて熟成させたスープを使い分けて、「あっさり」「こってり」の2種類のラーメンを提供。どちらの味もおすすめだが、まず食べるべきは濃厚な味わいでインパクト抜群の「こってり」。「呼び戻し」製法により熟成させた豚骨スープは、豚骨の香りと旨味にあふれており、一度ハマったら代替が効かない味わいだ。

厳選ポイント:濃厚で熟成させた旨味あふれる豚骨スープ

 味の好みは人それぞれ。ラーメンを食べ歩く楽しさは自分好みの一杯を見つけることにある。今回ご紹介したお店は私が個人的に印象に残ったお店なので、まずは気になったお店に足を運んで頂いて、それをきっかけに自分だけの一杯を見つける食べ歩きの旅に出て欲しい。

※写真は筆者の撮影によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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