民進党が招いた?臨時国会を逃げるための解散劇
フーテン老人世直し録(325)
長月某日
安倍総理が今月28日に召集される臨時国会冒頭で衆議院を解散する見通しになったとメディアは報じている。さもありなんとフーテンは思う。このまま臨時国会が開かれれば再び「森友・加計問題」が国民の目にさらされ、それらの問題から逃げ切るには局面転換を図る必要があったからである。
臨時国会の召集は6月22日に野党が要求した。憲法53条は「衆参いずれかの4分の1以上の議員から臨時国会召集の要求があれば内閣はその召集を決定しなければならない」と定めている。ただ要求から何日以内に召集しなければならないかは決められていない。
それが8月23日に行われた自公幹事長会談で9月25日の週に召集されるというニュースを聞きフーテンは「ほう」と思った。しかも二階、井上両氏はその会談で補正予算の編成を行うことでも一致したというからなおさら「ほほう」と思った。
補正予算案を審議するには予算委員会の開催が必要である。予算委員会は総理も出席してテレビ中継が行われる。そして予算委員会は何を質問しても良いとの慣例がある。当然野党はそこで「森友・加計問題」を追及する。それを自公両幹事長が合意したというから「ほほう」なのである。
すると内閣側から直ちに補正予算の編成は必要ないとの声が上がった。茂木経済再生担当大臣や菅官房長官が補正予算編成を否定したのである。安倍総理が臨時国会で「森友・加計問題」の追及を嫌がっていることが分かる。本音では臨時国会の召集を望んでいない。
しかし6月に要求が出された臨時国会召集を無視することも難しい。「憲法違反」と大騒ぎになる。だから9月の最終週に召集を決めたが「森友・加計問題」を目立たせないために安倍官邸は腐心している。臨時国会召集を巡り官邸と与党には温度差がある。安倍総理の退陣時期について政局が始まっている証左だとフーテンは思った。
安倍政権は2年前の通常国会で安保法制を強行採決した後、「国民に丁寧に説明する」と言いながら、野党の臨時国会召集要求を無視してついに召集しなかったことがある。菅官房長官は「前例がある」と弁明したが、それは03年と05年の小泉政権時のことを指す。それまで歴代政権が野党の要求を無視した例はなかった。
その小泉政権の例では野党が臨時国会召集の要求を行ったのがいずれも11月に入ってからで、1月に開かれる通常国会との期間は短く、しかもいずれの年も衆議院解散があったため通常国会だけでなく特別国会や臨時国会などが複数開催されていた。
ところが2年前の安倍政権は10月21日に野党から臨時国会召集の要求があったにもかかわらず召集を見送り、その年は通常国会だけという前代未聞の事態を招いた。安保法制の強行採決で支持率が急落し、国論が二分する中で「国民に丁寧に説明する」どころか、都合の悪いことには蓋をする体質が露骨に現れた事例だった。
そのためフーテンは「森友・加計問題」で支持率を急落させた安倍政権がこの臨時国会をどうするかに大いに注目してきた。臨時国会が開かれれば「森友・加計問題」の再燃は避けられない。さらに10月22日に行われる衆議院のトリプル補選で一つでも取りこぼせば退陣論が浮上する。
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