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「日本はすばらしい国」つぶやき炎上の大坂選手が見せた愛国心

猪瀬聖ジャーナリスト/翻訳家
(写真:REX/アフロ)

人種差別を批判したツイッターの発言が日本国内で炎上しているプロテニスの大坂なおみ選手が、「人種差別はどの国にもある、日本はけっして人種差別の国でない」と英語でツイートした。折しもNHKの番組が黒人への偏見に満ちているとして海外から非難されるなど、ともすると「日本は人種差別の国」とのレッテルを張られかねない状況だけに、知名度抜群の大坂選手のつぶやきは、母国への強力な援護射撃となる可能性もある。

「沈黙は何の解決にもならない」

米ミネソタ州ミネアポリス市で起きた白人警官による黒人男性の暴行死事件の直後から、SNSで積極的に事件について発言してきた大坂選手は、大阪市内で開催予定の人種差別反対デモへの参加を、ツイッターを使い日本語で呼びかけた。ところが、これが大坂選手本人に対する差別的な内容も含んだ非難の嵐を呼び、米ワシントン・ポスト紙はその様子を大きく報じた。

その後、大坂選手はロイター通信の取材に「ジョージ・フロイド(死亡した黒人男性の名前)の殺害とそれに続いて米国内で起きていることは、私に大きな衝撃を与えた」と話し、「沈黙は何の解決にもならない。すべての人が声を上げるべきだ」と訴えた。大坂選手は現在、米国に住んでいるが、ミネアポリス市やロサンゼルス市で行われたデモに参加したという。

また、「アスリートはスポーツだけやっていればいいという人もいるが、そうした考えは本当に侮辱的だ」と述べ、自らの影響力を生かして次の世代のために社会を変えていきたいとも語った。

自ら参加を呼びかけ、7日に大阪市内で開かれたデモについては、「日本でもデモが開かれたことは、とてもうれしい」と答えた。

「日本はとてもすばらしい国」

一方で大坂選手は10日、ツイッターを更新し、英語で次のように書き込んだ(訳は筆者)。

「私はここ何日か日本の人種差別的なツイートと戦っています。でも、日本は、本当はとてもすばらしい国です。日本が人種差別の国だなんていう誤解は絶対に持ってほしくありません。どこにだって腐ったリンゴ(人種差別主義者を指すとみられる)は少しぐらいあります。みんな、大好きだよ~」

大坂選手は日本と米国の2重国籍だったが、昨年、日本国籍を選択している。

米国での大規模な人種差別反対デモを機に、日本でも人種差別に対する関心が高まる中、NHKは7日放送のニュース番組「これでわかった!世界のいま」で、米国の人種差別抗議デモを取り上げた。ところが、製作したアニメ動画に描かれた黒人男性がいかにも粗野な感じだったため、黒人への偏見を助長しているとして視聴者からのクレームが相次いだ。

さらに、駐日米国臨時大使が「侮辱的で無神経な描かれ方をしている」とツイッターで批判したほか、海外メディアが競うようにして報道したため、瞬く間に世界に伝わり、NHKは急きょ謝罪、公式ツイッターで公開していた動画も削除した。

大坂選手もNHKの公式ツイッターをリツイートしたが、その内容は、スーツ姿の黒人男性がため息をついているように見える短い動画を投稿するという、ユーモアのきいたものだった。

大坂選手ならではの説得力

米国だけでなく欧州でも人種差別問題への関心が高まっている時期だけに、大坂選手のツイッター炎上事件やNHK番組の失態は、日本のイメージを大きく損ねることになりかねない出来事だ。とりわけ、人権問題に敏感な欧米メディアは、日本国内の外国人差別や、いわゆるハーフ差別といったテーマを好んで取り上げる傾向があるだけに、今回のような人種差別が絡む話は格好のネタになる。

そうした時に、世界的な知名度抜群の大坂選手が世界に向けて発信した「日本はすばらしい国」というメッセージは、自ら人種差別的な扱いを受けてきた大坂選手の言葉だけに、説得力が違う。本人が意図しているかどうかは別として、日本のイメージアップにも大きく貢献しそうだ。

ジャーナリスト/翻訳家

米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。食の安全、環境問題、マイノリティー、米国の社会問題、働き方を中心に幅広く取材。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)など。

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