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2023年に反響のあったレストラン記事5選 6万円コース、アジア最高峰のピッツァ……栄えある1位は?

東龍グルメジャーナリスト
(C) 東龍

反響のあったレストラン記事

2023年も残すところ、あと3週間。今年も色々なレストランを紹介しました。紹介するレストランは、話題のファインダイニングであったり、特別なフェアを行っていたりすることが多いです。

どのレストランも非常に素晴らしいですが、やはり記事によって反響が全く違います。今年公開した記事の中で、反響が大きかったトップ5を紹介しましょう。

5位/豪華なコラボディナー

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日本人が好きな旅行先であるハワイの名門ホテルといえば、創業100年を超えるハレクラニ。このハレクラニと、1890年に開業した日本の名門ホテル、帝国ホテルは2009年に提携を開始し、様々なコラボレーションを行ってきました。

今年2023年も、14回目となる「ハワイ ハレクラニフェア 2023」が5月1日から6月30日まで開催。いくつものレストランでコラボレーションメニューが提供されていましたが、特に注目したのが、帝国ホテル 東京のメインダイニングであり、ミシュランガイド一つ星の「レ セゾン」です。

5月30日と31日に特別ディナー「ラ メール × レ セゾン コラボレーションディナー」(コース料理とペアリングドリンク/66,000円、税・サ込)が開催されました。

ハレクラニの総料理長であり「ラ メール」のシェフであるアレクサンドレ トレンチャー氏と「レ セゾン」のシェフであるティエリー ヴォワザン氏がコラボレーション。ゲストシェフであるトレンチャー氏が4品、ヴォワザン氏がアミューズと2品を提供しました。

コロナ禍ということで、企画が決定してからすぐに両シェフによるオンラインミーティングを開催しました。「レ セゾン」でシェフを務めるヴォワザン氏はもちろんのこと、ホテルニューオータニ「トゥールダルジャン東京」で腕をふるったこともあるトレンチャー氏も、日本の食文化を知悉しています。

この名シェフ二人が議論を重ねていき、日本とハワイとフランスのエッセンスが見事に融合したメニューを完成させた貴重な2日間となりました。

4位/アジア最高峰のピッツァ

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ピッツァは庶民的で普段から食べるというイメージが強いですが、このピッツァをガストロノミーに昇華させたレストランがあります。

それは、マンダリン オリエンタル 東京の「ピッツァバー on 38th」です。「ピッツァバー on 38th」は38階にあるイタリア料理「ケシキ」の奥に2014年オープン。先進的なピッツァとカウンター8席というエクスクルーシブな空間で、存在感を示してきました。ホテルのエグゼクティブシェフを務めるダニエレ・カーソン氏が自ら統括しており、ゲストの前に立って腕をふるうこともあります。

「ミシュランガイド東京 2023」では6年連続ビブグルマンとして掲載されており、2022年にはイタリアで有名なワイン専門誌「ガンベロ・ロッソ」が発表した「世界のトップ・イタリアンレストラン」2023年版で、最高点の3スライスを受賞しました。

そして、2023年5月30日には、世界で最も影響力のあるピッツェリア専門ガイド「50 Top Pizza」が発表した「50 Top Pizza Asia Pacific 2023」のランキングで、見事アジア1位に輝いています。

これだけでも驚くべき快挙ですが、カーソン氏がまた新しい試みを開始しました。2023年6月1日から、ピッツァで構成された「おまかせコース」(13,200円)の提供を始めたのです。前菜1種、ピッツァドルチェを含むおまかせピッツァ8種、デザート1種という構成で、17時半もしくは20時スタートの2部制。

さらにはカーソン氏によるクリエイティビティ溢れるピッツァにぴったりな「ワインフライト」(4グラス、8,000円)や「プレミアムワインフライト」(4グラス、15,000円)、「モクテルペアリング」(4グラス、6,000円)も用意されています。

コースの品数の多さやペアリングがあること、2部制という営業スタイルを鑑みると、まさにガストロノミーピッツァレストランだといえます。

3位/たった2店の星つき牛肉料理

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たくさんある肉割烹の中でも、先駆けとなったのが西麻布にある「肉割烹 上」。人気の高級焼肉店「うしごろ」を運営するサングが2017年8月3日にオープンしました。「ミシュランガイド東京 2019」から一つ星として掲載され、現在も維持しています。肉割烹は数多くありますが、「ミシュランガイド東京2024」の料理カテゴリー「牛肉料理」で、星を獲得しているのはわずか2店舗しかありません。もう1店は銀座にある「おにく 花柳」です。

「肉割烹 上」で料理長を務めるのは、1980年福岡県生まれの大久保丈太郎氏。服飾専門学校卒業後、アパレル業界から飲食業界に転職したという異色の経歴をもちます。天ぷら店や割烹料理店で修業してから、2014年にサングへ入社し、「肉割烹 上」を立ち上げるに至りました。

カウンターは鮨店と同じような距離にして、迫力感がありながらも、広くて居心地のよい空間。中央には特注の炉窯が2つ設けられており、どの席からでもよく見えます。炉窯は左右に分かれており、左は直火で、右が遠火。焼き方が変えられるようになっているのも、こだわりどころです。

提供されているのは、大久保氏が贈る「おまかせ」(27,500円)のみ。メニューは1ヶ月半から2ヶ月で新しくなり、いつ訪れても旬の食材が用いられています。兵庫県の但馬牛系統にこだわっており、肉質等級は4、牛脂肪交雑基準(BMS)は6から7の牛肉を使用。

「肉割烹 上」の店名の由来は「極上の食材、至上の技、上質な空間とおもてなし、最上を目指す心粋」。オープンしてから現在に至るまで、大久保氏がこのコンセプトを真摯に具現化してきたからこそ、「肉割烹 上」がこれだけゲストから支持される店となり、肉割烹という業態がこれだけ確立されたのだと感じられてなりません。

2位/世界3位の料理人

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フランス料理の三大コンクールといわれているのが、「ル・テタンジェ国際料理賞コンクール」「エスコフィエ・フランス料理コンクール」「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」。最近注目されているのが、若手料理人が競う「トロフェ・パッション インターナショナル」です。アカデミー・キュリネール・ドゥ・フランスが主催している、40歳未満の若手料理人が競うフランス料理国際コンクールで、2年に1度だけの開催。

直近2022年11月6日にフランスで行われた「トロフェ・パッション インターナショナル 2022」では、日本代表は見事、世界3位となりました。その料理人とは、1985年生まれの茂手木了氏。

茂手木氏は、オードブルに「有機の卵を中心にしたオードブル」、メインディッシュに「2つの焼いたヴォライユ・フェルミエール」、デザートに「カフェ・グルマン」を創作して、高い評価を得ました。

これまでにも、2018年に「第52回ル・テタンジェ国際料理賞コンクールジャポン」で優勝したり、2021年に「第31回プリンスホテル料理コンクール 洋食部門 シティエリア」で準優勝したりと輝かしい実績を残しており、今回はとうとう世界へと羽ばたいた形になります。

茂手木氏が料理長を務めるのは、ザ・プリンス パークタワー東京のフランス料理「レストラン ブリーズヴェール」。プリンスホテルのフラッグシップであるザ・プリンスにカテゴライズされており、食にも定評のあるホテルです。日本料理、天ぷら、寿司、鉄板焼、中国料理というファインダイニングがある中で、「レストラン ブリーズヴェール」がメインダイニングとなっています。

この「レストラン ブリーズヴェール」で楽しみたいのが「シェフズパッション」(26,000円、税込・サ別)です。その名の通り、茂手木氏のパッションが感じられる、スペシャルなコースとなっています。

1位/日本人が料理部門で初めてのM.O.F.

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M.O.F.(エムオーエフ)はMeilleur Ouvrier de Franceの略称であり、フランス国家最優秀職人章を意味します。日本でいえば人間国宝にあたる、フランスで極めて大きな栄誉です。2023年に、日本人の料理人が、料理分野で初めてM.O.F.を受章しました。

その日本人の料理人とは、「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」で総料理長(エグゼクティブシェフ)を務める関谷健一朗氏です。500名以上の応募者の中から、料理部門で受章したのはわずか8名という非常に狭き門でした。

「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」は料理界の巨匠であるジョエル・ロブション氏(故人)が世界に展開するガストロノミーレストラン。日本では、2007年に刊行されたミシュランガイドからずっと三つ星として掲載されています。

関谷氏の経歴は実に輝かしいです。弱冠26歳の若さでロブション氏に推挙され、パリにある「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」のスーシェフに抜擢されました。2010年からは東京・六本木の「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」のシェフを務め、同店はずっと星を獲得しています。「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」総料理長に就任したのも日本人で初めてという出来事でした。

「ガストロノミー “ジョエル・ロブション”」では、スペシャリテを思う存分堪能できる「MENU SPÉCIALITÉ(ムニュ スペシャリテ)」(66,000円)やそのエッセンスを味わえる「MENU DÉGUSTATION(ムニュ デギュスタシオン)」(55,000円)、さらにはプリフィクスコース(25,000円~)まで、さすがグランメゾンだけあって、幅広いコースが用意されています。

一皿の食味に力点を置いたミシュランガイドとは異なり、M.O.F.はフランスの歴史や伝統、文化や技術などを、フランス人以上に理解していなければ到達できない領域。日本人である関谷氏が料理部門のM.O.F.を1回目の挑戦で受章したことは、前人未到の偉業です。

来年もレストランに期待

反響のあったレストランの記事を改めて振り返ってみましたが、どれか気になるレストランはあったでしょうか。コロナも落ち着き、日常が戻ってきました。飲食店も賑わいを取り戻してきており、インバウンドもコロナ前に戻っています。

来年も素晴らしいレストランが誕生したり、驚きのフェアが開催されたり、話題に上る飲食店が登場したりすることでしょう。引き続き注目のレストランを取材して紹介しますので、是非ご一読ください。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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