北朝鮮高校生に下された「遅行性の処刑」に母親ら失神
北朝鮮のK-POPファンが、事実上の処刑に直面している。裁判所が、K-POPアイドルの音楽を聞き、他人に渡した高校生に対して、事実上の死刑とも言うべき判決を下した。
黄海北道(ファンヘブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、沙里院(サリウォン)市万金洞(マングムドン)に在住の高級中学校(高校)の生徒2人が、「傀儡(韓国)の歌と写真を流布し、資本主義の腐敗、堕落した精神を助長した」として逮捕され、今年5月23日、公開裁判にかけられた。
2人は、どこから入手したかは詳らかでないが、USBメモリーに入ったK-POPアイドルの歌を聞き、動画を見ながら、学校で歌ったり踊ったりしていた。それを見た他の生徒たちも真似をし始め、学校中に広まってしまった。
さらには近隣住民の見ているところで、何も考えずに韓国のダンスを踊り、町内の他の少年たちも真似をし始めた。
他の国ならYoutubeに投稿するような微笑ましいものだろうが、北朝鮮ではそうはならなかった。その様子を、保衛部(秘密警察)のスパイだった女性に見られて通報されたことで逮捕されたのだ。
反韓流法の一つである反動思想文化排撃法は、29条で、こうした映像を「見たり保管したりした者は、5年以上15年以下の教化刑に処す。
(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為)
これらを流入させ、流布した者には無期労働教化刑、罪状の重い場合には死刑に処す」と定めている。通常、流布は流通、販売のことを指すが、今回は人前で踊り、他人にも影響を与えたことが流布とみなされたようだ。
裁判は万金洞の全住民、学校関係者、そして2人の家族が見守る中で、沙里院市裁判所の会議室で行われた。
未成年であることもあり、その場にいた人々は、「少年教化所(少年院)送りになるが、1〜2年もすれば戻って来るだろう」と考えていた。
ところが、下された判決は労働教化(懲役)15年、そして無期労働教化刑(無期懲役刑)という極めて重いものだった。2人の母親は、裁判中ずっと下を向いていたが、刑の宣告が行われるや、その場で泣き崩れて失神した。
無期懲役刑はもちろんのこと、15年の刑であっても「遅行性の処刑」を宣告されたのと変わりない。北朝鮮の教化所(刑務所)では、極めて食糧事情が悪い中で、受刑者は重労働を強いられる。家族が頻繁に面会に行って食べ物を差し入れしない限り、待つのは死のみだ。当局は、ショッキングで社会的な波紋が大きすぎる公開銃殺ではなく、それでいて「見せしめ」としてできるだけインパクトの大きい手法を選んだようだ。
話を聞いた住民も、「いくら高校生が間違いを犯したとしても、人を殺したわけでもあるまいし、そこまでやる必要があるのか」と、重罰化と恐怖政治が進む国の現状を嘆いた。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
韓流根絶やし作戦は当面続くだろうが、成功することはないだろう。既に北朝鮮国内には相当数の韓流コンテンツが流入しており、それらをすべてなくすことは現実的に不可能だ。また、データは消せたとしても、韓流の影響を受けた人々の心や考え方までは変えられない。