ドローンライトショーの基本特許の意外な権利者
全体的にはあまり評判が芳しくなかった五輪開会式において、高い評価を得た演し物としては、ドローンによる五輪エンブレムの空中ディスプレイがあったでしょう。SNSで「日本の技術力すげー」と書いている人もいました(私も一瞬そう思いました)が、あれは、米インテルが一般向けに提供しているサービスであり、金と画像データだけ渡せばやってくれるもので、平昌五輪やスーパーボウル等でも既に使用されており、「日本の技術力」はあまり関係ありませんでした。
さて、このような照明を備えた多数のドローンを制御することで実現するライトショー関連の特許について調べてみました。容易に予測できるようにインテルは最近になりこの分野で多くの特許を出願しています(別記事でご紹介しようと思います)が、その審査経過情報を見ると、「ドローンを使ったライトショー」のアイデアをほぼそのままで権利化できている基本特許に行き当たります。
それが、意外と言えば意外、意外ではないと言えば意外ではないディズニー(Disney Enterprises Inc)を権利者とする”Aerial Display System with Floating Pixels”(US8,862,285)です。出願日は2013年2月15日、登録日は2014年10月14日です。主要クレームは実質的に一発特許査定になっており、かなり範囲が広い特許になっています(詳細は有料部分で解説します)。おそらく米国のみの特許化です(少なくとも日本国内では特許化されていません)。(追記:世界初のドローンによるライトショーは2012年9月にオーストリアにおいてArs Electronica Futurelabという組織により行われているようなので、いずれにせよ、当時先発明主義だった米国でしか特許化できなかったものと思われます。)
米国においてドローンによるライトショーを行う上でこの特許に抵触することは避け難いと思いますが、インテルはどう対処しているのでしょうか?ディズニーはインテルとのコラボによりディズニーワールドでドローンショーをやっていますので(ディズニーもさすがにドローンを自社製造するわけにはいかないのでテクノロジベンダーとコラボせざるを得ないでしょう)、おそらくはディズニーがインテルとの友好な関係の下に特許をライセンスしているのだと思います(特許ライセンスに関する具体的情報は発見できませんでした)。
ところで、大部昔に「ディズニーの強力なドローン特許があっと言う間に成立」という記事を書きましたが、そこで紹介した巨大操り人形をドローンで操作するという特許(8,876,571)も同一の出願日(2013年2月15日)です。ディズニーは、他にもこの日にドローンを使用したエンタメ関係の基本特許をいくつか出願しており(別記事でご紹介しようと思います)。ドローンを活用した大規模エンタメショーの知財においてかなり有利なポジションを勝ち取ったと言えます。
では、US8,862,285の具体的な内容について見ていくことにしましょう。
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