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「飛ばないかもしれない飛行機」 ノルウェーでの実体験(ヴィデロー航空版)

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
突然の欠航の知らせに騒然とする空港内 Photo:Asaki Abumi

たまたまここ数日の間、機長不足やカスタマーサービスの悪さで、ノルウェーでニュースとなっている2社の航空会社について記事を書いたばかりだったが、なんと予想外のことが起きた。筆者もそれに遭遇したのである。

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筆者はノルウェー西部でのフォルデ音楽祭へ取材に出かけていた。9日(日)、首都オスロへ戻る飛行機がキャンセルされたと、フォルデ空港に着いてから知らされた。

飛行機に乗る直前、ホテルでは同じ便に乗る人々と、このような話をしていた。「私たちは最後の20時過ぎの便か。飛ばないかもよ。この地域は夜は霧がでるから、飛ばないこともある」と笑いながら聞かされていた。まさか、本当に飛ばないとは誰も思っていなかっただろう。

田舎での空港だったので、他の航空会社という選択肢はなかった。

空港についてバスから荷物をおろしていると、先に空港に入っていた他のノルウェー人女性がまっすぐに引き返してきた。「キャンセルだって。今日はもう飛ばないって」。

延滞や他の便が数時間後に飛ぶわけではなく、キャンセルとのこと。

理由は「テクニカルな問題」。飛行機は別の都市ベルゲンから出発しなかったという。乗客は「それだったら、私たちが空港に向かう前に連絡できたはずだ。どうして連絡してこなかったのか」とスタッフに聞いたが、納得のいく回答はこない。

航空会社2社では、機長不足で便が欠航しているニュースを地元の人々は知っていたので、「本当に技術的問題なのか」と当然疑っている人もいた。

驚いたのが航空会社スタッフの頼りにならない対応で、窓口で混乱が起きている。どうも通常職員の多くが夏休み中で、現場を指揮できないアルバイトも多かったようだ。スタッフが乗客からの質問に、ため息をたまについていた。

すぐに代わりの手段が判明しないため、その場にいた音楽祭の関係者が全乗客に対して現場を指揮しながら、対応を模索し始めていた。まるで航空会社のスタッフのように働く乗客。ノルウェー語が分からない外国人の乗客は現場が理解できずに困っていた。

小さな空港で唖然としていた人々 Photo:Asaki Abumi
小さな空港で唖然としていた人々 Photo:Asaki Abumi

結果、私たちはホテルまで戻り、さらにもう一泊することに。次の日は便がいっぱいだというので、タクシーで1時間半ほどかけて隣町の空港へと移動した。交通費とホテル代は航空会社が負担。スタッフが直接乗客に謝罪することはなかった。

バスでホテルのある中心地へと戻る Photo:Asaki Abumi
バスでホテルのある中心地へと戻る Photo:Asaki Abumi

結果、およそ1日がつぶれたのだった。

記事にしようと思い、ヴィデロー航空の広報担当者にメールで問い合わせをしてみた。結果、2人の担当者から「今は私は夏休み中です」という自動返信メールがすぐさま返ってきた。

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ノルウェーの夏にヴィデロー航空やノルウェー・エアシャトル(ノルウェージャン)航空を利用する際はお気を付けください。「飛ばないかもしれない可能性」が噂通りです。

隣町の空港で、延滞はしたがやっと飛んだヴィデロー航空の飛行機Photo: Abumi
隣町の空港で、延滞はしたがやっと飛んだヴィデロー航空の飛行機Photo: Abumi

Phoot&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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