安倍政権の「大ポカ」を攻めきれなかった野党の「ポカ」
フーテン老人世直し録(219)
卯月某日
安倍政権はTPPの国会審議と熊本地震対応で「大ポカ」を演じながら、綺麗ごとを旨とする野党勢力によって「ポカ」の印象を薄めることに成功しつつあるのではないか。
昨年末、フーテンは年賀状に「今年は愈々(いよいよ)の年になる」と書いた。何が「愈々」かと言えば、国内ではアベノミクスのごまかしがきかなくなり、国外ではアメリカの一極支配の終焉が明らかになるという意味である。
1月に日銀の金融政策決定会合が円安、株高を狙ってマイナス金利の導入を発表すると、逆に円高、株安が進行し、次いで4月28日に政策の現状維持を決めると、円は106円台にまで急騰、株価も900円超下げた。金融政策に頼ってきたアベノミクスの失敗は誰の目にも明らかである。
一方、1月にはTPPの交渉を担ってきた甘利明前経済再生担当大臣のスキャンダルが発覚し、後半国会の最大の目玉であるTPP法案は審議の見通しが立たなくなった。それを安倍政権は「秘密交渉」を口実に押し切ろうと考え、石原伸晃担当大臣に「馬鹿の一つ覚え答弁」をさせることにしたが、西川公也委員長の内幕本の存在が問題となり、審議は野党が主導権を握る展開となった。
石原大臣の「馬鹿の一つ覚え答弁」で質疑は全くかみ合わない。野党は速記を止めて審議を中断し、与野党の理事同士で交渉しようとしたが、審議時間を稼ぎたい西川委員長はそれを認めず審議を続行した。そのため野党が抗議の退席をしても速記が止まっていないので委員会のマイクは生きたまま、そこに西川委員長が自民党理事と内幕本の存在を認める会話をしたことが記録された。「大ポカ」中の「大ポカ」である。
自民党政権時代の社会党や民主党政権時代の自民党なら、これをネタに政府与党をじっくり時間をかけて追い込んでいくところである。「西川委員長の下では審議に応ずるわけにいかない」と主張して審議拒否をする場面だとフーテンは思った。
審議拒否をすれば野党も批判されるが、原因が西川委員長の発言にあるとなれば、テレビはその発言と映像を繰り返し放送することになる。北海道にはTPPに反対意見が多い。そして4月24日には北海道5区の補欠選挙がある。それを考えれば、西川委員長の発言を十分に国民に見せつけてから審議に復帰するのが当然だと思った。
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