最悪の場合は死にいたる なぜ「ハンバーグ生焼け」騒動は繰り返されるのか?
武蔵野市の人気ハンバーグ店での「騒動」
東京都武蔵野市内の人気ハンバーグ店で提供されたチーズハンバーグについて、インターネット上でちょっとした騒動になっている。動画サイトにアップされたハンバーグが生焼けではないかと指摘があり、SNSなどで拡散されたのだ。さらにそれがネットニュースなどにも取り上げられ、店側が謝罪する事態になっている。
この店のハンバーグはハンバーグが乗せられた鉄板の上で、客が自らハンバーグを押し付けて焼いて仕上げる提供方法で、そのスタイルはこの店のオリジナルではなく、オリジナルは神奈川県横浜市にあるレストランで半世紀以上も前から提供されているものだ。
このような提供方法のハンバーグにおける生焼け騒動や食中毒事故は、毎年のように起こっている。先述した神奈川県横浜市のレストランも2000年に食中毒の事故を起こしているし、今年に入ってからも8月に千葉県船橋市のレストランで腸管出血性大腸菌O157による食中毒を発生させている。
これまでに事故を起こした店は、その後提供スタイルを変えたりして食中毒対策を行っているが、飲食業界全体で見ると同じ事故が繰り返し起こっており、全く学習が出来ていない。今回騒動になった店に関しても、過去の事故を知らなかったとすればあまりにも不勉強であるし、知っていたとすれば食中毒のリスクを分かった上で提供していたことになる。
個々の飲食店においては過去の事例を精査して、自店の衛生管理上問題がないかをチェックする必要がある。またこれらの過去の事故を無駄にすることなく、同じ過ちを繰り返さないためにも飲食業界全体として情報を共有するべきだ。この「ハンバーグ生焼け」問題は、驚くほどに繰り返されているのだから。
なぜ生焼けのハンバーグが危険なのか
生焼けのハンバーグを食べた場合、腸管出血性大腸菌O157やサルモネラ属菌、カンピロバクターなどによる食中毒のリスクがある。これらの原因菌は牛や豚など家畜の腸内に生息しており、屠畜場や調理場で生肉などに付着する可能性がある。しかしながら多くの細菌やウイルスは熱により死滅するため、しっかりと加熱調理することで食中毒のリスクは激減する。
焼肉など肉そのものの場合は、菌が付着している可能性のある表面をしっかり焼くことで死滅するが、ハンバーグの場合は挽肉のため中心部にまで菌が入り込む可能性が高い。だからこそ中心部にまでしっかりと熱を入れる必要がある。厚生労働省によればハンバーグを焼く場合は中心部を75度で1分以上加熱することが必要だと注意喚起している(参考資料:厚生労働省リーフレット)。
腸管出血性大腸菌O157の食中毒の場合、激しい腹痛と水様下痢を起こすことが多く、その後血性下痢になる場合がある。さらに溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳障害を併発することがあり、HUSは赤血球の破壊による溶血性貧血や血小板の減少、急性腎不全などの症状が現れ、重症の場合は死に至る。
これはハンバーグに限った話ではないが、十分な加熱調理と二次汚染防止を徹底すれば食中毒のリスクは激減する。「菌を食材につけないようにする」「菌を増やさないようにする」「菌を殺す」という食中毒予防の3原則を、提供する飲食店側はもちろん、食べる客側もしっかりと理解しておく必要がある。正しい知識を持って食中毒のリスクを回避して頂きたいと切に願う。
※写真は筆者の撮影によるものです(記事内の店とは関係がありません)。
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