フードジャーナリストが実食して厳選! 絶対に食べるべき「逸品」5選!【2024年9月】
フードジャーナリストが心揺さぶられた逸品とは
フードジャーナリストとして活動を始めて早四半世紀。これまで累計で10,000軒以上の飲食店を食べ歩いてきた。何十年も毎日のように外食をしていると、少しずつ感動が薄れてくるのも事実。どこかで食べたような料理と出会うことも増えてきた。それでも日々外食を続けているのは、美味しさの先にある感動を求め続けているからかもしれない。
作り手の顔が見える料理を食べたい。その店でしか味わえない一皿と出会いたい。そんな思いを持って日々食べ歩きをする中で、驚きや感動がある料理と出会うと嬉しくなるものだ。日々食べ歩きの中で出会った、心を揺さぶられた逸品を毎月厳選してご紹介していきたい。なお掲載順は地域別に並べているだけで優劣を示すものではない。
和食の技と遊び心にあふれる『福わうち』の「とんかつ」(東京・白金高輪)
白金高輪で芸能人や食通が足繁く通う日本料理の名店として知られるのが『福わうち』(東京都港区白金1-28-2)。福岡の台所として知られる柳橋市場から直送された新鮮な魚や、遊び心満載の店主三宮昌幸さんのアイディアが生きたオリジナリティあふれる料理を肩肘張らずに楽しむことが出来る店だ。
「肉じゃがカレー」「塩むすび」など、この店で食べるべきメニューは数あれど、常連客がこよなく愛する逸品が「とんかつ」だ。分厚く切られた良質な豚肉の間にはニンニクや大根おろし、そして黒胡椒などが挟み込まれている。それを生姜醤油につけて食べる。とんかつなのにしつこさはなく、パンチはあるのにあっさりとした上品な味わいにきっと驚かされるはず。
厳選ポイント:ニンニクを使ったとんかつなのに上品な味わい
「フォアグラの魔術師」による一皿『L’allium』の「フォアグラ」(東京・白金台)
白金プラチナ通り沿いの地下、かつて名店『OZAWA』の空間を継承したモダンフレンチ『Restaurant L’allium』(東京都港区白金台4-9-23)。シェフは『L’ATELIER de Joël Robuchon』でロブション氏の薫陶を受け、同じ白金台で『Gentil-H』のシェフとしても活躍された進藤佳明さん。2018年の創業以来、食通や著名人など多くのファンを持つ人気のレストランだ。
正統なモダンフレンチの流れを汲んでいる料理たち。調味や素材など良い意味でローカライズされ、日本人が好むフレンチの王道を軽やかにアップデートしている。中でもフォアグラはコースの中のハイライト。「フォアグラの魔術師」と称される進藤シェフならではのスペシャリテは、季節ごとにアプローチを変えて絶妙な火入れと共に供される。
厳選ポイント:メインディッシュを超える存在感のフォアグラ
三代続く老舗の逸品『萬福』の「焼餃子」(東京・東銀座)
屋台として創業したのが大正15(1926)年と、およそ100年にわたり愛されている老舗が『萬福』(東京都中央区銀座2-13-13)。創業者笠原福次郎さんの孫である三代目の久保英恭さんは、幼少期より店を手伝いながら、中華料理店などでの修業を経て、25歳の時にこの店の暖簾と味を継いだ。銀座のオフィスワーカーや買い物客、インバウンドなど幅広い層に愛されている店だ。
昔ながらの「中華そば」や、洋食を出していた時代の面影を残す「ポークライス」、さらには一年中提供される「冷やし中華」など、食べるべきメニューはたくさんあるが、必ず食べて欲しいのが「焼餃子」。厚い皮にたっぷりの餡が入った手包みの餃子は茹でて揚げて焼き上げる手間のかかった逸品。カリッともちっとした食感は一度食べればクセになる。
厳選ポイント:一度食べたらクセになる食感と味わい
美味いステーキを気軽に楽しめる『STEAK HOUSE MO-MO』の「ステーキ」(神奈川・本牧)
2010年に長野で創業し、今では県内外に4店舗を展開する『STEAK HOUSE MO-MO』。カナダで暮らしていたオーナーがアメリカスタイルのステーキの洗礼を受けて、本場と同じステーキを日本でも提供したいと開業。横浜への進出は2014年のこと。移転を経て現在は本牧本郷町で地元の人に愛されている店が『STEAK HOUSE MO-MO 横浜本牧店』(神奈川県横浜市中区本牧町1-156)だ。
肉は沖縄山城畜産の山城牛を使用。ポーションは100gごとに指定が出来、オーダーを受けてから手切りして厚い鉄板で焼き上げる。どっしりガッツリ肉厚のステーキながら、見事な火入れで焼き上げる。ソースも数種類用意されているので、自分好みの味を見つける楽しさも。本牧ならではの四角い「本牧ピザ」と一緒に食べるのもオススメだ。
厳選ポイント:見事な火入れの山城牛ステーキをリーズナブルに
唯一無二のクセになる食感『天ぷら 天まる』の「ナス天」(福岡・小倉)
福岡には独特な天ぷら文化がある。庶民的な価格で揚げたての天ぷらが次々と提供される「福岡スタイル」の天ぷらで人気の店が、小倉で2006年に創業した『天ぷら 天まる』(福岡県北九州市小倉南区北方3-34-1)。提供スタイルは他の店と変わらないが、カリッとザクっと香ばしい衣の天ぷらは、個性的で唯一無二の存在感だ。
「出汁巻き卵」や「もち豚チーズ」など、個性豊かな創作天ぷらも目を引くが、この店で食べるべき一品は「ナス天」。その長さ20cm以上という長くて大きなナス天は、ザクっとした衣の中に熱々でとろとろの茄子が閉じ込められた天ぷらは、熟練された職人の技術あってこそ。今までに食べたことのないナス天と出会えることを約束する。
厳選ポイント:香ばしい衣とトロトロの茄子のコントラスト
食べ歩きの楽しさとは、他では食べたことのないような新たな料理と巡り会えること。今回ご紹介したお店の逸品は、私が個人的に印象に残った料理を選んだものなので、もちろん他にも美味しいメニューがたくさんある。まずは気になったお店に足を運んで頂いて、自分だけの逸品を見つけてみて欲しい。
※写真は筆者の撮影によるものです。
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