私はその時はこの世にいないけれど。人々がノルウェーの森で感動するのはなぜか?
ノルウェー発の「未来図書館」プロジェクトとは、
世界各国の100人の書き手による、
100冊の本を、
100年後の未来の世代へのプレゼントする。
毎年1人のオーサー選出後、翌年には書き終わった1冊の本がノルウェーの森で寄贈される儀式だ。
100作品を読めるのは100年後。
今生きている私たちの多くは、読むことはない。
作品の中身を知るのは書き手本人のみだ。
毎年オスロの森で本の寄贈式が開催されていたが、コロナ禍で延長が続き、今年は3年間分の3人のオーサーの寄贈式をまとめてすることになった。
しかも、100冊の本を100年後まで保存する「部屋」が、今年やっとオープンされる運びとなった。
その保存室、公立図書館の「サイレントルーム」のオープニングを祝福するために、過去のオーサー2人もオスロに駆け付けた。
こんなに複数のオーサーが集うなんて!
これは本当に特別で、すごい年だ。
私はわくわく興奮しながら、「未来の図書館の森」があるフログネルセーテレンという地区へ向かった。
これまでのオーサー
- マーガレット・アトウッド(2014)
- デイヴィッド・ミッチェル (2015)
- ショーン (2016)
- エリフ・シャファク(2017)
- 韓江/ハン・ガン (2018)
- カール・オーヴェ・クナウスゴール (2019)
- オーシャン・ヴオン (2020)
- ツィツィ・ダンガレンブガ (2021)
オーシャン・ヴオン氏も参加予定だったが、コロナに感染し、この日は残念ながら姿はなかった。
それでも4人のオーサーが集結したのは、すごいことだ。
通常は毎年1人のオーサーしか森には来ない。
カール・オーヴェ・クナウスゴール氏
「何が素晴らしいかって、100年後まで読まれない本を書くということ。今生きている私たちは、その頃にはもう死んでいるということです」
「文学の魔法は、全てを現実にします。このプロジェクトも、未来を現実にしてくれています」
本の題名はノルウェー語で 『Blindeboken』、英語で『The Blind Book』
ツィツィ・ダンガレンブガ氏の本の題名は『Navini and her donkey』
「このプロジェクトに私が興奮する理由は、これまでとは違う形で現在を考えさせてくれるからです。その現在は、私たちを未来へと連れて行ってくれます」
さあ、今年は森の寄贈式だけでは終わらない。
オスロの中心地に戻り、オスロフィヨルド沿いにある公立図書館に私たちは移動した。
先ほどの森の木々を材料とした木材の部屋は「シークレット・ルーム」(Secret room)と名付けられた。
寄贈された100冊の台本は、ここで静かに100年間の眠りにつくことになる。
ビッグニュースはこれだけで終わらず、オスロ市長は、オスロ市が100冊の本が揃う2114年まで、未来図書館の森の木々を責任をもって守ることを約束した。
オスロ市は未来図書館の主催者たちと誓約書を交わし、関係者は深く感動していた。
企画者も、取材する私も、今このプロジェクトの素晴らしさに感動している人たちも、だれも100年後には生きていない。赤ちゃんを除いては。
100年後に、森は守られているのだろうか?
その心配はなくなった。
さあ、9人目のオーサーは誰になるだろう。
今から楽しみだ。